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ステージ2

ステージ2



「ねぇ」

 あれから、俺はこのお人好し勇者と行動を共にしている。

 理由は単純明快で、あのあと判明したのが女体化したことが原因で俺は強さも魔力も男性だった時とは打って変わって、大幅に下がってしまったのだ。

 大幅に下がったと言っても、恐らく中級の魔族や魔物、人間相手なら戦うのに困らないはずだ。

「ねぇねぇ」

 そのせいで、魔王城近辺の魔族と遭遇したら戦えないし……なにより、今まで強さと魔力のみで統治していたのだ。

 俺が弱体化したなんて知れれば、魔族たちは絶対に黙っていないというだろうという……勇者の提案で一緒に行動することになったのだ。

「ねぇってば!」

「うるさいっ! なんだ、勇者!」

「えー……君が反応しないから声かけてたのに、っていうか僕。勇者じゃなくてちゃんとミハエルって名前があるんだけど」

 勇者は、そう言って翡翠色をした目で俺の顔を覗き込んでくる。と同時にふわふわのやわらかな金髪も視界に入り込む。

 むぅ……顔がいいっ! ふわふわな雰囲気で優しそうな顔立ちだし、めちゃくちゃ俺好みっ! これで女だったらいうことないのに。

 と、心で一人呟きつつ勇者をあしらう。

「はぁ、勇者は勇者であろう」

「そうだけどさ……まあ、いいや。でも、僕は君のこともう魔王って呼べないでしょ?」

 頬をかいて勇者はそう言った。

「まあ、そうだな」

「なんか、フェアじゃない。のでお互い名前で呼び合おう!」

 なんか、すごい名案! みたいな感じで提案してきた。

「どういう理屈だ」

 身長的に勇者を見上げる形で、見つめ呆れつつ言った。

「まあ、いいじゃない、なんか友達っぽいでしょ」

 妙に嬉しそうな声で勇者はそう告げる。

「なんだ、貴様。友人一人いないのか? 寂しいやつだな」

「あはは、まあ遠からずも近からずかな……」

 そう言って先程とは変わって眉を下げて寂しそうに笑った。勇者は歩みを止め、しばし考えたあと口を開いた。

「まあいっか君になら話しても……僕はさ、王子で勇者なんだ」

 勇者に釣られ、歩みを止める。

「王族から勇者になったのか」

「いや、なったっていうか……生まれた時に勇者の紋章とやらがあったらしくてお陰で、ものごころが着く頃には人間には王族として、魔族や魔物からは勇者として、恐れられててさ……」

 ため息を一つ吐くと、頬をかきつつこう続けた。

「まあ、簡単にいうと対等な関係っていうものを築いたことがなくて、だから友達ってやつに憧れててさ……」

 力なく笑う勇者に皮肉で返してやる。

「数日前まで、我が城で斬り合っていた癖に」

「あはは、だよね……」

 目をそらしつつ、乾いた笑いを漏らす勇者。

「……」

「……」

 しばし沈黙が流れた。

 やりづらい、ものすごくやりづらい! 魔王、困る!

「……まあ、でも久しぶりに心踊る戦いだったことは認めよう、ミハエル」

「えーでも、それを台無しにしたの君じゃないか……って! 僕の名前っ!」

「ほら、置いていくぞ」

 と、再度歩き始めようとした時だった。

 視界が揺れて男性の身体の時に近い視界になる。

「だぁ! なぜ俺を抱き抱えるっ! やめろ! わわっ! 回るなっ!」

「僕も君の名前呼びたいから教えて!」

「おし、教えるからっ! 止まれ〜! このっ、馬鹿勇者〜〜っ!」



 しばらくあとにて

「さあ、俺を崇め! 名を讃えよ! 我が名は、ベルカルド・アスモディウス!」

 いい感じの大きさの石に片足を乗せ、胸を張って名乗りを上げてやった。

 決まった!

「わぁ!」

 目をキラキラさせているミハエル。

 さあ、讃えろ! そして恐るがいい!

「すごい可愛い! 可愛いよ! ベル!」

「ぬぉ!」

 ミハエルが抱きついてきた勢いでそのまま地面に倒れる。

 不敬、こいつ……めちゃくちゃ不敬すぎる……。

「い、色々言いたいことはあるが……ミハエル、貴様。いきなり愛称で呼ぶやつがあるか!」

「え? あー……じゃあ僕のことはミーシャで!」

 真剣に悩んでからミハエルはキメ顔でそう答えた。

「違う! そういうことじゃない! あと呼ばないぞ!」

 恐らく、こいつ。愛称で呼び合おう、みたいなやつだと思ってるだろ。

「……」

「「えー呼ばないの?」みたいな顔をするんじゃない! あと重い! 降りろ!」

 土埃を払いつつ、立ち上がる。

「それと、だ」

「なんだい?」

 ミハエルは首を傾げる。

「貴様のそのところ構わずに俺に抱きついてくるのは、なんなんだ!」

「え? 可愛いから?」

「やってる本人がよくわかってないパターンだ、これ」

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