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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第605話 懐かしき先輩との再会


 ミリアたちは浜辺から街の中心街へと向かう。今日の目的地は、ノースレンド国家魔術院だ。


 実はミリアはこのノースレンド国家魔術院に「二人の国家魔術院長代理」が就任してから一度も訪れたことがなかった。

 今日はその二人に挨拶を兼ねて、現状のノースレンド国家魔術院の復興状況の確認をしようと思っている。


 「二人の院長代理」――。

 一人は、メストリル王国国家魔術院からミヒャエル・グリューネワルト、そしてもう一人は、ヘラルドカッツ国家魔術院からルスラン・レヴィンだ。


 ミリアとミヒャエルは同じ組織に属していたため、過去に何度か出会っているのだが、もう数年以上も出会っていない。おそらく、高等学院の時に会ったきりで、大学に入ってから以降は、実は彼がどのような任務に就いていたかを知らないでいる。

 つまり、ミヒャエルがキールの諜報活動を行っており、キールのカインズベルクでの行動についても院長へ報告していたのだが、当のミリアはキールに張り付いていた諜報部員がミヒャエルだとは知らないでいた。


 だが、それは些末な事である。

 そもそも国家魔術院の魔術師というのは、潜伏諜報が主たる任務であり、各国や要人に張り付いては情報収集と本国への報告をしているものだからだ。


 たとえミリアが、ミヒャエルの標的ターゲットがキールだったということが一時期在ったと知ったところで、なにも気にするところではないだろう。


 それよりも、だ。


 ルスラン・レヴィンの方が気になっている。

 ルスランこそ、クリストファーを誘拐した実行犯であり、クリストファーが現在の状況に身を置いている根本的な原因となったものだからだ。


 挨拶代わりに、嫌味の一言でも言ってやりたいと思っているのが正直なところだ。


 そんなことを考えながら歩いていると、通りの向こうから一人の男が駆け寄ってくる。

 その男の顔にミリアは見覚えがあった。


「ミリア様――! やはり、ミリア様でしたか――!」

「ミヒャエルさん!? ご無沙汰しています――」


 ミヒャエルが「ミリア()」と呼ぶのには訳がある、らしい。

 これは、昔からのことだ。

 魔術院においてはミヒャエルの方が先輩であり、ミリアの方が後輩であるのだが、ミヒャエルは初めて会った時からずっと「ミリア様」と呼んでいる。


 いつぞやことか、どうして後輩である自分のことを敬称付きで呼ぶのですかと問いただしたことがある。

 その時ミヒャエルはこう言った。

『私がそう呼ぶべきであると、そう思っているからです。その理由については、お話することではありませんので、好きにさせてください。お願いします』

と。

 つまり、彼自身の中に言えないわけがあり、ミリアに対してそう呼ぶべきだと自らが規定しているというのだ。

 

 ミリアとしてはそれ以上の詮索は出来なかった。そこで、せめて自分の方からはすこし距離を近づけるために、「グリューネワルトさん」ではなく、「ミヒャエルさん」とそう呼ぶことにしている。



「竜が空を舞っているのを見ましてね。もしや、ミリア様ではないかと、浜へ向かっていたところでした。いやあ、懐かしい。もう立派な淑女ではありませんか。学生時代のあなた様も可憐で美しかったですが、今や、国家魔術院副院長となられて、ますます磨きがかかって凛とした目をなさっておいでです。たたずまいにも気品と自信が漲っているようです」


 ミヒャエルの言葉は、すこし大仰おおぎょうだとミリアは思ったが、これを社交辞令として受け止めるなら、適当に合わせておくのが一番無理がない。


「――そんなことはありません。私など、まだまだ未熟な青二才です。ミヒャエルさんにはこれからもいろいろと叱咤激励を頂戴いたしたく思います」


と、返しておくにとどめる。


「ははは、私があなたに勝っているのは、「隠れ方」ぐらいですよ、ミリア様。まあ、これだけは私の自負ですがね。それ一つでここまでやってきましたから――。あ、そんな話はいいとして、ここにお越しになった目的は、ノースレンド国家魔術院ですよね?」


 さすがはミヒャエルさんだ。

 そういうところはお見通しだ。


「はい。ルスラン・レヴィンさまに会いたいと思いここまできました。今日は、おいででしょうか?」


「残念ながら今日は不在です。今晩遅くにはお戻りになるでしょうから、明日なら面会できますよ。一晩ぐらい逗留されても問題ないのでしょう? お部屋を用意いたしますので、今晩は、ゆっくり旅の疲れを癒してください。もちろん、みなさまも、です」


 そう言うと、ミヒャエルさんは4人に先を促した。


 

 国家魔術院に着いた一行にそれぞれの給仕係が部屋を案内すると、大浴場の準備が出来ておりますので、荷物を下ろされたら階下の大浴場へお越しくださいと、4人それぞれの給仕が示し合わせて案内をする。


 ミヒャエルさんが、ここに来るまでの道中に是非お使いくださいと言っていた大浴場のことだろう。

 ミヒャエルさんいわく、

「ヒューロ・ガイレンの置き土産ですよ。現在国家魔術院ではこれを有効利用させてもらっています」

ということらしい。


 なんでも週2日ほど、市民に開放して、格安で入浴してもらっているのだとか。

 

 今日は非開放日だとかで、4人の貸し切りで使用していいとミヒャエルさんが言っていた。

 4人は、案内に従って、階下の大浴場へ向かうことにした。


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