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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第598話 メストリルの「愉快な」人たち


「へぇ~、エリックさんが来てたんだね? でも、ボクはすれ違わなかったよ? あのひと、影薄いから、気付かなかったのかなー」


 と、ハルが恐ろしいことを平然と口にする。


 このハルという少女、年齢はいくつか分からないけど、とても人懐っこい匂いがする。見た目で言えば私とそう変わらないように思えるのだけどと、ローズは見ていた。


「えっとぉ、そうだなぁ、メストリルを案内してって言われてるけど、どこに行けばいいかなー。ほら、この街って、それなりに広いんだけど、別に大した施設が建っているわけじゃないからね。街にある名所なんてものはほとんどないし――。あ、そうだ! ねえ、ローズ、甘いものは好き?」


 二人は今、メストリル王城からでて通りを歩いているところだ。

 王城から表に出ると、左右に大きな通りが一本通っている。これがメストリルのメインストリートらしい。

 この通りを王城から出て右へ行くと国家魔術院の入り口があり、左へ行くと商店街や繁華街などの城下町が広がっている。正面には貴族屋敷群が並んでいると言った感じだ。


 通りはそのまま城壁まで続いていて、右はケライヒシュール方面へ、左はウォルデラン方面へと続く街道が伸びている。


「甘いもの?」

と、いきなりの角度から飛んでくるハルの質問に戸惑うが、おそらく、こういう子なのだろうとそこは咀嚼そしゃくする。

「――ええ、好きだけど……」


「よし! じゃあ、決まりだ。何をするにもまずは腹ごしらえってね――」


 そう言うとハルがローズの手を握ってぐいと引いた。

 ローズは引かれるままにハルの後に付いていく。


 商店街の方へとしばらく歩く。そうして、少し歩いたところにそのお店はあった。


 入り口からしてかわいらしい造りで、すこし甘い香りが漂っている風な気にさせられる。


「ここの蜂蜜パンケーキが最っ高なんだよね! ホイップがいーっぱい乗ってて! 絶対、ローズも気に入ると思うよ!」


 そう言うとハルはそのまま店に飛び込んでゆく。

 ローズも仕方なく店内へ。


 店内はいささか狭い感じだが、小ぶりの椅子やテーブルが並んでいて、すでにほとんどの席が埋まっている様子だ。


 店内に入ってきた二人に気が付いた店員が席に案内する。二人は案内に従って席に着いた。


「蜂蜜パンケーキホイップ載せ、2つね!」


 ハルが席に着くなり店員にそう告げる。まったく、メニューすら見る余裕がない。まあでも、この子がこれだけ肩入れしてるのだから、間違いはないだろうと腹を括ることにする。


 せっかくなので、狭いテーブルの端に申し訳なさそうに置いてあるメニューを手に取って開いてみる。


(ふうん、お菓子専門店なのかと思ったけど、それ以外にもメニューがあるのね――)


 などと、一通り目を通して元の場所に戻した。


「ねえ、ローズはエルルート族のこと知ってるの?」


 これまた思いもよらない角度からの質問が飛んでくる。


 ローズは、もう戸惑うことなく、


「エルルート族の人は何人か見かけたことがある程度よ。ベルルさんの雑貨屋で働いている時に、冒険者風の人とかがふらりと来てくれたりしたから――」


「そうなんだ。もうずいぶんとこっちに来ているエルルート族も増えてきたんだね。僕らがこちらに来た当初は、全くと言っていいほど街中では見かけなかったからね。潜入している者が各町に1人か2人ぐらいはいたけど、ほとんど姿を見せなかったし――」


「えっと、もしかしてハルって――」


「あ、ああ。ボクはエルルート族だよ。この国には師匠と一緒に来てるんだ。師匠ってのはボクの魔法の師匠ね。ジルメーヌって言って、こちらでは『翡翠の魔術師』って呼ばれてるんだって――」



「あら、ハルちゃん?」


 ローズの背中の方からいきなり、別の女の人の声がする。


 ローズはやや肩越しに後ろの方を見やるように声のした方向に目を向けた。


 短い黒髪のやや大人な感じの女性がローズの横を通り、テーブルの横で止まると、ハルに会釈する。


「あ! ルドさん! ひとり?」

と、ハルが返す。どうやら、知り合いのようだ。


「ああ、今来たところさ」

「じゃあ、一緒に食べようよ。店員さん、こちらの方もここに席を用意して――。ありがとう、どうぞルドさん」


 ハルがその「ルドさん」の答えを待たずに勝手に話を進めてゆく。店員さんも慣れているのか、すんなりと対応すると、ハルの隣に席を一つ追加し、その席に「ルドさん」も腰掛ける。


「わるいね、急にお邪魔して。えっと、こちらの方は初めましてだね? ルド・ハイファです、よろしく――」


 その人がこちらに視線を投げて挨拶をしてきたので、ローズも応じて返すことに。


「ローズ・マーシャルです。よろしくお願いします」


「ローズ? へえ、ハルちゃんと同じ名前じゃないか。『ダブル・ローズ』って感じ?」


「は、はあ――」

と、私。

「ルドさん、そういうのあまり受けないよ? それより、店員さんが注文待ってるんだけど?」

とは、ハルだ。


「あ――、ごめんごめん。二人は何にした? ――ああ、じゃあ、私も蜂蜜パンケーキホイップ載せで――」


 

 なんだか、また新しい変な人の知り合いが出来てしまった。どういうわけだろう、このメストリルって、こんな感じの少し変わった人ばかりが住んでいる国なのかな?


 などと、ありもしない仮説を立てるローズであった。


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