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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第544話 演劇が眠いのはいつものことで


 公邸にいたアーノルド王子が兄の来訪に驚いて姿を現すと、これまでの数日間の出来事を全て打ち明けてくれた。


「――ということがありまして、ステファニー王女と婚約するという方向で話が進んでいるのです」

と、説明し終えるアーノルド。


「今晩も観劇に誘われておりまして、夕刻から陛下と王女とともに行くことになっています」


 キールは「なるほど」、としたり顔をした。

 話に出て来た、フローレンという女魔術師、それが母レオローラが扮していたものだろうと容易に察しがついたのだ。

 しかし、おそらくこの内幕を知っているものは、王女のみか、国王と王女のみで、目の前のアーノルド王子は知らないと見える。


(それで、アーノルド王子のことは知らないということにしておいて、と言っていたのか)


 ほかの面々がどう察したのかは後で確認してみないとわからないが、そこはワイアットがうまく話を進める。


「――そうか! よかったじゃないか! もともとは国境を争い合っていた国家同士だ。関係修復はなかなかにハードルが高いと見ていたが、アーノルド、お手柄だぞ?」

「よろしいのですか、兄上? ステファニーと結婚しても――」


「何を言っている、アーノルド。これほどめでたいことは無い。父上もさぞお喜びになるだろう」

「そうでしょうか。そうだといいのですが」


「大丈夫だ。俺の方からもしっかり話して聞かせるさ。これは天が示した運命の出会いなのかもしれんぞ?」

「そんな大げさな。たしかに、ステファニーを初めて見た時から気にはなっていましたが、年齢にも差があるからと、そう思っていたんです。まさか、ステファニーもそう思ってたなんて、思いもしませんでしたよ」


 そんな会話が二人の間で続いた。

 

 まあ、もう戦乱の世は遥か昔の話、今は自由経済主義の世の中だ。いつまでも国境争いでギスギスするよりは、国家間の親交を深め、互いに手を取り合って発展する方が望ましいことは言うまでもない。


 おそらくのところ、この国の国王様もそう考えてのことかもしれないと、キールは推察する。


「キール様、お久しゅうございます。その節はお世話になりました。ところで兄上、そちらの方々は?」

と、アーノルドがアステリッドとリーンアイムに視線を移しながら問いかける。


「ああ、キールの仲間たちだ。アステリッド・コルティーレ嬢とリーンアイム殿だ。キールたちは、西の大海へ向けて出港するということらしい。すでに船はローベに停泊中なのは知っているだろう?」

と、ワイアット。


「お久しぶりです、アーノルド王子。今日は、こちらに母を訪ねて参りました。実は、非公開情報なのですが、この地で演劇の公演を行っているレオローラ・ジョリアンは私の母なのです」

と、キールもここで挨拶をする。


 その言葉に目を丸くしたアーノルドを尻目に、ワイアットが後を受けて説明すると、キールとレオローラの事情をようやく理解したアーノルド王子が、それならば是非ご挨拶をと切り出した。


 あの母のことだ。面と向かって出会ったとしても、それだけで見破られるような《《へま》》はすまい。

 ここは、是非ご紹介を、と受けておく。が、おそらくのところ、観劇の後、国王自ら未来の婿むこを紹介するつもりだろうと察している。


 その後、昼食がまだだった面々に簡単な酒肴が催され、夕方になるまでゆっくりと歓談を交わしたのち、アーノルド王子は王城へと向かって先に出かけた。



「じゃあ、俺たちも行くか――」

というワイアットの合図で一同も公演会場に向かうことに。


 観劇も久しぶりだが、キールはあまり母親の演劇が好きにはなれない。どうしたって、舞台の上の「大女優」と自分の「母」が別人であるように思えてならないのはいつものことだ。


 キールたちが会場に足を運ぶと、勝手知ったる劇団の人がキールを見かけて、一同を席に案内するのもいつものことだ。父親であるヒュリアスティも、いつものようにどこかで見ているのだろうが、公演が始まるまでには出会えなかった。


 今回の演目は、夕方からの公演でもある為、さほど長い演目ではなかったが、キールはいつものように途中で()()()()を決め込む。


「キールさん! 終わっちゃいますよ!?」

という隣に座っていたアステリッドの声でようやく目を覚ますと、演劇はクライマックスを迎えるところだったが、 ここまで寝ていたキールには、話の内容が全く掴めない。


「ああ、そうだね」

と、素っ気なく返すキールに、

「もう! 折角せっかくレオローラさんが席を用意してくれたのに――」

と、愚痴で返すアステリッドだったが、いつまでもキールにかかずらわっていては大事な場面を見逃しかねない。

 アステリッドも結局は諦めて演劇に集中することになった。


 そうしてとうとう演劇が終幕を迎えると、キールはようやく眠い目をこすりながら、席を立つことにする。


 キールたちが座っていた座席は劇場の2階観覧席だったが、同じ2階観覧席の特別席にはアーノルド王子の姿も見える。おそらく、隣に腰かけているのが国王様で、その国王の隣に座っているのがくだんの王女ステファニー様だろう。


 3人もそろそろと席を立ち、移動する様子だ。おそらくこの後、楽屋にでも行って、母と挨拶を交わすつもりだろう。


 こちらの席にも劇団員の人がやってきて、どうぞこちらへと、一同を誘う。

 昼間話していた通り、国王陛下と出会わせて紹介するつもりだと察したキールは、一同とともにその劇団員の案内に従い席をあとにした。



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