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【17】ブラコン後時々ヤンデレ注意報



――――都市南門は戦々恐々としていた。舞う土埃、金属の撃ち合う音。オイコラァっ!!金属は撃ち合うものじゃありません!!ステンレス鋼とマグネシウムに申し訳ないと思わねぇのかぁっ!!


「リード危ない!」

コーデリアに腕を引かれれば、すぐそばにズドンと何かがぶっ飛んできた。


「い……っ」

その赤髪は……。


「ブレイク!」

「リード!?コーデリアも……今すぐここから逃げるんだっ!」

そんなボロボロになってまで俺たちを……っ。


「アイツが来る!」

アイツって……確かコーデリアも最恐に狂っている四天王の気配がすると話していた。


――――その時、狂っていると言う表現にふさわしい男の雄叫びが轟く。


「死ねええぇっ!!勇者あぁぁっ!!」

まずい……来るっ!

くるっと振り向いて、そして固まる。アックスを掲げて向かってくる半仮面の男は……。


「……何してんの兄ちゃん」

「え?」

驚愕するブレイク。あれ、気付いてなかった?そういやブレイクも兄ちゃんのことは小さい時しか知らないかも。兄ちゃんが最近送ってくる自撮りはイタすぎてブレイクには見せてなかったような……。

そしてブレイクに向かってきた半仮面の魔族……もとい兄ちゃんはアックスを地面に突き立て急ブレーキをかけ、そしてぱあはぁっと顔を輝かせた。


「リードきゅうううぅんっ!!」

いやだから、リードきゅんはやめろって。毎日の大量のメッセージの送り主が俺に抱き付いてきた。


銀糸の混じった黒髪に金色の角、桜色の右目、普段は顔の左側に仮面をつけている。しかし半分仮面に覆われていても分かる超絶イケメン。


――――なのになぁ。


「あぁっ!会いたかったリードきゅんっ!!愛してるもう放さないよおにーたんのリードきゅんっ!!くんかくんか」

いや……放して欲しいんだが。顔立ちが整っているくせにやはり残念感が拭えない。あと弟をくんかくんかしないでほしい。

そんな兄を無理矢理引き剥がしてまっすぐに見つめれば。


「リードきゅんに見つめられてるナウっ!!」

逆効果だったらしい……。


「それよりも兄ちゃん、ブレイクに何してんのさ。俺の幼馴染みの勇者ブレイク。お互い幼かったとは言え覚えてんだろ?」

顔は覚えてなくてもドンサ村の勇者ブレイクって言ったら気付いていると思ったんだが……。勇者は黙っていても世界が放っておかないわけだし。

それに俺、ブレイクが勇者に選ばれたこととか言ってなかったっけ。俺のジョブスキルも話したわけだし……。


「おにーたんがリードきゅんと離れ離れの間幼馴染みなんてしやがってムカつくんだけど殺していいよね?ねぇリードきゅん。勇者として魔王城に来たなら勇者倒すのおにーたんのお仕事殺していいよね?」

アカ――――ンッ!!むしろ幼馴染みだったことが逆効果!勇者だったことでさらに相乗効果!


「ダメに決まってるだろ。次ブレイクに襲い掛かったら嫌いになるからな!」

「……え、リードきゅんが……おにーたん、を……っ」

兄は……無惨にも崩れ落ちた。魔王四天王がひとり、討ち取ったり……ってそんなわけあるかっ!それから……。


「兄ちゃん、四天王やってたの?魔王国で働いてたのは知ってたけど」

「だって……魔王四天王とか……リードきゅんが知ったら恐がっちゃうかなってぇ」

「本音は?」

上衣のポケットに入れていた携帯ブロック食を出汁に誘ってみる。


「リードきゅんの知らないところで合法的に幼馴染み勇者を始末する」

「そもそも合法じゃねぇわっ!!」

パシンと兄貴の頭をひっぱたく。


「それより、色々壊したところ修復してこい!」

見れば門や塀が壊れている。


「怪我人は……ブレイクだけか?」

「うん……まぁ、俺以外は狙って来なかったし、攻撃してこなかったから」

ほんとモロブレイク狙いかよ。コーデリアがすかさずブレイクを治療する。


「それにしても兄がいただなんて……初耳だ」

「まぁ俺が3歳の時に両親が離婚して兄ちゃんは母ちゃんについてったからな」

コーデリアなんてまだ1歳。みんな気を遣ってか母ちゃんと兄ちゃんの話はあまりしなかった。父さんは仕事でいないことが多かったからぶっちゃけ俺は村の夫人たちに育てられたようなもんだ。まぁ、それでも寂しくなかったのは遠く離れていても通信機能で兄ちゃんと話したりメッセージのやりとりをしたりできたからだ。

俺もみんなの気遣いを感じ取ってからか、表立って兄ちゃんとやり取りを続けていることは言ってなかった。父さんに知られても母ちゃんとのことで微妙な空気になったら嫌だったからな。今ではそんな心配はないと分かってはいるが、当時はまだ子どもだった。子どもってのは……敏感なものだから。


――――当時はあんなヤンデレブラコンになるとは思わなかったがな。


「と言うかリードって半分魔族なのか?」

「言ってなかったか?コーデリア。俺の母ちゃんって魔族」


「そうなのか!?」

驚くコーデリア。

「ごめん、コーデリア。何と言うか……当たり前のことだったから。あとリードは魔族の特徴ないし、敢えて言うこともなかったかも」

と、ブレイク。だから年下の村のガキンチョどもも知らないかもなぁ。見た目人間だもの。


「その、悪かったな。コーデリア」

「別に構わん。むしろリードのことをもっと知れて嬉しいぞ」

「こ……コーデリア!」

あぁ、この子は……近所の妹枠なんてちゃっと生意気でたまにデレれば吉と言う認識を改めねばなるまい!この子はなんてイイコなんだ!!


「ほら、2人とも。MP補給」

先程のブロック食を支給すれば、コーデリアがもぐもぐと食べ、ブレイクも続く。


「ふごいねリード。MP回復していくよ」

「だろ?」

そして3人で和んでいれば。


「お……おにーたんのリードきゅんからのご褒美いいいいぃっ!!!」

あ、兄ちゃんのこと忘れてた。戻ってきた早々ヤンデレ暴走し出した兄ちゃんの口にブロック食を突っ込む(危険だから真似するなよ!)。


「はむはむリードきゅんのあじぃー」

変な言い方すんなぁっ!!しかし……兄ちゃんだもんなぁ。ふぅ……。


そして暫くすれば警備隊のみなさんがやって来る。


「どうも兄がすみません」

無理矢理兄ちゃんの頭を手で下げれば、下から『リードきゅんの掌の圧萌え』とか意味不な呟きが聴こえてきたがこの際無視する。


「まぁ幸い怪我人はないようですし壊れた部分も魔法で戻したようですね。……でも都市の領主さまがこれから来られると思いますよ」

ひいぃっ!?怒られる!?


「リードきゅんリードきゅん」

「何だよ兄ちゃん。何かいい言い訳でも思い付いたのか?」

兄ちゃんの頭から手を放せば兄ちゃんがむくっと顔を上げる。

「親父に全部擦り付けよう!」

爽やかな笑みを浮かべて何言ってんのこの兄は。


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