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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第556話 そしてとうとうボス部屋へ


 その後もミリアとべリングエルの二人は、行く手を(ふさ)ぐ魔物を倒しつつ迷宮(ダンジョン)の奥へ奥へと進んできた。


 2層は【リトルフッド】の群れに何度か遭遇したが、問題なく撃破。

 3層は【オーガ】(しゅ)が混じっていたが、べリングエルとミリアの連携の前にはさしたる脅威では無かった。


 そして4層――。


 ここも、3層と同様の魔物構成で、【オーガ】種が単独ないしは2匹程度で出現しただけで、それ以上に脅威となる魔物は現れていない。


 そうしてついに、大きな門の手前までやって来てしまった。

 どうやら、ここが「行き止まり」、最後の部屋「ボス部屋」なのだろう。


 階層に出現する魔物たちは、どういうわけかはわからないが、数分間隔で再出現するのが迷宮(ダンジョン)の仕様だ。基本的には、これを止める術はないとも言われている。

 これまでに、冒険者ギルドや魔術院が調査してきているが、今もって、どういう仕組みなのかは解明されていないままだ。


 ダーケートの「ブルー・ウォール」にあった『出現地点(ポータル)』のようなものは、迷宮(ダンジョン)には存在しない。


 その為、一説には、迷宮(ダンジョン)自体が巨大な『出現地点(ポータル)』なのではないかとも言われているが、これもあくまでも仮説にすぎない。


 いずれにせよ、帰りに同じ道程を戻ることになるとすれば、それなりに余力を残しておく必要があるか、あるいは、ボス部屋で充分休息を取ってから引き返すかの二択になるというわけだ。

 「ボス部屋」だけは特別な空間で、その主(ボス)を倒した後、部屋を出るまではどれだけ時間が過ぎようと再出現しないことが確認されている。


「おかしいわね――?」

と、ミリアが言った。

「そうだな――。残るはここしかないわけだが、その行方不明の剣士も相当の使い手なのだろう? ここまでの敵が相手に後れを取るということは考えにくくないか?」

と、べリングエルもミリアの疑問を察して応じる。


「――そうなのよ。つまり、この部屋にいるか、この部屋の先にいるってことになるわけだけど……」


 ミリアがそう言った時だった。


 目の前の扉が、ぎぃと音を立てる。


 え――? 勝手に扉が!?


と、ミリアがぎょっとすると同時に、べリングエルも身構える。


「ミリア! 扉が開いてゆくぞ? お前が触れたのか?」

「いいえ、私じゃないわ! 勝手に開いてるのよ――」


「仕方がない――、準備がまだだが、いまさら間に合わん。まあ、やりながらなんとかするしかないだろう――」

と、べリングエルが返したその時だった。


 二人は、背中から迫る殺気を感じて慌てて振り返る。


「え? なに!? うしろ!?」

「ミリア! 部屋の中に駆け込むんだ!」


 二人は背後から迫りくる脅威に対応するため、部屋の中に駆け込もうと前を向く。


 が、次の瞬間、驚くべきことが起きる。


 

「――ダメだ!! 入って来るんじゃない! 部屋には入るな!!」


 部屋の中から男が叫ぶ声が二人の耳に届いたのだ。


「え? ア、アレスター卿!?」

ミリアが聞き覚えのある声に反応すると、叫び返す。


 そのミリアの声と同時に、ミリアとべリングエルの間を割って一人の剣士がボス部屋の前通路まで躍り出てくる。


 腰に差した長剣が彼のトレードマークであることはミリアもすでに知っている。


「やっと、出られた! ありがとう助かったよ――。って、ミリア君? やあ、久しぶりだね、相変わらず――」

というアレスター卿の声を無視して、

「アレスター卿!! うしろ!!」

と、ミリアが慌てて叫ぶ。


 ギィイン――!


と、その瞬間、耳をつんざく金属音が響いた。アレスターがこちらを見ながら、剣を一閃し、背後から襲い来る敵の攻撃を弾いたのだ。 


「――美しいね、君は。あ、お隣にいるのは、もしかして――」


 またもや、ギィイン――! とつんざく音。これもまた、はじき返した音だ。


「――そちらの君が、キール君かな? それにしても聞いていたのと年が違うな?」


と、相変わらずこちらを向いたまま会話を続けるアレスター。


 先ほどから、何回かはじき返している敵の攻撃とは、巨大な蜘蛛のような形をしたモンスターの爪攻撃だ。


 その蜘蛛の大きさは、体長約5メートルほどあり、明らかにこれまでの迷宮モンスターと格が違う。一目見て、そいつがこの迷宮のボスであると分かる。

 その重厚な爪攻撃を、片手長剣一本ではじき返しているのだ。しかも、後ろ向きで――。


「いや、私はキール・ヴァイスではない。が、取り敢えず話は後にしないか? そいつがそろそろ本気モードのようだぞ?」

と、アレスターからの問いかけに答えるべリングエル。だが、べリングエル自身も腕を組んで立ったまま、構えを取ろうともしない。


「――まあ、そうなんだけど、さすがにコイツ、固くってさ。少し骨が折れるんだよね。君、手伝ってくれない?」

と、アレスターがニヤリと微笑む。


 ジャンカルロ・アレスターの容姿は、なかなかの美男子だ。すらりと伸びる手足、身長も結構ある。おそらく、容姿だけを比べれば、べリングエルとかなりいい勝負だ。

 髪は黒髪ショート。自然に流れた緩やかなウェーブが気品をさらに増している。

 目は程よく大きい青い目。この目の大きさが全体のイメージを幼く見せているともいえる。


「嫌だと言ったら?」

と、意地悪く返すべリングエル。

「――その時は、一人でやるしかないなぁ。できないわけじゃないけど、ちょっと大変かなぁって……」

と、アレスターが返す。


 その時だ。


「――いいや、ジャン!! おまえも手を出すなァ! こいつは俺がやる――!」


 男の声がいきなり響いてくる。響いてきた先は、その蜘蛛の向こう側、迷宮通路の入り口方面からだ。


 そして次の瞬間、ミリアたち3人の頭上から何かが降って来た。


 どかぁ!


と、音を立てて地面に突き刺さったそれは、本体と切り離されながらも、まだ、うねうねと動いている。


「――足の先? って、このボスの足なの!?」


 ミリアはそれを見て驚愕の声を上げた。


 

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