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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第486話 ランカスター・ロイ

祖父じいさん、そろそろこっちの話をしてくれよ」


と、これまで黙っていたランカスターが待ちきれなくなって口を挟む。


 ああ、そうだな、と、ブリックスも応じ、今後の話へと入っていった。


 現在、ランカスターは二人組コンビで活動していて、相棒がいる。その相棒は、盾持ち戦士シールダーだそうだ。

 

 もちろん、冒険者の中にも魔術師はいる。

 が、その数は極めて少ない。


 理由は簡単だ。

 国家魔術院の存在である。


 国家魔術院は幼少期から魔法の才を見出し、管理・育成をする機関だ。

 そのため、多くの魔術師は国家魔術院で育成されることになり、その者の多くは、国家のために働くことになる。


 つまり、野に下ってくる魔術師というのは、才なきものか、組織にそぐわず抜けたものぐらいしかいないわけだ。


 その希少性のため、後発の新米パーティなどでは簡単にパーティに加えることができない程で、こと、魔術師に関しては、低ランク魔術師であっても、高ランカーたちが援護しながら育成してゆくことも多いのだとか。


「それで、俺らも、()()()()してたってわけさ。でも、待った甲斐があったぜ。なんてったって、これほど高名な魔術師とパーティを組めるってんだからな?」


 と、ランカスターがキールに向けて片目をぱちりとやって見せた。


「キール、このランカスターと相棒のレックスはいいコンビだ。さっきも言ったが、ランクはまだ「鉄級アイアン」だが、実力はすでに「銀級シルバー」でも充分やっていけるほどだ。それは支部長のこの俺が保証する。お前のパーティ編成の目的だが、ただ単純に冒険者になりたいってわけではないぐらいは承知している。これまでもお前は()()()翡翠ジルメーヌ』の仕事をこなしてきているわけだからな。そのお前が常に帯同できるメンバーが欲しいというのだ。立ち向かう「相手」は相当強大なものだろう」


 と、ブリックスが告げる。



 実際、おそらくそうなるだろう。


 本当は、高ランク冒険者を護衛として雇えばいいのかもしれない。

 だが、キール自身はそれほど資金を潤沢に持っているわけではない。

 

 それに、交易や輸送で稼いだ資金の多くは専用港の建設資金に充てなければならないのだ。

 高ランク冒険者を専属で雇えるほどの資金の余裕はない。


 だから、自身が冒険者となり、冒険者ギルドの仕事をこなしながら、「神候補の試練」もこなしてゆければと思って、パーティ結成の決断をしたわけだ。



「そうですね。おそらく、僕一人でなんとかできる程度のものではないと思っています。ですので、僕自身、経験を重ね、魔術師としても成長しなければなりません。一緒に成長してくれる仲間が欲しいと、そう思っています」


 と、キールも返す。


 じゃあ、あとはお前たちで相談しろ、俺は仕事に戻るから、と言って、ブリックス支部長は二人を部屋から追い出した。


 

「キール、早速だが、相棒のレックスにも会ってほしいんだ。メストリル商店街の店で待たせてある。ついて来てくれるか?」

と、ランカスター。


 キールは、恐らく今日は「デリウス教授の教授室(一味のアジト)」へは顔をだせないだろうと思っていたから、こころよく応じることにする。


「ああ、かまわないよ」

と、そう答えて、ランカスターと連れ立って歩き出した。



――――――



 アステリッドはルドとの「新作水着の製作会議」を終えて、大学へと向かおうと繁華街からメストリル中央通りへと向かっていた。


 中央通りはメストリルを縦断する通りで、真っ直ぐ郊外へ抜けて行けばキールの下宿宿、逆に街の中心に向かえば、大学や魔術院、王城、そして、貴族屋敷群などがある。

 

 そのお通りからいくつか枝分かれしていて、繁華街通り、商店街通り、職人街など大小の路地がある。


 基本的に、どこに行くにも一旦中央通りへ出て、目的の路地にまた入るという形だ。


 アステリッドが中央通りから出て来た時、通りの人の中に、見覚えのある人影を見つけた。キールの姿だ。


「あ、キールさんだ。キールさ~~ん!」


と、思わず反射的に手を高く上げて振ってしまったあと、隣を歩いている長身の男性に気が付き少し恥ずかしくなる。


 それにしても、見慣れない顔だ。

 赤みがかった茶髪で短髪の男。顔の造形は、それほど悪くはない。ルドさんには悪いが、ジルベルトさんよりはいい男だろう。

 年齢は、キールさんと同じか少し上かもしれない。


 誰だろう?



「ああ、アステリッド! これから、大学?」


 キールもアステリッドに気が付いて、声を掛けてきた。


 さすがに、こうなると、じゃあ大学で、と言って去るわけにもいかなくなってしまった。


 アステリッドは意を決して、キールのもとに駆け寄ると、


「ええ、そのつもりですけど、キールさんはどうするんですか? それと、えっと、こちらの方は――」

と、問いかける。


 即座に反応して声を発したのはその男性の方だった。

 

「ランカスター・ロイと申します。お嬢さん、キールさんのお知り合いのようですが、もしかして、恋人ですか?」


「え――!?」「な――!?」


 と、アステリッドと同時にキールも声をあげた。

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