ステージ5
ステージ5
ミハエルside
「なんだ、これは……この白いのは口の中でふわふわで甘く、この黄色のクリームはこってりしつつも後味があっさりだ!」
ベルは初めての生クリームとカスタードをふんだんに使ったパフェを口や頬を汚しながら、パクパクと上機嫌に食べていた。
現在、僕たちはスイートスイーツ祭りに来ている。ロリポップの甘さで歓喜していたベルなら、きっと喜んでくれると思ったけど……まさか、ここまで喜んでくれるとは。
そして、なにより……こうやってパフェを食べて喜ぶ姿を見ていると、普通の女の子に見える。
数週間前に、僕と戦っていた魔王であった彼の姿は見る影もない。
きっと、そんなこと言ったら君は怒るんだろうなぁ。
そんなことを思いながら、パフェを夢中で食べる彼を見ていたら……ふと、ルビー色の目と視線がかち合う。
「なんだ、先ほどから俺をジーッと見つめてニヤニヤして……」
ジト目でそう言ってくるベル。
「クリーム、ついてるよ」
彼の頬に着いている生クリームを腕を伸ばして指先で拭い、その指先を開いている口に差し込んだ。
「はふふっ」
「美味しい?」
僕の指先をペロリと舐めた感触があったかと思えば、名残惜しそうにちゅうちゅう吸いながらベルは満足そうに笑顔で応えた。
「んふふっ♪」
昼間のお祭りでお腹いっぱいどころか、多分はち切れんばかりに食べたベルは宿屋のベッドでぐっすりと眠っている。僕はベッドの横に椅子を持ってきて、彼の頭を撫でる。
「月を思わせる銀髪、赤き血潮のような赤い目、か……」
伝説通りなんだ……。
彼の容姿を見ながら、そう思った。
幼い頃に、母に何度も読み聞かされた本で聞いた魔王の特徴。
夢にまで見た、魔王。一緒に行動して、今目の前にいるなんて……本当に夢みたい。
手中にベルの髪をひとふさ、掬う。
僕は彼に嘘を吐いている。対等な関係に憧れていたのは、本当だ。
正確には……言わなかった。
「ベルカルド、僕はね……魔王の話を聞いたときから君のことを……」