④ 内部で分断・対立があるアメリカ
筆者:
さてアメリカについて見て行きます。まずは経済についてからです。
3月ごろにアメリカのシリコンバレーバンク、シグネチャーバンクが相次いで破綻しました。欧州でもクレディ・スイスが経営危機に陥るなどの一件も起きましたね。
質問者:
どうして銀行が相次いで破綻してしまったのでしょうか……。
筆者:
簡単に言えば、急速な利上げが原因です。利上げをすることで逆に国債価格は下落します。それを担保として借りていた会社は新たな担保を出すか繰り上げ返済するように求められ、株や暗号資産などを売却しました。
そのために、一時期は株価や暗号資産の価格も下落していましたね。
質問者:
しかし、最近もFRBなどでは利上げがありましたが、今では銀行は破綻していませんし、アメリカの株もむしろ上がっていますよね? これは逆にどうしてでしょうか?
筆者:
3月の銀行破綻をきっかけに、“皆で支えていこう”という風潮が逆に強まったわけです。
クレディ・スイスもスイス国立銀行が支えることになりました。
ただ、この影響は今でも密かに残っているんです。
というのも、貸し倒れてしまうリスクがあることから利上げをした国々の銀行では“貸し渋り”が起きているのです。
貸し渋りはすぐさま数字には出てこないと思うのですが、今後資金繰りに苦慮して連鎖倒産していってしまうケースも出てくると思いますので動向には注意が必要です。
質問者:
確かに事業者がお金を借りられないとなったら問題ですよね……。
資金繰りに困ってしまうと黒字でも倒産してしまうかもしれませんし……。
筆者:
アメリカは先進国で最も格差がある国として知られています。資産を持つ上位1%が持つ資産額は下位90%の持つ資産より多いと言われているほどです。
先進国で最もジニ係数が1に近いのもアメリカですし、GDPなどには反映されない深刻なものがあります。
米国勢調査局のデータによれば、4月前半に無料の食料配給を受けた世帯数は1140万戸以上で、前年同期に比べ15%増えており、食料を買うことも出来ない貧困者の数は確実に増えています。
ノースイースタン大学でフードバンク経営と公衆衛生を中心に研究しているジョン・ロウリー教授(経営学)は、感染の急拡大が終了した後も食料の無料配布に対する需要がこれだけ大きいことは「(経済にとって)良い兆候ではなく、恐らくリセッションが間近であることを示している」と語っています。
質問者:
しかし前回の世界情勢の話の際には“失業率が低いからまだ大丈夫”と言うお話も頂いたような気がしたのですがそれについてはどうなのですか?
筆者:
色々あれから調べたのですが、アメリカの雇用統計もちょっと“数字のカラクリ”があるようです。
確かに、6月の失業率は3.6%と今回も低かったのです。
5月の雇用統計では事業者調査の雇用者前月比は33万9,000人増加する一方、家計調査での就業者数は、前月比-31.0万人(4月は+13.9万人)と急減し、両者の乖離が大きく広がった。この家計調査の就業者の数字の方が、より実態を表しているとの指摘もあるようです。
何でこんなに差があるのかと言いますと、自営業者は事業所調査には含まれないが、家計調査に含まれる。また兼業をしている場合には、事業所調査では二重計上される可能性があるんですね。
ですから、兼業したり副業したりしていると数字が増えていく状況なんです。ですから、これから算出される失業率と言うのは怪しいわけなんです。
質問者:
なるほど、“盛っている”状態なわけですか。
筆者:
このために、ブルームバーグが今月実施エコノミスト調査では4-6月(第2四半期)と7-9月の国内総生産(GDP)見通しは上方修正されたが、今後12カ月間に米国がリセッションに陥る確率は依然として60%と見込まれており、現時点ではまだ良いと言えますが予断を許さない状況と言えます。
質問者:
アメリカ人はコロナによる補助金の貯金がいよいよ尽きてきたという話もあるようですし、物価の高騰がやはり厳しさを増していくのでしょうね……。
筆者:
物価上昇率は鈍化しても下がっているわけでは無いですからね。アメリカは密かに上級国民以外はかなり厳しい状況と言えます。
また軍事においても、ウクライナに弾薬を提供し過ぎたことから23年7月22日にアメリカのサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は『22日までに、ロシアの侵略を受けるウクライナへの軍事支援が続く中で、米軍が保持する弾薬の備蓄量が低水準に陥っている』ことを明らかにしています。
最近、クラスター爆弾を供与したのも普通の弾薬が不足しだしたためで、韓国から弾薬を購入したり、日本にも弾薬の生産を促したりしています。
質問者:
弾薬が無くなるだなんてかなり危なくないですか?
今、台湾有事が起きたら……。
筆者:
そう言う見方もありますが僕はそうは思いません。
というのも、アメリカは長距離弾道ミサイルや最新飛行機などは供与しておらず、中国として見たらそっちの方が脅威かなと思いますね
基本的に中国が台湾を攻めるとしたら国内情勢が深刻化した時だと思います。
「戦わずして勝つ」というのがかの国の信条ですからね。
質問者:
なるほど、直ちに戦争が起きるリスクはあまり無い訳なんですね。
筆者:
ただ、通常弾薬が少なくなっている状況は尋常では無いですからね。
続いてアメリカの不法移民問題について見て行きます。2022年のアメリカの不法移民数は過去最高を更新し、「タイトル42」というコロナ対策の入国規制が撤廃され、更に不法入国者が殺到してくるのではないか? と言われていました。
ですがバイデン大統領が新たに設けた規制は、ざっくり言ってしまいますと、タイトル42よりは緩和されたものの、米国国境通過直前に通過した国に不法入国した履歴がある人は受け入れないというものでした。
質問者:
それなら問題は更に悪化はしなかったわけなんですね?
筆者:
ですが、NHKの8月3日の『NY路上に移民希望者あふれる “受け入れ困難” 市が支援求める』という記事によりますと、
『アメリカのバイデン政権の移民政策に批判的な共和党の一部の州知事は移民に寛容だとされる民主党支持者が多い都市に移住を目指して入国した人たちをバスで送り込んでいます。
このうちニューヨークでは受け入れ先が不足して人々が路上での生活を余儀なくされる事態となり市が連邦政府などに支援を求めています。』
と移民問題での治安悪化と共に民主党が優勢の州と共和党が優勢な州で国家分断が起きています。
不法移民を容認する民主党に対し、国境の州(共和党系)に関しては不法移民に対して反対しているために、いよいよその許容数に限界が出つつあるわけです。
不法移民以外の問題でも人工妊娠中絶やLGBT、ウクライナをどこまで支援するかなどのなどの問題に関してもリベラル(多様な権利を認める)の民主党と、保守(アメリカ第一主義)の共和党が大きく政策が異なることからかなり大きな分断が発生してしまっているんですね。
質問者:
アメリカも移民や思想信条で分断と色々と大変なんですね……。
筆者:
まぁ、正直なところアメリカ、中国、インドなどの大国であったとしても“どこの国も怪しい”と言うのが実情だと思います。
これが更にブロック経済化することで“良いとこどり”と言うことがやりにくくなり価格が上昇していくのは必然だと思います。
今後は僕が挙げたような大きな欠点を埋めていった国が抜きんでて発展していくと思いますね。
質問者:
なるほど、得意を伸ばすことも大事ですけど、あれほど大きな国ですと欠点を埋めたほうが全体として見れば大きそうですよね。
筆者:
特に人口が多い国は格差問題を少しでも解決することが大事なのかなと思いますね。
多くの国民が不満を持つ状態と言うのは、暴動などのリスクがあり、社会システムの停止に繋がってしまいます。
結論から言いますと、アメリカも中国もインドもどこも怪しいところがあるので、BRICS新通貨ができたとしても長期的に見れば今の状況から大きく変わることが無いというのが僕の見解です。
では次にこれまでの世界情勢を受けて日本はどのように動いているのか。どう動いていくべきなのか。そして国民はどうするべきなのかについて考えていきます。