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【12】だからアポは取りなさいって言ったでしょうが!



――――本日は記念日だ。勇者ブレイクと魔王が手を取り合い、聖女コーデリアが魔王の性別を女だと思っていた記念日だ。


確かに美女魔王を期待していた君もいるだろう。コーデリアの誤解を聞いてもしかしたら魔王はワンチャン美女だと期待していた君もいるだろう。実は真の魔王はロリ魔王と言う変則技もおおいに結構!確かに俺も人妻熟女魔王を想像しなかったわけではない!しかし……しかしながら……世界のおおいなる扉が開かれた今……やることは決まっている。


「そうか……そのくまちゃんは聖女コーデリアと汝の幼馴染みが!」

「はい!リード・ノームと言います」


「そうか、リード・ノームよ。我は魔王ダークドラグーン・ケイオス!今は休暇中であるからしてダークドラグーンでよい!」

うおぉぉ、魔王の名前超カッケーっ!そして人間の街で何も隠すことなく告げたよすごすぎるっ!てか休暇中って……。


「しかし、リード……ノーム?汝、ジェイド・ノームと言う男を知っておるか?」

「さぁ、よくある名前では?」

しれっ。しれえええぇっ。

「ふむ……そうか?ファミリーネームだけではなく顔立ちも何となく似てる気がしたのだが」

いや……あっちは完璧な美男。昔出ていった母ちゃんもある意味美女。とある筋からは人気が出そうな美女。そんな2人の間に生まれた平凡だぞ?俺は兄貴とは違うから似てるわけないと思ったのだが。


「魔王、リードは父親の名前を出されると盛大にしれっとするので触れないであげてください」

「目立ちたくないのだ。王国だとどうしても悪目立ちすると盛大に嫌がるのだ」


「うおおぉいっ!バラすなそこの2人いっ!!」

お前たちの心遣いが……胸にじくじくと沁み渡る……。


「ふむ……そうなのか。まぁ昔から魔族それぞれ人それぞれとも言うからな」

そんな諺あるの?魔族にはあるの?魔王いいやつだな。


「まぁ本当は我もジェイドを勇者の指南役にしようかとも思ったのだが、勇者にはまだ早いかと思ってな」

ブレイクは活発な子どもだったから、インドア派だった俺が剣の稽古に付き合ってくれないとしょげてた父さんに木の棒掲げて果敢に挑んでたから稽古ならつけてもらってた……うちに入るのか?

でも幼い頃の話だ。


「ところで紹介した師はどうであったか?魔王に挑んできた挑戦者の中ではそこそこ腕があったと思うのだが」

「はい、無事に免許皆伝をもらいました!」

ブレイクがキラッキラした顔で告げる。まぁそれは事実だけども。ブレイクもひと皮剥けたけども。師匠との間にあった軋轢には触れない……ブレイクはやっぱりイイコすぎる。

むしろブレイクのくまちゃんを理解する魔王だ。くまちゃん事件のことを知って発狂したら大変だ。ブレイクの判断は正しい。


「それなら良かった」

魔王ダークドラグーンも満足げに頷く。平和って大切だな。

「ところで、魔王って挑戦者受け付けてるんですか?」


「うむ、そうであるぞ。リード。公務の合間に行うゆえ、予約制であるが。間違っても謁見の時間に押し入ってはならぬのだ」

ぎっくぅっ。

「その、ブレイクとコーデリアがすみません」

「いやいや、汝が気にすることではない。まだ子どもなのだからな」

ま、魔王いいやつううぅっ!


「ブレイク、コーデリア。次からはちゃんとアポ取りなさい。ね?」

『はーい』

よし、素直でよろしいっ!


「まぁでもまずは四天王だな。四天王たちも仕事の合間だから予約制ではあるが、四天王全てに免許皆伝をもらえれば我に挑めるのだ」


「……四天王か……あれは、とんでもない強さだった」

「……コーデリア?お前ら四天王にもアポ取ってなかったの?」


「いきなり謁見の間に乗り込もうとしたら四天王のひとりに魔王の形相で追いかけられてしまってなかなかスリリングだったのだ」

魔王の形相……前世で言う『鬼の形相』か。


「あれは四天王の中でもなかなかの暴れものゆえ止めるのも一苦労なのだ。アポ絶対。アダマンタイナにも怒られたであろう」

「あの素敵な胸筋の武人だな。優しい殿方だった」

と、コーデリア。ガチムチマッチョだったの?


「む?アダマンタイナは女性であるぞ。魔王四天王の紅一点だ」

「じゃぁ……あの胸筋は……巨乳っ!」

コーデリアが崩れ落ちる。いや、巨乳と胸筋見間違えたのかよコーデリア!それとも男女識別器官の問題か!?


「では玉座の間にて魔王の形相で追いかけてきた四天王は……」

「あれは男だな。そもそも彼はリードの……」


「あぁぁぁぁぅ!!!」

魔王があからさまに大事なことを言おうとしたんだが、コーデリアが崩れ落ちる。


「私は何と愚かな間違いをっ」

いやお前まだ14歳なのだからまだまだやり直せると思うんだが。


「ほら、コーデリア。不安だったら俺たちに聞けばいいから、な?」

聖女もまた大きな壁にぶち当たった時に成長するものだ。そして支える存在があることもまた成長の鍵。それがたとえ男女識別器官の破損だったとしても、そこを補うために俺たち仲間がいるんだ。


「うん……分かった」

コーデリアが珍しくお兄ちゃんに甘えてくれたので頭をよしよししてやる。何だか幼い頃みたいだなぁ。懐かしいや。


「そう言えば汝らは何故ここへ?買い物か?」

と、魔王ダークドラグーン。


「あ、そうだ。俺たち商業ギルドに行くんです」

「そうなのか。実は妻がギルド長と仲がよくてな。我も休暇でここを訪れたのも妻がギルド長と会いたいと希望したからなのだ」

「そうだったんですね。ここにも何度か来てるんですか?」


「うむっ!だから周りも特に我には驚いていないだろう?ギルドの場所も知っているからついてくるといい」

「あ、はい」

マップはあるとはいえ案内してもらえるのはありがたいや。それにこの街は都市と呼ばれるだけあって旅人や冒険者と言った感じのひとも多いな。中には魔族もいる。これなら魔王でもお忍びで……。


『あれ、魔王じゃない?』

『お忍びかしら』

『うちの魔王さまがすみませんー』

いやバレバレじゃねぇかっ!むしろ無関係の魔族の商人や冒険者が騒がせて申し訳ないと詫びているんだが!?騒ぎにならないのは……ひとびとの優しさに他ならないことを学んだ。




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