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この体の人物はエミリア。
先日誕生日を迎えて今は10歳。
家族に遠巻きに見られるほどの癇癪持ちで、わがままな娘と世間で有名である。
と、いう情報が頭の中のフォルダに格納されていた。
気を失う前、パソコンのフォルダのように情報を分けて欲しいとお願いしたからか、エミリアだった頃の記憶が写真やテキスト、動画となって、『エミリアフォルダ』入っていた。
見方は簡単、脳内でカーソルを動かしてエミリアフォルダへアクセスをするのだ。
多分私というコンピュータの中にエミリアのデータフォルダが入った感じなんだろう。
うん。何を言っているのかって?私も分からないですけど。
問題があるとすればデータは入っているが、見に行かなければ情報が分からない仕組みだ。
ブラックアウトする前にちらりと見えたあの情報以外、エミリアの今抱えている問題や悩みがあったとして、それは私が自ら見に行かなければ分からない。
人との接し方やその人への想いが分からないとエミリアとして生きていけないと考えた私は、一応ここ最近の情報を、『エミリアまとめショート』という動画で見ておいた。
因みにこの【エミリアまとめシリーズ】は1年ごとにまとめられているので10個ある。
ここの世界に動画の概念が存在するのか疑問だが、ここは一旦放置しよう。
先ほども伝えたが、脳内で操作しているので目の前にウィンドウのように表示されるのではなく、脳内で全て再生されている。
なんとなく視線は斜め上を向いてしまうが、記憶を思い出す時に似ている動作と思って欲しい。
別に斜め上に動画が出てきているわけではない。
動画は主に家族が冷たくて寂しい、何も分かってくれない。という不満がテロップとして表示されていたが、相手の気持ちも表示されていたのでショートドラマの感覚で楽しく見てしまった。
もしかしてエミリアって相手の気持ちが読めるんか?
と、思ったが、様子を見にきた侍女さんたちからは何も読み取れなかったので違うのだろう。
相手の不満が本当の内容なのか、それとも、このまとめ動画を作った第三者が書き加えたのかは定かではない。
ただ、癇癪を起こしている相手に対して思いそうな事が書かれていたのであながち間違いでもないだろう。
「アン、お願いがあるんだけど」
私は動画でよく見た侍女の中で比較的温和そうな人の名前を呼んだ。
「はい、なんでしょうかお嬢様」
「今から家の図書室に行くから、一緒に来てもらえる?」
「……かしこまりました」
この家に図書室がある事が分かり、すぐ行動に移した。
不安そうな侍女の顔を見上げる。
明らかに勉強嫌いであったエミリアが急に図書室に行きたいなど不安で仕方ないだろう。
しかし、私はどうしてもエミリアの苦手な分野に目を通してみたかった。
それは苦手だと感じている理由を見たせいだ。
エミリア>勉強について>苦手な分野>魔法学>理由
『私は魔力調整力が極端に低いから魔法を使えないと言われた。あの教師に鼻で笑われたことは忘れない』
魔法だ。魔法が使えるかもしれないのだ。
あの教師とは誰か分からないが、とりあえず私であれば調整力とやらが高いかもしれない。
魔法などという力がない場所に居た私が興味を惹かれない訳がなく、とりあえず試してみようと思ったのだ。
図書室に着き、私は本を20冊ほど持ち帰ってきていた。
他の苦手な分野も、今の私からしたら面白そうな内容が多い。
エミリアの得意な分野は大量の情報がフォルダに入っておりテキストでいつでも読める為後回しでも良さそうだ。
「まぁ、得意な分野って衛星学だけなんだけどね」
「何かおっしゃいましたか?」
「あ、いや、なんでもないよ」
まぁ、何をして良いかも分からないし。
魔法、使えるか試しちゃいますか!
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