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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第664話 ボス戦が始まった!


 ボス部屋の大扉を4人がかりでゆっくりと押し開ける。

 扉は観音開きで左右に分かれて開いた。


 その先に見えるのは、大きな広間――。


 石というより、大理石に近い光沢のある床面と壁――広さは部屋の横幅が30メートル、奥行きは50メートルほどはありそうだ。天井までは優に10メートルはあろうかという巨大な空間。


 言うなれば、「サッカー場」の4分の1ほどの広さか。


(広い――)


と、ローズはそう感じた。


 まさかこんな大きな部屋が「迷宮」の奥に存在するなど、想像の範囲を超えている。


「こんなに広いの!?」


 思わず声が漏れるのを止めることが出来ず、ローズは感嘆する。


「――そんなことより……、ローズ。奥にいるアイツ、あれがこの「迷宮のボス」【ザ・ロード・オブ・スケルトン】だよ――」


「ええ。見えているわ。でも、動かないわね?」

「うん、まだアイツの感知範囲に入ってないからね――」


「どうするの?」

「作戦通り、だね――」


 二人の会話にケイとライもこくりと頷く。



 この部屋に入る前、休憩を取りつつ作戦を各自には伝えてある。

 【ザ・ロード・オブ・スケルトン】の特徴もすでに周知済みだ。


【ザ・ロード・オブ・スケルトン】――。

 いわゆる「骸骨の王」という名だが、まさしくそれにふさわしい特徴を持っている。部屋の奥、玉座にそいつは腰かけており、その前に数列に渡って【スケルトン】の取り巻き(センチネル)を従えている。

 その取り巻き(センチネル)たちが侵入者が部屋を奥へと歩を進めるたびに、手前から順に襲い掛かってくるらしい。


 つまりは、進んでは退いてを繰り返せば、各個撃破が可能だということになる――。


 最初の取り巻き(センチネル)は4体。次が3体。そして最後が2体。

 その取り巻き(センチネル)をすべて撃破するとようやく「ボス」が玉座から立ち上がる――。


 初心者向け「迷宮」の「ボス部屋」としては基本的なギミックだが、もちろん、この情報を知らずに突っ込んで行こうものなら、あっという間に囲まれて非常に困難な状況になるのは、言うまでもない。



「いい? 左右の壁の柱をよく見て。手前から奥まで4本並んでいるよね? あの柱が基準だよ。まずは1本目を越えたら入り口まで下がる。これで最初の4体を「釣る」。4体を倒したら次は2本目まで行ってまた下がって、3体を倒す。これの繰り返しだからね?」


 ハルが、3人に再度指示を与える。

 3人は、分かった、と答えた。


「最初の4体は、これまで通りでOK。特に特殊な能力はない通常の【スケルトン】だから。次の3体は、連携攻撃を加えてくるから、そこは作戦通りで。最後の2体は魔法を使ってくるからケイとボクで対応魔法を繰り出しながら、いくよ――」


 ハルがそれぞれの特徴をもう一度確認したところで、4人は頷きあう。


「よし! じゃあ、始めるよ!!」

と、ローズが号令をかけた。


 瞬間、おおお! と雄たけびを上げて駆けだすのはライだ。


 一本目の柱のラインまで駆け上がると、そこで左手の中盾に利き手のショートソードを叩きつける。


ガアァン――!


 という金属音に4体の【スケルトン】が反応し、一気にライへ向けて突進してきた。


「よし、きたぁ!」


 ライはそう叫ぶと、盾を構えつつ、ざざっと後退する。


 奥の3体の【スケルトン】は動かない――。


「よし! 作戦通りだよ! いいよ、ライ! ケイ、いまだよ!」

と、ハルが声を張り上げた。


「『防御力上昇インクリーズ・ディフェンス・パワー』――!!」


 ハルの叫びと同時に、ケイが詠唱終了キャストすると、ライの身体が一瞬光に包まれた。


「ローズ、行って!」

「まっかせなさぁい!」


 先ほどの前室の時と同じ手順だ。

 4体のスケルトンのタゲを取ったライから、タゲがローズに移る前に倒しきる。つまり、一撃必殺で「核」を貫いてゆけば、ライからタゲが外れることはない。


「さあ、いくらでもこいぃ! 支援魔法バフがあるから痛くもかゆくもねえぜ!!」 


 これまで、ケイトの支援魔法を使わずここまで来た効果が表れている。ライは4体に囲まれながらも、的確にブロックし、大ダメージは全く受けない。

 恐怖心がないため、余裕をもって【スケルトン】たちの攻撃を見切っているのだ。


「せいやぁ!」

と、ローズのバックスタブ。ガラガラと崩れ落ちる【スケルトン】――。


 そこからは淡々と作業をこなしてゆく。


 ローズが難なく3体目の【スケルトン】に背面攻撃を成功させたと同時に、最後の一体の【スケルトン】も崩れ落ちた。


「ライ! やるぅ!」

「へっ! 俺も受けてるだけじゃないんだぜ?」


 これで4体――。


「一旦退くよ――!」

「ああ!」


 そう二人は示し合わせると、部屋の入り口付近で後方支援に専念していた二人の元へと戻る。


 まだ次の3体は動いていない――。


「よおし! 幸先はいいよ! この調子で行こう! ライ、ダメージはどう?」と、ハル。

「いや、全然大丈夫だ」と、ライが答える。

「ライも相当打たれ強くなってるからね?」とはローズだ。

「本当に大丈夫? 『低級治癒魔法』なら打てるよ?」と、ケイがやや心配そうな眼差しでライを見やる。


「ああ、大丈夫! 次はちょっと気を引き締めていかねぇとな?」

と、ライはケイに向かって微笑んで見せた。


「よし、次は2本目、だね!?」

とローズが声を上げる。

「――さあ、いくよ!」


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