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悲劇なんてお断り

作者: つきの

アルトゥーロさんが不憫すぎたので生存話を書いてみました。

ブモゥ―――――!!


 気付いたら暴れ牛に突進されており、『あ、死んだ』と思って体を強張らせると誰かに抱きかかえられ難を逃れた。牛は壁にぶつかり、ぐったりしている。

 誰が助けてくれたのかと顔を上げるとがっしりした体躯でイケメンな騎士様で心臓が高鳴る。

「助けて頂いてありがとうございます。貴方様のお名前をお聞きしても?」

「私はエドガルドと申します。美しい貴女のお名前を伺っても?」

 エドガルド?暴れ牛から助けるエドガルドって…

「私はルチア…と申します…」

 しかも助けられた私がルチアって…

「ルチア。素敵な名だ。…君はもしかしてエンリーコの?」

「妹でございます」

「まさか、彼の妹とは…しかし…」

「お嬢様ー!!」

 遠くの方から私の侍女のアリーサが駆けてくる。

「また貴女にお会いすることは可能だろうか?」

「え?でも…」

「必ず会いにゆきます。それでは」

 エドアルドは走り去り、私は彼の背中をただ見つめる。少しするとアリーサが私の所まで辿り着いた。

「お嬢様、1人で何処かへ行かないで下さい。一体、何があったんですか?」

「町を歩いていたら暴れ牛が突進してきたの。騎士様が助けてくれて…」

「その騎士様はどちらに?」

「貴女が来る前に走り去ったわ」

「お嬢様が無事で何よりでした。お礼が出来たら良かったのですが」

「そうね」

 そのまま2人で連れ立って城へ戻った。私はランメルモールの領主、エンリーコの妹なのだ。そして先程、私を助けてくれたのはエンリーコの仇敵のエドアルド。どうやらここはオペラ『ランメルモールのルチア』の世界らしい。死ぬかもしれない体験をしたら前世を思い出してしまったようだ。前世は音楽やオペラを愛するアラフォーOL。勤務先から帰る時に信号無視をした車にはねられてそのまま死んでしまったと思われる。

 さて、『ランメルモールのルチア』だが、スコットランドを舞台としたロミオとジュリエットのような内容だ。ルチアは兄エンリーコと恋人エドアルドが仇敵同士。兄から政略結婚を命じられるが想い人がいるからと拒否をするも、エドアルドからの偽の手紙を読まされ裏切られたと、結婚承諾書にサインしてしまう。そこにエドアルドが現れ裏切りを罵倒されてしまう。それでルチアは心を壊したのか結婚相手を刺殺し、発狂して死んでしまう。エドアルドはルチアの死を聞いて絶望し後を追って自害して物語は終わる。

 そんなルチアに転生するって神様は意地悪だ。いや、待てよ。これから起こることを知ってるなら回避できるのではないか?だって私はエドアルドに恋してないもの。さっきは格好良いと思ったし、ドキドキしたけど、あれは吊り橋効果でしょ。不安や恐怖を感じた状況に出会った人に恋愛感情を抱きやすくなるアレ。恐怖を感じて助けられた時、それが格好良い異性だったら恋に落ちてしまうだろう。そしてルチアは恋に溺れて心を壊し、新郎を刺してしまう。

 未来を変える為に、まずはエドアルドと会わない。恋に落ちないことが重要だ。そして、新郎のアルトゥーロは良い人そうなので、攻撃しない事を厳守する。新郎と仲を深めていくことで惨劇は起こらないはずなのだ。

 それにエドアルドはフランスに行くことになったと言ってくるはずなので、ご武運を願いたい。しかし二人の因縁の決着をつげる為にエドアルドとエンリーコが決闘をするかもしれない。エドアルドがフランスに行くことで物理的に距離ができて互いを憎む心が落ち着くと良いな。

 ついでに新郎アルトゥーロ死亡フラグを圧し折らなければ。顔も知らない有力貴族に家の発展の為に嫁がされたとはいえ、新婦に刺殺されるって不憫過ぎるもの。

 私はアルトゥーロとしっかり関係性を築いてよい夫婦になれるよう努力しよう。初恋に浮かされて殺人なんて以ての外。家長(兄)の指示に従いましょう。


 それから暫くして、エドアルドが城の中庭にある泉の所まで来ると『ルチア』と私の名前を呼びます。何度も呼ぶので中庭の泉へ足を運び、エドアルドと向かい合う。

「美しい人、私の愛を受け取ってほしい。雄牛に襲われる貴女を見付けた時は肝が冷えました。今ここにいることを確かめさせて下さい」

「私は結婚を控える身、不用意な触れ合いは致しません。」

 エドアルドに惹かれるところがあるが断腸の思いで払いのける。

「何度でも貴女の元へまいります」

「もう止めて下さい。私はいずれ別の方と結婚するのです。貴方と深く関わり不貞を働いたと勘違いされたら大変です。もう来ないで下さい」

 冷たいけど、こうしないと兄とエドアルドは決闘をしてしまう。兄やエドアルド、アルトゥーロと私皆が生き残れる道ん行くためなんだから。

 エドアルドは私の言葉に傷ついた様子でわかったと言って去っていった。

 

 あの後、エドアルドは傷心のまま船に乗りフランスへ渡っていったそうです。兄のエンリーコは「もうあいつを見なくて済む」とご機嫌になりました。

 そして私の結婚式です。教会で司祭様の前で結婚承諾書にサインをして晴れて私とアルトゥーロは結婚しました。惨劇もなく、穏やかに笑顔のあふれる結婚式になりました。


 エドアルドは私の初恋だったのでしょう。ですが、ロミオとジュリエットのような悲劇になりたくなかったので、初恋に蓋をして穏やかな新しい愛情を育てることにしました。私は今日も旦那様と幸せに暮らしてます。



あらすじ読んでたら、恋に壊れないヒロインを書いてみたいと思って出来上がりました。

残念ながら作者はオペラ見てないんです。

一度見てみたいなぁ…

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― 新着の感想 ―
オペラ『ランメルモールのルチア』って実際にあるオペラなんだ →『ランメルモールのルチア』は『ラマムアの花嫁』が原作なんだ →『ラマムアの花嫁』は実際にあった事件が元ネタなんだ(!?) アルトゥーロさ…
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