⑦ 物価高には消費減税が最大の効果あり
質問者:
日本は現在株価が上昇傾向ですが、特に末端の国民に関しては非常に厳しい暮らしをしていると思います。
筆者:
結局のところ、株価が上昇しているのは円安による海外投資の流入です。
しかし、株価が上昇したところで恩恵を得られる層は非常に限られています。
給料も大して挙がっていませんし、貯金することすらままならない一般国民にとっては何ら関係がありません。
質問者:
しかし、3%とかの物価上昇でここまで苦しくなるのでしょうか?
筆者:
今現在の日本は物価が上がりながら給料が上がらないスタグフレーション状態ですが、
スクリューフレーションと呼ばれる現象も起きているとも言われています。
質問者:
何ですかそのスクリューフレーションって……。
筆者:
あまり聞き慣れない用語だと思うのでスクリューフレーションについて解説させていただくと、2010年代から使われるようになったアメリカ発の造語で、中間層の貧困化とインフレーション(生活必需品の上昇)が同時に起きる現象をいいます。
つまり、3%の物価上昇以上に一般国民は影響を受けていると言うことです。
これはコロナやロシア・ウクライナ問題より前から起きていまして、更に今加速している現象です。
CPIを生活必需品(食料、持家の帰属家賃を除く家賃、光熱水道、被服履物、交通、保健医療)と贅沢品(生活必需品以外)に分類して分析してみます。
2014 年度以降、贅沢品の価格が横ばいで推移する一方で、生活必需品の価格は15%~20%上昇、直近1年では10%前後上昇しているのです。
世帯年収200万円未満だと生活必需品が支出の6割なのに対し、世帯年収900万円以上となると支出の4割台まで下がり分母の金額も大きいので貯蓄も容易になります。
この様に、生活必需品の上昇が世帯年収が低い世帯に直撃しているのです。
しかも、この価格の上昇が日本人に還元されているのでしたらせめてもの救いがあるのですが、
特に1この1年は円安や原油高による輸入品の価格上昇によるコストプッシュインフレが原因でして、海外に日本の国富が流れているだけで給料の上昇が追い付いていないのが現状です。
質問者:
なるほど、表で発表されている消費者物価指数だけを見ると見えない問題がこうして起きているわけなんですね……。
筆者:
物価高に対してまともに対処をしないのは昨年度の税収の上振れが2兆円以上になったのを見ても明らかのように、“実質的な増税”が狙いです。
更に日銀が23年7月28日の金融政策決定会合でYCCの「柔軟化」を決め上限を1%に引き上げました。
マイナス金利政策や上場投資信託(ETF)買い入れといった措置は現状通り維持したために0.5%の利率でとどめ、「異次元の金融緩和」を継続しているとされています。
しかしここでの利上げも意味不明の愚策です。むしろ、「金融緩和は終わるんだ」と投資家は思うことでしょう。
本格的な利上げは、景気の回復。政策としてはインフレの抑制のためや円安の防止のために行っていると思いますが、どちらにも効果がありません。
質問者:
どうして利上げが物価高に対して効果が無いのでしょうか? ある場合もありますよね?
筆者:
まずインフレについてですが、消費の過熱によるインフレでは無いので、利上げでインフレは抑制されません。
むしろ需要そのものは、2人以上世帯の消費支出は物価変動を除く実質で前年同月比4.4%減少(食料1.1%減、教育費19.5%減、仕送り金40.8%減)
とコロナ規制緩和による旅行費用の増加以外は、横ばいもしくは節約傾向にあります。
消費税を下げる又は廃止するのが一番インフレを軽減する効果があるのです。
消費税が下がることによって、価格転嫁をされるか、給料の上昇、企業の収益の改善のどれかが起きます。これはどれも国民にとってのプラスになります。
「景気の回復」も利上げの理由の1つなのかもしれませんが、円安による利益増加、そして円安による海外投資による株価が上がっているだけで一般市民にとっては株価上昇とは全く関係ないので景気が回復しているわけでは全くありません。
こうした利率を上げることによってマイナス要素の方がはるかに大きいです住宅ローンの7割の変動金利は上がるでしょうし、コロナ支援の借換えなどでの国民負担も増します。僅か0.5%の差ではあるのですが、「国民への資産課税」と言っても過言は無いのです。
また、日本国債価格が利上げによって下がることによって、担保として提供している方も追加担保を請求されます。
日本国債を持っているのは保険会社や銀行ですから貸し渋りも進みます。
このように利率が上がり、僅かながら短期金利で預金が増える恩恵よりも総合的に見たら国民にとってマイナスになってしまう可能性が高いです。
質問者:
以前2%の利率になると大きな景気後退になるかもしれないとおっしゃっていましたがいよいよ始まってしまったという感じですね……。
筆者:
0.5%の利率を境に国債を日銀が購入して支えているのですぐに1%にはならないと思うのですが、それをある時突然やめることによって、いよいよ日本の大規模リセッション(景気後退)が始まる可能性があります。
世界的に見てもイギリスは利率を上げてもポンド高にはなっても、物価高は止まっていません。
物価と利率は相関関係があるケースもありますが、必ずしも因果関係にはないと言うことも考慮して欲しいです。
更に非正規雇用の増加でより、世帯年収が下がっている現状があります。「余裕を無くさせて分断させ政府に対して抵抗させなくすること」が目的だと評価されても仕方のないレベルだと思います。
質問者:
なるほど、“生かさず殺さず”みたいな状態にすることで政府に対して戦えなくさせているのですね……。
筆者:
僕みたいな仕事を適当にこなしてそこそこなお金で満足して、時間に余裕があるような人間(そして家族がそうしても良いと理解がある)でなければ、色々調べる時間もありませんからね。
質問者:
確かに、収入が少なくても幸せそうにしてますよねぇ……。
筆者:
あと、“賃上げの要請”とか最低賃金1000円とか訳の分からないことを政府はやっていますが、利益も上がってもいないのに中小企業は上げることはできません。
また、増税をやっておきながら実質賃金を上げるのはかなり無理難題です。単純に減税と社会保障費を下げることが実質賃金アップ、生活改善、少子化対策など様々な効能があることを知るべきです。
そして106万円の壁を取っ払う気配が無いので笑うしかありません。本来ならこの壁を2倍にするぐらいしないと生活の足しにも人手不足解消にもなりません。
余裕のある大企業以外は賃上げなんて無理です。中小企業を淘汰して大企業を管理する戦略なんだなと思いますね。
社会保障費を月収50万円以下のブロックを下げるなどをしたほうが実質賃金が増えて国民は豊かになります。
質問者:
見えていないのか、意図的に国民を苦しめようとしているのかは分かりませんが、的外れなことをやり続けているのは間違いないですね……。
筆者:
正直なところ、企業の場合は愚策を連発すると敢え無く倒産しますが、国家レベルの規模になると余程大きな失態でなければ如実に悪いかどうか分かりにくいのも一因です。
逆に悪い所100%と言うことはまず無いと思うので良いところをチェリーピックし続けるでしょう。
たとえそれが、1割しかいいところが無い政策でも“成果が出た”と良い所だけを評価して言い逃れをするのが政府の常套手段です。
こうして非常に残念なことではあるのですが、政治家は我田引水や外圧によって日本の国益を損ない続けるのです。
では最後にこの過酷な状況下の日本でどう暮らしていけばいいかについて論じていきたいと思います。