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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第76話 闇からの来訪者

 ジルベルト・カバネラという男がいる。

 兄の名はゲオルグ・カバネラ。昨年の立春祭の日、原因不明の焼身自殺を遂げた男だ。


 国家魔術院の公報には、金銭問題の話のもつれによる無理心中だろうという発表になっているが、それはあり得ない。

 兄が相手の男エドワーズ・ジェノワーズから金を借りることなどありえない話だからだ。

 それに、兄は「仕事がある」といってメストリルへ向かった。つまりは「暗殺」の依頼だ。


 ジルベルトもゲオルグも、メストリルの隣国ウォルデランの秘密結社の一員だ。

 ウォルデランはメストリルの南方の隣国であり、メストリルとは友好関係にある小国だ。

 その国の闇にその秘密結社『シュニマルダ』の本拠地は存在している。どこかの国の言葉で「暗殺者」を意味するその結社は、構成人員は数十数百ともいわれる闇の勢力だった。

 その構成員たちは落ちぶれた魔法使いや盗賊上がり、元戦士など出自も様々だ。しかし、この結社が集団で動くことはほとんど皆無だった。それぞれが単独で依頼を受け、その上がりの一部を結社の運営資金として納める。結社はその活動資金を使ってさまざまなサポートを行うといった感じだ。

 例えば武器の調達、道具や毒のたぐいの調達、いつわりの身分証の発行など、暗殺に必要な小道具や人員などありとあらゆるサポートを可能としている。


 しかしもちろんこの存在はある一定のものにしか知られていない。現在のところ、各王国関連人物、つまり貴族関係者からの依頼は受けていない。というよりも、その存在を知られていないのだ。

 そもそもこの『シュニマルダ』は、貴族から無碍むげに扱われたものたちを一人ずつ個別に「勧誘」して集めた集団であり、貴族に対する憎悪が深い。どちらかというと、貴族たちからうまく金を巻き上げてやろうといった方向でまとまっているといえる集団だからだ。

 つまり、つながる相手は、「商人」が主たる対象となる。商人たちの中には腹黒い輩も多くいて、商売(がたき)おとしいれたり、貴族からうまく金を巻き上げたりするものも多い。そういう手助けをしているというのがこの集団の主な仕事だった。自然、活動の地域は広範にわたる。そして、世界中どこにでも『シュニマルダ(暗殺者)』は存在しているといわれている。


 その『シュニマルダ』は、依頼主を殺すことはあっても、自分が自殺などするはずがないのだ。


(それに兄貴は錬成「2」魔術師だった。その兄貴がそんなことで死ぬはずはない。必ずなにか裏があるはずだ――)

 ジルベルトはそうにらんでいた。


(かならずかたきをとってやる――)

 

 まずは無能な魔法庁の結審などあてにはならない。一番の手がかりはそのエドワーズの息子、ルイだ。とにかくそこから始めるしかない。

 父親の死後、無能なその息子が跡を継いでいるというが、なんだかんだ言っても結構溜め込んでいたらしいし、ジェノワーズの売春宿も結局小火(ぼや)で済んでいるという。


(兄貴が死んだってのに、のうのうと生き、贅沢してるのはゆるせねえ。まずはそのルイから搾れるだけ搾り取ってやる)


 ジルベルトはそう考えていた。



******



 ルイ・ジェノワーズは可笑しくてたまらなかった。


 親父の急死にはさすがに驚いたが、店もひと部屋が焼けたに過ぎず、結局大事には至らなかった。その部屋はさすがに気味悪いためすぐに修繕をして痕跡を消した後、今はもう倉庫として使っている。


(俺がそこに入ることはないのだから、別に構いやしない――)


 それよりも親父はとんでもない財産を残してくれた。

 この店と、店の女どもは全くの無傷だ。営業は改修工事の後すぐに再開できた。客足が戻るまではそれほど時間はかからなかった。

 こういう商売というのは、一定数の需要があるものなのだろう。


 金は毎日じゃぶじゃぶと手に入る。

 女は店の女を抱き放題だ。すこし脅かすか小遣いをくれてやれば、簡単にドレスの裾をまくる。


(まったく、何でこうなったかわからないが、神様のおかげだというならそいつに目一杯感謝しないとな――)


 ルイは自分の前にしゃがみ込む女を見下ろしながら、その髪をつかんで前後に揺すっていた。


 その時だ。


 いきなり扉が開け放たれ、黒ずくめの男が現れた。

 ルイは驚きのあまり女を突き飛ばしてしまう。下半身は丸見え状態だ。


 まさかいつぞやの自分の親父も同じような体験をしているとは夢にも思わなかったが、ルイは、何とか声を出す。


「な、なにやってる! 勝手に入ってくるな――」

と言い終わる前にルイの腹に一発強烈な蹴りが食らわされる。


「ぐほおおお!! お、おま、お前ぇぇ――」

ルイはそのままソファの背を越えて向こう側にすっ飛んでそう叫んだ。


「うるせーよ、クソガキが……。死にたくなかったらいう事を聞け。それから俺のことは誰にもしゃべるな――。――お前もだ。さっさと消えろ女」


 女は、小さく悲鳴を上げて、その部屋から逃げていった。


「なんなんだよ? おまえはぁ!」


「それ以上騒ぐと今度はその顔面に蹴りを見舞うぞ?」


「う、うるさい! 俺はルイ・ジェノ――」


どごぉ! という鈍い音と共に、ルイの顔面に蹴りが命中した。


「うるさいのはお前だよ。俺は今機嫌が悪いんだ――。次は加減しねーぞ……」


「う、うへっ、やめ、やめてくれ――。わ、わかった、いう事を聞く。聞きます――だから、もうやめてください――」


「わかりゃいいんだよ。それよりさっさとそのキタねえもんをしまえ、蹴りつぶすぞ?」


 ルイはあわててズボンをとり両足を突っ込んだ。




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