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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第574話 メストリル郊外の川の工事現場にて


 クルシュ暦372年3月21日――。

 キールがユニセノウ大瀑布の目前で一晩を過ごしたその日のこと――。


 エリザベスとハルはメストリル王都メストリーデの北側を流れる川の工事現場に来ていた。


 現在この場所に、メストリル王国の国家事業により、「発電所」が建設されつつある。

 この発電所は、いわゆる「水力発電所」と名付けられており、水の流れる力によって、電気を生み出そうという試みである。


 これを考案したのはエリザベスだ。


 現在主に使用されている発電機は、『ヘア式自発発電機』と呼ばれるもので、これを何台もつなげて、電気容量を確保しているのだが、材料的にも設置場所的にもコストがかかりすぎている。


 そこで考えたのが、まずは風車ふうしゃだ。


 風車は風によって回転力を得る装置で、古くから、小麦を製粉するのに使われていた。だが、この風車は、人力はいらないが天候に左右されやすく、安定的な動力を生み出すことはできない。


 そこで次に目を付けたのが水車すいしゃというわけだ。

 しかし、街中にある程度の大きさではやはり、増えつつある電力消費を賄いきれない。


 ならば、巨大なものを作ればどうか?


 こうして、このプロジェクトが立ち上がったというわけだ。


 原理はいたって簡単だ。川を流れる水で水車を回し、回転力を得る。それによってコイルを回し発電するというものだ。


 ただ、これまでの自発式発電機よりも回転速度は上がるし、大きさも持ち運びする必要が無いことからかなり大きいものが作れる。


 大きな発電機ならたくさんの電気が生み出せる、というわけだ。


 更にエリザベスは、ただ流れる川に水車を入れるのではなく、そこは工夫を凝らす。


 川の水を一時的に留め置き、そこから狭い導管を通して流す。そうすることで、水が流れる速度と圧力が大幅に増す。力が増せば、回転数は飛躍的に増え、結果、生み出される電気量も増えるだろうという仮説に基づいた設計だ。


 いわゆる「ダム」である。


 この原案はヘア式自発発電機を製作したチームの職人たちだ。

 鍛冶職人のカーン・レコン、糸巻いとまき機械製作職人のオリビエ・ホウスト、鉱物商のリンド・ゲベック、大工のウェンダル・ノイ、ガラス職人のエイラ・グラジ。以上の5名は電球の発明の折からのチームでもある。

 彼ら職人の知識と経験には、エリザベスも大いに助けられている。



「さあ、始めるわよ! ハルちゃん、用意はいい?」

「うん、いつでもいいよ~」


「じゃあ、カウントダウン行くわよ! 3、2、1、スタートぉ!」

「それぇ!」


 言うなりハルが堰き止めていた水を流す。ハルは魔法を使って一時的に導管に流れ込む水を堰き止めていたのだ。

 そして今、その魔法を解除し、水を流したわけだ。


「いっけぇ!」

と、ハルが歓声を上げる。


 どどどど、という水の流れる音が地響きとなって聞こえてくるが、ハルを含め、エリザベスや皆が視線を集中させているのは、小さな電灯だ。


 音が聞こえてきた数瞬後――。


 電灯が一瞬パァッと光を発した。


「あっ! 点いたぁ!」

と、ハルが言った直後――。


 パァン!! 


 という破裂音と共に、その電灯が木っ端微塵に吹き飛んでしまった――。


「――ダメだわ……」

そう落胆するエリザベス。

「ああ、そうだな。これじゃあ使えねぇ――」

と、言ったのは、鍛冶職人のカーンさんだ。


「え? え? 今のなに? どうして壊れちゃったの? ねぇ?」

と、事態が呑み込めないハルがエリザベスに問う。


「電力が強すぎるのよ――」

「強すぎる? どういうこと? 強いのはいいことなんじゃ――?」


「そうね――。もちろん、強いに越したことは無い。それだけ多くの電気が作られている証明だからね。でも、街中で今のことが起きたら――?」

「あ――」


「そういうことだ――。町中の電灯が吹っ飛んじまったら、怪我人も出るし、灯りは全て消えちまう。だから、これじゃあ使えねぇんだよ……」

と、カーンさんが後を受けた。


「電圧を調整する必要があるわね――」

「だな――。でも、どうやって――」

「わからない――。でも、なんとかしないと、ダムは何の役にも立たないということになるわ。それだけは出来ない――」


 エリザベスは歯噛みした。

 こういう時、リディかキール君がいてくれたら、何かヒントをくれるのではないかと、思わずふと考えてしまったからだ。


「――ああ、そうだ、博士さんよ。話は変わるんだが、ちょっとした『発見』が在ったんだ。どういう理屈かはわからねぇけどな?」

と、カーンさん。


「発見?」

と、エリザベスが問い返す。


「ああ、本当にたまたま偶然のことなんだが、今ここに設置してある大型コイルを、こっちへ運び込むときの話なんだが、な? 並べておいていたコイルが帯電してやがったのさ――」

「どういうこと?」


「それは俺にはわからねぇが――。お前さんなら何かわかるんじゃないかと思って、な?」

「――ちょっと待って。そのコイルって、同じ工場こうばが作ったもの?」


「そう言えば、どうだったかな? まあ調べればすぐわかると思うが?」

「カーンさん! すぐに調べて――!」


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