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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第488話 新パーティの行動方針

「なるほどなぁ。そりゃあ、大学からの公式依頼ってわけじゃないのか?」


 キールの話を聞いたレックスが放った第一声だった。



 レックス・アダムーロ。

 ランカスターの相棒で、盾持ち戦士。年齢はランカスターと同じ26歳。つまり、キールの二つ上だ。クラスはランカスターと同じ鉄級アイアン。ランカスターとは、冒険者を始めた頃に出会い、『見習い(アプレンティス)』の頃から今までずっと一緒に実績を積んできたという。

 身長はランカスターより少し低いが、『盾持ち(シールダー)』らしく、体格は大きくがっしりしている。


 キールが話した内容、それは、このパーティの主目的である、『試練』についてだ。

 

 とは言え、今の段階で、『神候補』や『試練』などというワードを持ち出して説明しても、頭がおかしいと思われ、相手にしてもらえないだろうから、そこは、メストリル王立大学のデリウス教授とエリザベス教授の名を借りて、都合よくこじつける。


 つまり、今後の大海への進出を見据えて、世界各地を船で巡り、大世界に存在する脅威を調査、および排除する役目を担っているとかなんとか――。


 デリウス教授とエリザベス教授の二人には、のちのち話を通しておくことにしようと、考えている。



「いや、大学からの依頼というわけじゃない。これは、僕の魔術師としての見聞を広めるための探索だ。だから、依頼料も報酬も出ない――」


と、キールは正直に答える。


「じゃあよ、キール。仮にその探索をこなしたとして、俺たちは何が得られるってんだ?」

と、ふたたびレックス。


「経験――」

と、キールは短く答えた。


「経験? おいおい、それじゃあ飯は食えねぇぜ? まさか数か月以上も飲まず食わず、遊びもせずというわけにはいかないだろう?」

「ああ、だから、各地で依頼もこなしつつ、僕の船での交易もしつつという感じだ」


「ふうむ――」

と、レックスが腕を組む。


「大丈夫だ、レックス。心配ない。祖父じいさんがわざわざ俺たちに白羽の矢を立てたんだ。なにか狙いがあってのことに違いないさ。これまでもそうだったろう?」


 と、言葉を挟んだのはランカスターだった。

 

 ランカスターのこの言い様だと、これまでにもあのブリックス支部長から、ギルド依頼以外で何度か「直接指示」を受け行動してきたのだろう。


 結果として、現在のところ、「階級クラス」よりも「実力」が随分と上回っている、ということなのだと、支部長の言葉を思い起こす。


 つまり、その「直接指示」をこなすことで、彼らはこれまでにも大きく成長してきた「経験」があるってことだ。


「――ああ、もちろん、俺は行かないと言ってるわけじゃない。支部長じいさんの指示に従うことでこれまでも俺たちはここまでやってこれたんだ。でも、さすがにどうやって食っていくかは大事だろう? それを確認したまでさ」


と、レックスがようやく表情を崩し、次いで、


「キール、まあ、なんとかなるさ。行った先で、個人的に仕事を受けたりしてもかまわないだろう? もちろん、優先事項はお前の『探索』だ。それでどうだ?」


と、条件を提示してきた。


「ああ、それで構わない。僕の方も、もしかしたら旅先でしばらく逗留するということも出てくるだろうから、再集合をかけたときに戻ってくれればそれでいい。もちろん、犯罪まがいのことはこの限りじゃない。自由に旅が続けられなくなるのは困るからね」


と、キールも応じた。


「もちろんだ。基本的には単発のギルド依頼をこなして小遣いを稼ぐ程度だ」

「ああ、その場合は俺ら二人で行動する。それでいいか?」


と、レックスとランカスターが答えたことでこの話は落着する。


「場合によっては、私が監視役として二人について行きます」


とは、アステリッドだ。


 監視役? メンバーとしてじゃなくか? と、レックスが視線を向けるのに、真っ直ぐ見つめ返して、再度、監視役です、と言い返すアステリッド。


 まあ、彼女は僕の『右腕』と自称しているのだから、このパーティでは、サブリーダーということになる、か――。


「おお! 本当ですか!? それは心強い! なあ、レックス、アステリッドさんは魔術師だから、パーティの戦力も格段に上がるぜ?」


 と、ランカスターは飛び上がらんほどに喜んでいる。


「その、アステリッド()()と言うの、なんか、気持ち悪いです。アステリッド、もしくはリディと呼んでください」

と、ぴしゃりと返す。


「気持ち悪いって――。そうですか? じゃあ、()()()、よろしくお願いします!」


 と、ランカスターが言うのを聞いたアステリッドは、表情を曇らせ、


「――やっぱり、アステリッドにしてください。リディと呼ばれるのも、なんだか気持ち悪いです。それから、その、私にだけ敬語も気持ち悪いですので、やめてください」


 と、ランカスターに「気持ち悪い」を連打するアステリッド。


 それを聞くたびに明らかに精神的ダメージを受けているランカスターの様子を見ていて、キールは少々気の毒に思ったが、さっき表で出会った時の「仕返し」を受けていると思えば、自業自得と言えるだろう。

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