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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第599話 ローズの冒険・娼館編?


 食事後、ハルとローズは街中をルドに案内されながら見て回ることに。


 あのお店、名前はなんて言うのかわからなかったけど、ハルの言うとおり、「蜂蜜パンケーキ」は本当においしかった。


 聞くところによると、あのお店には二人ともよく足を運ぶらしい。他にも、エリザベス教授も常連らしく、あと、ルドさんの働いている「服飾ブランド」のデザイナーの人とも良く一緒にお茶しているらしい。


「今日のことは、教授とリディには内緒だね? 抜け駆けしたって怒りそうだから」

と、本当か冗談かわからないふうでハルが笑う。


「ああ、そうだね。ローズも黙ってなよ? ホントにあの二人、目くじら立てて怒るからね。こわいよ~?」

と、ルドさんも乗っかる。


「そんなに怒るんですか?」


 ローズがそんなことで怒る人はいないはずで、半ば揶揄からかわれているのだろうと決めて聞き返す。


「怒る怒る」

「怒るよね~」


 と、二人は楽しそうに笑い合っている。


 ローズはこんな空気感、初等教育学院に通ってた時以来じゃないかとふと思う。よくよく考えたら、こんなふうに女友達と散策をした経験など今までに一度もなかったと思い返す。


(なんか、楽しいな――)


 自然とローズの頬も緩んできているような気がした。



「さてと、ここからが繁華街なんだけど――。ローズはそのう、男と女のことについては免疫あるのかな?」

 

 ルドさんが唐突な質問を投げてくる。この人もハルと同じなのかと訝しみつつ、


「男と女?」


 と、質問の主旨がわからなくて聞き返すことに。


「まあ、いいか。実は、うちの事務所、娼館しょうかんの建物の中にあるんだよね。《《しょうかん》》、わかる?」


「あ――」


 ローズはルドさんが言っていることに気が付いて短い感嘆をあげる。


「ふふん、その様子だと、免疫はないけど知らないってわけじゃないって感じかぁ。まあ、一つの社会勉強だと思ってついてきなよ。あ、大丈夫、今はまだ昼だから、店は開いてないから」

「は、はあ」


「何の話だよ? ボクにも分かるように言ってよ?」

「あー、ハルちゃんは知らなくていいの。綺麗なお姉さんやお兄さんがいるところぐらいに思ってればいいから――」

「ちぇ、なんだよ? だいたい歳は僕の方が随分と上なんだからね? 子ども扱いしないでよね?」

「無理無理、そのなりでそんなこと言ったって、通じないよ? それに、『翡翠ひすい』さまに余計な事教えるなって言われたら困るしね?」


 などと話しながら、繁華街の方へと入ってゆく。


 まだ昼間だからなのか、閑散としている通りだが、建物に付いている「灯り」の数が多いような気がするのは気のせいではないだろう。


 まだ光は灯っていないが、日が落ちるころには賑やかな風景に様変わりすると思われる。


 少なくともベルルさんのお店が在るクエルの街にはこんな風景は無かったはずだ。


 そんな通りを半ばまで歩いてきたところに、より荘厳な雰囲気を醸し出している娼館があった。ルドさんはそのお店の通用口へと向かう。


「さ、入って入って。大丈夫、取って食おうなんて思ってやしないから。実は、来期発表予定の新作水着のサンプルがいくつか出来上がったんだよ。折角だから、見て行って――」


「おじゃましま~す」

と、ハルが全く意に介さず入ってゆくものだから、ローズもやや緊張しながら建物内部に入る。


 通用口を入ると、細い通路になっていて、そこを少し進むと階段が正面にあった。ルドさんがその階段を登っていくあとにハルとローズが続いて登る。

 2階にあがると、廊下が奥に伸びていて、その突き当たりの扉に「作業所」と書かれたプレートが掛かっているのが目に入る。


 ルドさんがその扉を開けると、中はそこそこの広さがある部屋で、女性と男性が数人何やら布切れを持って作業をしていた。


「ただいま~、みんな。そんなに根詰めなくても大丈夫だからね~。夜のお仕事にさわらない程度に適当にやるんだよ?」


と、声をかけるルドさん。


「あっ、所長! おかえりで~す」

「だってさ、これ楽しいんだもん」

「ねえ、こんなのどう? ここの縫製少し工夫してみたんだー」


 などとわいわいと楽しそうにしているお姉さんお兄さん――。


 ローズは一目で気が付いてしまった。

 この人たち、皆、《《娼館のひと》》なんだ――と。


 だけど、ローズが想像していた娼館の情景とは全くかけ離れているように思い、さすがに戸惑いを隠し得ない。

 ローズが想っていたのはもっとこう、「陰惨な」雰囲気だったからだ。


「ああ、そう言えば、ジルベルトさんが探してましたよ? ルドはどこ行ったー、ってね」


 一人の男の人がそうルドさんに告げる。この男の人の顔立ちだが、本当に美しいという言葉がよくあてはまる。綺麗に整った顔立ちで、優しい微笑みが魅力的だ。


 これが「男娼」というものなのかと、ローズはまじまじと見入ってしまった。


「あら、これはこれは、『可愛らしいお姫様』をお二人もお連れでしたんですね?」

「こら、二人は私の客だよ? ()()()()()()からな?」

「ははは、冗談ですよ。ルドさんの可愛い妹さんたちに手を出したら、ここにいられなくなりますからね?」

「わかればよし」


 まあ、ゆっくりしていってね、僕たちのことは気にしないでいいからねと、言い置いてその男の人は去って行った。


「さ、こっちこっち、奥の部屋に置いてあるんだ」


 そう言ってルドさんはさらに奥の扉へと向かった。


 ハルがいるから大丈夫だよね? と少し不安に感じつつ、相変わらず意に介さないハルの後ろをついてゆくローズだった。


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