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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第487話 おしかけ女房

「い、いえ、違います――。私は……、キールさんの――」

と、なんとか言葉をつなごうとするアステリッドだが、そこで言いよどんでしまった。


「ああ、すいません。あまりに美しいお嬢さんだったので、思わず立ち入ったことをお聞きしてしまいました。違うのならいいのです。さすがに仲間の恋人に手を出すわけにはいかないでしょう?」

と、ランカスターさんは止まらない。


「アステリッドは、僕の仲間だよ。とても信頼している大切な人だ。ランカスター、揶揄からかっているのなら、そこまでにしてくれ」

とはキールさんだ。


 キールさん、珍しく怒っている?


「あ、ああ、すまない。気を悪くしないでくれ。そのう、なんだ、()()だよ、キール、――もういいだろう?」


 と、ランカスターさんはキールさんに良いとがめられて、歯切れが悪くなってしまった。


()()って何だよ? アステリッドに謝ってくれ」

「あ、ああ、申し訳ない。アステリッドさん、私はキールと新しくパーティを組むことになった剣士です。これからもよろしくお願いします」


 何がよろしくだ、わけのわからないこと言ってないで、さっさと行こう、アステリッド、僕は今日は行けそうにないから、みんなにそう伝えておいてくれないか、と、キールさんは矢継やつばやに言葉をつなぐと、ランカスターさんをぐいと引っ張って、去ろうとする。


 「パーティ」って今、ランカスターさん(この人)、言ったよね?


 ああ、この間言ってた、冒険者ギルドの冒険者なのか――。どうりで、なんか、粗野な感じがして、デリカシーがないのかな――。


 「パーティ」が見つかったのなら、もう私はいらないってこと? 私は、キールさんの「右腕」になると決めていたのに、()()もなくなってしまうの?


 そんな――、それは、嫌だ――。


 などと、高速で考えを巡らしたアステリッドは、意を決することにする。


 『くか、退くか』――。


 私は――、『く』。



「キールさん!! わ、私もついて行っていいですか!!」


 アステリッドは去りかけるキールの背に向かってなんとか声を振り絞って叫んだ。



 ――――――



「――それで、()()()? そちらのお嬢さんはどうしたんだよ?」


 商店街の一角にある酒場でテーブルを囲む4人のうちの一人、レックス・アダムーロがランカスターに問いただす。


「私は――! キールさんの『右腕』、アステリッド・コルティーレです! パーティを組むと聞いて私も加えていただこうとここに来ました!」

と、アステリッドが食ってかかる。


「――ってこと、らしい」

とは、ランカスターだ。ランカスターは手のひらを天井に向けて肩をすくめる。


「おいおい、キールさん一人って話じゃなかったのかよ? まったく。で? え~と、アステリッドさんとやら、君は何ができるんだい?」

「私は、魔術師です! クラスは錬成「2」上位、基本錬成術式は一通りマスターしています!」


「ほう、上位クラスか――。ってことは、回復術式も使えるってことだよな?」

「はい。体力回復ヒーリング毒治療ディスポイズン麻痺解除リパラライズなど一通り可能です!」


「なんてこった――。あれだけ探し回って声掛けまわってもなかなか相手にしてもらえなかった魔術師が一気に二人。しかも、上位と高度クラスとは。これはまた、とんでもない拾い物だな、ランカ」

「拾われたわけではありません! 私は自分の意志でここに来てるんです!」


 アステリッドがレックスの言葉にみつく。

 なんだろう? アステリッドがものすごく気負きおっている気がするのだが――。


 ここまで、黙って聞いているキールだが、正直、この状況をどうしたものかと思い悩んでいる。

 アステリッドの様子を見るに、どうやら自分もこのパーティに無理やりにでも付いてくる気でいるようだが、一応、アステリッドは魔術院所属の魔術師だ。

 さすがに、ネインリヒさんや『氷結《院長》』の許可がなければ、メストリルを勝手に離れるわけにはいかないだろう。


「なあ、アステリッド。本当についてくるつもりなのかい?」

と、キールはようやく言葉を発する。


「はい。私、決めたんです、「行く」と――」


 いや、それはさっきから聞こえているんだけど、魔術院の方はどうするのさ?


「――大丈夫です! 『翡翠ジルメーヌ』さまに掛け合って、お仕事ということにしてもらいますので」


 キールが聞くより前に答えられてしまった。どうやら本気のようだ。


「えっと、そのう、一応このパーティのリーダーはキールだ。俺らが決めることじゃない。ただ、そのう、なんだ、単純に数の原理というのもあるにはある。3人よりは4人の方が戦力が上がるのは間違いないわけだが――。どうする、キール?」

と、ランカスター。


 言われて改めて気が付いた。


 そうか、それはそうだよな。僕がパーティを組むからと、人を紹介してもらったんだった。そういう意味で言えば、僕がパーティリーダーということになる。


 アステリッドのこの調子なら、置いていってもついてくるような気がする。


「――取り敢えず、アステリッドのことは、院長や『翡翠』さんに聞いてみるよ――」


 あと、一応、ミリアにも相談した方がいいだろう。


「――だから、それは少しあとにして、僕たちがやるべきことを大まかに話すね」


 そう言いおいて、キールは、これからこのパーティがやるべきことを説明し始めた。

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