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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第517話 ついに遭遇

 国家魔術院をあとにしたキールは、その足でクリストファーの部屋へ向かった。

 会談が終わったら一応報せると、そう約束していたからだ。


 国家魔術院とヘラルドカッツ大学、そして王城はそれぞれ渡り廊下で繋がっている。もちろん、王城への入り口には衛兵が配置されており、許可なく立ち入ることはできない。


 キールは構内を進み、大学棟へ入ると、先日の記憶を頼りにクリストファーの部屋を探し当て、扉をノックした。


「はぁ~い。どうぞ、開いてますよ~」


という、間の抜けた男の声が響く。クリストファーの声ではない。


「しつれいしまーす」


と、声を掛けながら扉を開いたキールは、部屋の中の男を見て凍り付いた。


 天井近くまで脚立きゃたつを登り、しかもその両手にいっぱい書物を抱えている。ふらふらとしながら、視線は目の前にある書架から離そうとしない。


「だ、大丈夫なんですか!?」

と、思わず声を掛けるキール。


「ん? ああ、だいじょぶだいじょぶ……」

と、言いながら、さらに一段上がろうと足をあげる男。


 ぐらりと体が揺れ、一瞬バランスを崩しそうになるのを見たキールが思わず、「あっ」と短い声を発するが、その男は、「ほい」と声を掛けてすぐまたバランスを戻す。


 何という体幹の強さか。


 なるほど、「だいじょぶ」といった彼の言葉は、どうやら適当な相槌ではなかったようだ。


 その後、本を全て書架に戻した男がようやく脚立の上からこちらを振り返って、キールを見た。


――あ。

――お?


 二人はしばし、互いの顔を見つめ合う。


「キール? キールじゃないかぁ! 久しぶりだなぁ! 元気だったか!?」

「デジム!? デジムート・バウマイスタ! メイリンさんから聞いてはいたけど、まさか会えるとは思ってなかったよ」


 デジムは、すたたと脚立を降りてくると、この年下の元同宿人をぎゅっと抱きしめた。


 ああ、そうだった。この男、結構あつくるしい奴だったが、さらに磨きがかかってるんじゃないか?


「――メイリンさんに聞いたって?」

と、デジム。

「ああ、今、彼女のところで間借りしてるんだ」

と、キール。


「――そうかぁ。あれ? それで、どうしてお前がここにいるんだよ?」

と、肝心なことに気が付くデジム。


 実は――と、キールは、この部屋の主、クリストファーと自分の関係を明かした。とはいえ、「同郷の友人」とぐらいしか伝えようがないのだが。


「――へぇ、世間てのは狭いもんだな。まさか教授せんせいとお前が知り合いだったなんてな?」

「デジムこそ、てっきり冒険者にでもなるつもりかと思ってたけど、どうしてクリストファーの教授室にいるのさ?」


「そりゃあ、お前、簡単なことだよ。こっちの方が面白そうだったからさ――」


 そもそも旅好きだったデジムは、大学在学中には方々《ほうぼう》に出歩いては数週間以上戻らないという放浪生活を行っていた。メイリンさんから聞くところによると、冒険者登録こそしていないが、様々な体術や武術を身につけているらしい。

 しかも、それらは旅先で修行をつけてもらったとか、嘘か本当かわからないような話だった。


「――でな? ある時、あのジュール遺跡の傍を通りがかったわけよ。知ってるか、ジュール遺跡?」


 もちろんキールも知っている。クリストファーが攫われるきっかけともなった遺跡であり、現在は「電波塔」となっているあの遺跡のことだ。


「――その遺跡の傍を通りがかったら、なんかやけに物々しい様子だったから、覗いてみたわけよ? そしたら――」

「そしたら?」

「とっ捕まった。――いやあ、さすがに本職の衛兵ガードナーは違うね。結構抵抗したんだけど、結局は捕まっちまった」

「何抵抗してんだよ? 殺されなかっただけましと思わないと――」

「まったくだ。その時教授(せんせい)が声を掛けてくれたのさ。『興味があるのかい?』ってな」 


 あとは、聞けばクリストファーらしい話だった。

 興味があるのなら見ていくといい、ただ、邪魔にならないようにだけは気をつけてくださいね、と、デジムを放免したという。

 

 デジムは、しばらく作業をしているものたちの隙を見てはジュール遺跡を覗き見ていたが、見ても何をやってるのかすらわからない。

 だが、とにかく見たこともない造りにただただ興味だけが沸き起こってくる。


 気が付いたら、作業をしているものたちに混じって手伝いをしていたのだということだった。


「そこからは、教授の研究チームに無理やり入り込んで、今に至るってわけだ――」


 そうデジムは言ったが、何の伝手も無いものを、研究チームに入れるのにクリストファーがどれほど尽力したかが窺い知れる。まあ、彼のことだから、それほど大した労力でもないと思っているのだろうけど。

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