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【10】ブレイク再起



――――綿。綿がこの世界にある。目の前にある。前世でごく普通に暮らしていればその存在をおおいに讃えることなどなかったであろう。

だって100均に行けばだいたい売ってるじゃん?そして商人の青年が出してきたその大きさはまさに前世の100均でよく見かける100円綿サイズで小ぶりである。


「そう。でもこれは庶民向け製品の業務用で300ゴルゴルだ」

うぅ……この世界の綿、業務用で庶民向けとは言え高いな。材質を見ても前世のようなポリエステルなどの素材が入っているようには見えない。

まるで手芸屋で手に入るようやコットン100%綿だ。


「それでも300ゴルゴルなんだな」

前世の感覚で言えば、コットン100%綿は高そうだが。

「庶民向けだからな。貴族や金持ちなんかは品質を高めるように牧場で高級餌を与えられて育てられた綿毛を利用するんだが、庶民向けだと冒険者が素材を集めたり普通の餌で育てられた綿毛を利用するよ」

うーむ……素材の入手先次第では100ゴルゴル均のちょうどいい綿を生成できるかもしれないな。


「へぇ、牧場か。ってことは羊?綿花はないの?」

「そうだな。家畜の羊とか冒険者だと魔物羊とか」

羊魔物もいるのか。そして綿もとれるのか。綿もらうの……大変そうだが。


「綿花も牧場で育てられるな」

「……え、綿花って植物では?」

「動物だろ?」

「そうだぞ、リード」

ごく普通に言ってのける青年とコーデリアの言葉に驚愕する。この世界の綿花……動物っ!


「できれば私も見に行きたいな。綿花。旅では鍛練が主だったから、なかなか綿花やクラフトの材料探しはできなくてな」

「これからやっていけばいいさ。俺も素材探しはしたいし」

多分この世界の魔王って倒す必要ないだろうし。



「許されるのだろうか。私は聖女なのに」

「聖女がくまちゃんを作っちゃいけない道理はないだろ?むしろ適度なクラフトはストレス解消にも役立つって言われてるし。聖女にも勇者にもストレス発散は必要だ」

コーデリアのくまちゃん作りしかり、ブレイクのくまちゃん溺愛タイムしかり。


「……そう、そうか。うむ。そうだな。私もこれからは自分を律しすぎないようにせねば」

コーデリアは真面目だもんな。彼女が自分を追い詰めすぎないよう、俺も見守って行かねば。


「だから今は綿だな」

「そうそう。物々交換だ。こちらはボタンが欲しい」

「なら100ゴルゴル分のボタン3セットか」

「……いや、100ゴルゴル分ボタン2つと……俺にも100ゴルゴルマグをくれ」

「……っ!分かった。まいどあり」

最近は男性メンツにも人気な100ゴルゴルマグは……マリアンの夫氏やアーノルドのお陰かな?あの2人も愛用してるし、マグを買ってくれるお客の中には夫用彼氏用、子ども用にと買ってくれるリピーターもいるものな。


早速ボタンを生成し、それから100ゴルゴルマグを綿と交換する。


「ありがとな。あと幼馴染みの兄ちゃん、元気出るといいな」

「はい、何とか頑張ります」

商人仲間の青年にお礼を言えば、早速コーデリアの溜めに追加のボタン生成だ。

ボタンを生成していれば、商人仲間のご婦人や乗り合いのご婦人たちからも物々交換や購入希望があったのでコーデリアにMP回復してもらいつつ生成。


コーデリアはその間にもてきぱきと布を切り分け糸で縫ったりくまちゃんの肩にボタンをつけて腕が動かせるようにと手心を加えている。すごい……流れるようにできていく……!そしてボタンがあることでくまちゃんのお目目刺繍も省略できているのが大きそうだな。


「よし、できた!」

「早っ!!」

しかしコーデリアの腕の中にはパッチワーク風のかわいいくまちゃんが収まっている。さらにはボタンのお陰でお手手や脚を動かせるようになっているこだわり。


「さて、ブレイク兄さん」

コーデリアと一緒にくまちゃんをブレイクの前に持っていく。


「リードと一緒に作った特製くまちゃんだ」

俺は材料を揃えただけだが、しかしひとりでは完成させられなかったであろう。


「コーデリア……リード……っ」

ブレイクが顔を上げ、目に光が戻る。そしてコーデリアの手から大事そうにくまちゃんを受け取るとそっと胸の中に抱き締めた。


「うぅ……ありがとう、ふたりともっ。俺……まだまだ、頑張れそうだ!一生大事にするから」

涙ぐみながら頷くブレイク。荷馬車に溢れる歓声と拍手。ブレイク……お前はこんなにも世界に、世界の住民たちに愛されているんだ。良かったな、ブレイク。


――――残りの旅路ではコーデリアが他にもくまちゃんやボタンアートを作り、ブレイクはくまちゃんをうんとかわいがり、俺は商人仲間のお兄さんやご婦人たちと楽しく歓談しながら楽しく鋼鉄都市ミケホ入りを果たしたのだった。





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