表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

513/781

第513話 錬成「2」と「3」の差

「いつの間に――!?」


 アステリッドは、周囲を取り巻く小人のような魔物たちを忌々しげに見つめながら、対応策を考える。


 アステリッド以外の3人はサイクロプスに意識を集中していて、こちらの状況にまだ気づいていないようだった。


 サイクロプスと3人の攻防は、3人がやや圧していて、すぐとはいかないまでも、そのうち倒すことができるように見える。が、一人でも手を緩めれば、一気に圧し込まれてそれこそ大ダメージを喰らうものが出るかもしれない。


(やっぱり、自分でどうにかするしかない――)


 アステリッドは覚悟を決めた。そしてその瞬間、【リトルフッド】たちもまた、意を決したようで、十数匹いる者のうち2匹がアステリッドへ向かって飛びかかってくる。


 【リトルフッド】が手にしている武器は、ナイフのような小型のものだが、もちろん一撃でもまともに喰らえば、瀕死の重傷になりかねないものだ。


火炎弾ファイアボール――! 火炎弾ファイアボール――!」 


 アステリッドは素早く術式錬成し、2発の火の玉を()()飛ばす。

 1発目の火炎弾を発射後、即座に2発目を錬成し発射したのだ。


 相変わらずの速度と精度で、2発ともが向かってくる【リトルフッド】に見事に命中する。空中でその火の玉に迎撃された2匹は、そのまま、炎に包まれ、床に落ちる前には消し炭と化していた。


(2匹――はなんとかなるけど……)


 3匹同時に来られたら、1匹は間に合わないかもしれない――。アステリッドの周囲を取り巻く【リトルフッド】たちがじわりじわりとその囲みを狭めてくる。


(これが錬成「2」の限界――。ミリアさんのように「3」あれば、撃ちながら守れるところを――)


 アステリッドの錬成は「2」。つまり、2個の魔素子を同時に使用することができるということだ。


 『火炎弾ファイアボール』は、単独魔術式ではない。『火炎』という火の魔素をつかう魔術式と『突風』という風の魔素をつかう魔術式の錬成魔術式なのだ。


 つまり、アステリッドは『火炎弾ファイアボール』を()()()2つ以上生成できない。


 ただ、錬成速度と精度だけは、ミリアさんよりも高いと言われている。つまり、術式発動までの時間がとても短いのだ。



 しかし、【リトルフッド】にもわずかながらに知能はあった。今度は、3匹が一気に飛びかかってきた。


火炎弾ファイアボール――! 火炎弾ファイアボール――! 火炎弾ファイアボール――!」


 これまでにキールさんや、『翡翠ひすい』さまたちと何度も何度も訓練してきたのだ。キールさんが生成する「4つ」の「土塊《的》」をできる限り素早く打ち抜く。そう言う練習もよくやった。


(まだ、まだよ。もっと、もっと速く――!!)


 3匹を撃ち落としたアステリッドはなおも攻撃態勢を解こうとしない【リトルフッド】に集中する。残りはまだ10匹以上いる――。


 きしゃあああ――!!


 その中の一匹が急に吠えた。


 その瞬間、リトルフッドたちが一旦数歩下がる。


 これまで縮めていた包囲を拡げたのだ。


(え? なに――?)


 アステリッドが一瞬逡巡した(ためらった)。その行動の意味がわからなかったからだ。


 しかし、その分、少しだけ対応が遅れることになる。


 今度は4匹が一気に飛びかかってきたのだ――。


「くう! 火炎弾ファイアボール――! 火炎弾ファイアボール――! 火炎弾ファイアボール――! 火炎――! わぁ!!」


 最後の4発目を発射する前に、【リトルフッド】のナイフがアステリッドの頬をかすめる。


 アステリッドはかろうじて体を倒し、地面を転がって回避に成功したあと、


「この! 火炎弾ファイアボール――!」


 と、ようやく4発目を発射し命中させた。



 きしゃきしゃきしゃ――!


 またもや、耳障りの悪い雄たけびが聞こえると、今度は【リトルフッド】たちがアステリッドの周囲をぐるぐると回転しだす。


(くそ、このままじゃ――。もっと、もっと速くよ、リディ――!)


 アステリッドは自分に発破をかける。出来なければ直撃を喰らってしまうのだ。いくらか減ったとはいえ【リトルフッド】たちはまだ、10匹近くいる。


 一撃でも直撃を喰らえば、一気に畳みかけられるのは明白だ。


(や()なきゃ、やられる――)


 そう心を決め、とうとうアステリッドは「もう一本の短杖」に手を伸ばした。


 これまでは、触媒無しで錬成していたのだが、やはり「杖」があるとないとではいくらかの差があるのはわかっていた。だけど、この「杖」は出来る限り使うなと、『漆黒』ネーラさまからいましめを掛けられている。


(でも――、もう、これしか無い――。これで決着をつければ、なんとかなるはず――)


 アステリッドの心は決まった。


 たとえ、この『深淵の血潮ブルト・デス・アプグルンズ』が私にはまだ早いとしても、や()なきゃ死ぬんだから、一緒だわ――。


 アステリッドは()()に差していた杖身に手を掛けると、ついにその杖を抜き構えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ