表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

689/781

第689話 クリストファーのもとにもたらされたもの


 クリストファーはヘラルドカッツに戻ったのち、多忙を極めていた。


 取り敢えず、即日、東のデリアルスへと通信装置及びアンテナの建造チームを派遣しなければならなかった。


 そちらの方へは、すでに経験を積みつつある助手のデジムさんをチームリーダーに据えて向かわせることに。

 デジムことデジムート・バウマイスタという男は本当に変わった男だ。


 ジュール遺跡に不意に現れたこの「旅人」は、どうやら「遺跡」に興味を持ったらしく、なら、見て行けば? と言ったら、結局そのままクリストファーのチームに入り込んでしまった。

 

 その後、いろいろと話を聞いていると、あのキールさんとも知り合いだったという。大学在学中はほとんど学校に出ず、諸国を放浪しては、誰かと一緒にしばらく暮らしたり、その地方の有名な武術家に弟子入りしたりしていたらしい。


 本当かどうかは本人の言葉を信じるしかないが、体力的にも体幹的にも、相当の運動能力を備えていることがわかるまではそれほど時間はかからなかった。


 そんな男だが、もちろん、「科学」については素人だったため、クリストファーの研究チームに帯同していても、技術的・学術的な助けにはならなかったが、それ以上に、運動能力的には建設チームの職人さんたちの数倍の労働力を提供し助けてくれている。

 それ以外にも、研究チームの資料や実験道具、各部部品や試作機の搬入搬出などを率先して引き受け、研究チームの面々から信頼を勝ち取るまでそれほどの時間はかからなかった。


 今では、「現場監督」として立派に信頼を得、作業工程の管理や職人や作業員のケアなどを担当できるまでになってきている。


 これまではクリストファーが帯同して各部管理の点検などを行っていたが、この間のキュエリーゼの建設現場で、すでにクリストファーが付いていなくとも問題ないということがわかった為、今回は彼をリーダーとしたチームを編成することにしたわけだ。


 これでデリアルスの方は一応片が付いたと見ていい。建設場所については、すでに打ち合わせを済ませておいたから、あとは工事を始めるだけだ。ひと月ほどで通信装置が完成することだろう。


 だが、今回自分がこのヘラルドカッツに残ることにした「理由」が次々と湧き上がってきている。


――融資の申し入れ、だ。


 正確には、通信設備の建設費の割賦払いの申し入れ、だ。

 すでに、フロストボーデン王国とケウレアラ王国から打診が来ている。


 さすがに3国同時に行うことはできないため、一時凍結し、一月後に再度検討するという返事を持たせて本国へと使者を送り出したが、これ以上打診があると、財政面での問題というよりは人員的な問題が発生することになる。


 今回の「デジム・チーム」は、各部リーダー的な役割ができるもの「数名」で組織している。あとは、現地で職人や人員を募集して賄おうというものだ。

 これが上手く稼働できるようであれば、今後もこの形を取っていけばいいが、もしいろいろな問題が出てくるようなら、チーム編成を考慮しなおす必要が生じてくるかもしれない。


 そうなれば、数か国同時に工事を行う事が難しくなる可能性も否めない為、ひとまずはデリアルスの工事の経過を見てから話しを進めるということで、各国の使者には説明し、納得してもらった。



教授せんせい――。実はお話が――」


 クリストファーが自室で書類を整理している時に、静かに部屋に入ってきたフランソワが、すこし複雑な表情でそう声を掛けてきた。

 クリストファーは、何ごとかと身構える。いつものフランソワなら、こんなに遠慮がちな態度を見せることは無い。


「どうしたの? なにか、体調にでも問題があるの?」


 クリストファーはさすがに不安になってそう問い返す。


「――え? あ、いえ、そう――でもないこともないんですけど……」


と、フランソワ。


「そうでもないこともない? って、やっぱりどこか体の具合が悪いんだね? すぐに診てもらわないと――」

「あ、いえ、もう、診てもらったんです――」


「あ、そうなんだね? で? どこが悪いの? どこか痛むのかい?」

「いたって、健康――だそうです。順調ですから、安心してくださいって――」


「え、え? 健康? 順調? だって、具合が――」

「赤ちゃん――!」


「へ?」

「せんせい、私、お腹に赤ちゃんがいるんです――」


 クリストファーは、さすがに驚いた。

 が、今のフランソワの表情の意味を即座に理解する。フランソワは、自分の邪魔になるのではないかと考えているのではないだろうか――。


 クリストファーはすぐに机から立ち上がり、フランソワのもとに駆け寄ると、優しく抱きしめた。


「フランソワ――、ごめん、気付かなくて。大丈夫。何も心配することなんてないよ。おめでとう、フランソワ。そして、本当にありがとう」

「せんせい……、産んでもいいんですか?」

「もちろんだよ。正直驚いてまだ、よく分かってないけど、でも、嬉しいことだってのは分かってる――」

「あ、ああ――わたし、せんせいのお仕事のお邪魔になるかもって――」

「そんなことは無いさ。大丈夫。それよりフランソワは、体を大事にして、元気な赤ちゃんを産んでね? ああ、僕の息子か娘に数か月後には会えるんだね――」


 そして、二人は微笑み合うと、唇を重ねた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ