表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

549/781

第549話 ミリア北へ飛ぶ


「ミリア・ハインツフェルト、入ります!」


 謁見の間に麗らかな乙女の声が響く。

 一同が入口の方へと視線を向けると、そこには一人の女魔術士が立っていた。



「入れ」


と、英雄王が告げると、ミリアは一同の元へと歩を進める。


「只今帰還いたしました。――ところで、皆様お集まりで、何かございましたか?」


と、ミリアの方から思わず問いかけてしまう。


「これだ――」

そう言って英雄王は書簡をミリアに差し出す。


 ミリアは一礼し、その書簡を受け取ると、さっと目を通した。そして、


「――迷宮、魔物案件ですか……。それにしても、あのアレスターさまがお帰りにならないとは、余程のことではありませんか――」

と、第一声を発する。



 『剣星』ジャンカルロ・アレスター。

 年齢は28というから、ミリアよりは4つ上になる。


 2年ほど前、ヒストバーン王国を訪問した際、一度お目に掛かっている。ヒストバーン王国の食客、故『剣聖』カークランド・シュナイゼルの後を受けて、若干、24の時に、ヒストバーンの食客となったと聞いている。

 得物は、片手長剣。カークランドの最初で最後の愛弟子であり、その剣の型は、師匠から一子相伝にて受け継いだものである。

 現在の称号は『剣星』である。剣の技術はすでに師を越えたとの評判もあるが、冒険者ランクがまだ金級ゴールドということを理由として、師の称号『剣聖』を受け継ぐのをかたくなに固辞こじしているらしい。


 つまり、剣士、冒険者としては一騎当千の力量を持ち、傭兵として戦場に立てば、一個小隊以上の活躍を見せるとも言われる剣豪だ。


 そんなアレスター卿が、迷宮調査から戻ってこないとなると、内部で何かが起きたとみて間違いない。

 

 もちろん、魔物にやられてしまったと考えるのは短絡的すぎる。


 いくら何でも、金級冒険者ゴールドクラスを戦死に追い込むほどの魔物など、最近の迷宮で確認された報告はない。


(ジョドやべリングエル、リーンアイムさんのようなドラゴン族なら、わからないけど……。場所は迷宮内というから、ドラゴン族と遭遇したとは考えにくいわ――)


 と、ミリアは推理する。


 とすれば、迷宮内部でなにかしらの「事故」にい、動けなくなっていると考えるのが妥当に思える。


「――手紙を発したのが今朝のこととして、すでに4日目が終わろうとしていますね。食料を採れていれば大丈夫だと思いますが、そうでないとなると、さすがにそろそろ限界が近いでしょう」


と、ミリアが意見を述べた。


「そうだな。事態は急を要する。ミリア、行けるか?」

と、英雄王がミリアに意思を問う眼差しを向けてくる。


「――わかりました。すぐに、ヒストバーンへ飛びます。ヒストバーン国王に謁見し、今後の対応を相談いたします」


 ミリアは即答する。

 ここにいる皆が自分に視線を向けている。


 その視線にはさまざまな想いが込められているように思えるが、父ウェルダートの視線だけはどのような想いかはきっりと読み取れた。


――心配と信頼。


 二つの感情がないまぜになっている、複雑な眼だ。

 

「ミリアくん、君なら問題ないと、私は信じている。状況に応じ、最善の判断を下せるだろう。君にはすでにその力が備わっていると私は確信しているよ」


 院長がミリアに声を掛ける。この言葉は、確実な信頼と期待の証だ。


 ミリアは、目に力を込めると、


「ありがとうございます、院長。大丈夫です。私も随分と()()なりましたから――」


と、それに応じた。



――――――



 ミリアは即座に城外へ出ると、城門を抜け、ブレスレット(ジョド)に声を掛ける。


「ごめんね、ジョド、飛べる?」


 すぅっと姿を現したジョドは、すでに竜の形態をとっている。


『――まあ、仕方ない。暗くなるまでなら飛べるじゃろう。それで?』

「ありがとう、北の隣国ヒストバーン王都までお願い。大丈夫、ジョドの翼なら、すぐよ――」


 そう言いながらミリアはジョドの背にまたがった。


『日が暮れるまでには到着したいのぅ――。少し急ぐぞ、ミリア。振り落とされんように気を付けるんじゃな?』

「大丈夫よ、もう。あなたの背から落ちるなんて、そんなこと今までにあったかしら?」


『ほう、言いおったな小娘めが。わしの()()()()じゃとそういうつもりかの?』

「あ、あれは、あの時は――、もう、意地悪言わないで、ほら早く行って――」


『ほほほ、では、行くかの――』


 そう言うとジョドは翼をふり、ふわりと上空へと飛び立った。


(アレスター卿――、何があったのです? 今行きますから、もう少し待っていてください――)


 ミリアは胸に手をあててそう念じると、いつもより速い速度で飛ぶジョドの背から落ちないように鱗の間に手を掛けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ