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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第480話 まさか!?―古代エルレア語の秘密

 エリザベスとハルは、バレリア遺跡から持ち帰った「パソコン」の解析に取り掛かり始めている。

 これまでにおおかた判っていることは、この「パソコン」に表示されている文字が、「古代エルレア文字」と、なにかしらの関連がありそうだということだ。

 言語は違うが、文字は古代エルレア文字とどうやら対応しているように思える。


 

 まだ画面に表示されている「アイコン」の一部しか判明していないが、それでも、「パソコン」に触れるごとに使い方というものは身についてゆくものだ。


 もちろん、本来であれば、バレリア遺跡の「配線」に繋がっているわけだから、この研究室にある状態では、この「パソコン」の本来の仕事が出来ないことは言うまでもない。


 が、いずれにしても、そこまで解析が進んでいる状態でないときに、余計な操作をしてしまって、なにかしら「バレリア遺跡」に変化が起きてしまうよりも、繋がっていないからこそ何でも試せるとも言える。


 アステリッドが時折、魔術院の仕事の合間に顔を見せ、進捗状況を確認したり、アドバイスを落としてくれたりしてくれるおかげで、二人の作業はとどこおりなく進んでいると言ってよさそうだ。


 この調子だと、次回バレリア遺跡の『円盤の部屋』、あらため、『探索本拠点』へ戻った時にいろいろと試せることがありそうだ。


「えっと――これは、こうだから……、こういう事、かな?」

「ハルちゃん、ここは、こうできるから、これでいいと思うの」


 などと、作業を進めてゆく。


「あれ? これ、何も起きないなぁ――」

「じゃあ、それは、今度『遺跡』に行った時に確認ね」


 そんな感じで進めている二人の様子を、アステリッドは眺めながら、昨日ルドさんと話したことを思い返していた。

 くか退くか――。



「――リディ、ちょっと、聞いていい?」


 唐突にそう声を掛けられたアステリッドは、はたと我に返ると、


「え? ええ、なんですか?」


 と、返答した。


「これなんだけど――」

「ああ、これはたぶん、こう、じゃないかな――」


 と、アステリッドが少し操作をする。すると、新しい画面が現れた。


「ありがとう、リディ、なるほど、そういうこともできるのね?」

と、エリザベスが感心する。


「でも、やっぱり、私の『記憶』の中のものとは随分と違いますね。こっちの方がとても複雑というか――」 

「まあ、そうでしょうね。この「パソコン」で、何ができるのか出来ないのか、それはまだわからないけど、『円盤の部屋』にあれだけたくさん並んでいたのよ? つまりは複数人が同時に操作をしていたってことになるじゃない?」

「そうか――、つまり、それぐらい同時にいろいろとしないといけなかったってことですよね?」

「そうね。だから、複雑なのよ。でも、一人が出来ることは限られている。古代バレリア人が、手足が複数本あるっていうなら別だけどね?」


「ええ!? 手足がたくさんあるって、それって『アクトパス』みたいに?」

と、エリザベスの言葉に反応したのはハルだった。


「『アクトパス』?」

と、返したのはエリザベスだ。


「うん、海にいるんだよ? ふにゃふにゃしてて、足が8本もあるんだ。足には吸盤がいっぱいついてて、見た目は気持ち悪いんだけど、煮て食べると美味しいんだよね」

「ああ、「タコ」ね。それなら私も知ってるわよ、酢や醤油で食べるとおいしいわよね? 東のダーケートではよく食されているらしいわ。メストリル商店街にある東洋料理屋にも出してくれるところがあるわよ?」


という会話を聞いて、アステリッドはふと、気が付いてしまう。


「ちょ、ちょっとハルちゃん? 今、「《《オ》》クトパス」って言ったよね?」


「え? 言ってないよ? 「《《ア》》クトパス」だよ」


 と、ハルが若干発音の違いを言及してくる。


「あ、それ、それ。それって、もしかして、古代エルレア語なの?」

「ん? どうして知ってるのさ? そうだよ? 「アクトパス」は古代エルレアから使われている言葉だよ。でも、今でもエルレアでは「アクトパス」って言うけどね?」


 アステリッドの考えがもし合っていれば――。

 アステリッドは自身の考えを確かめるために、質問を出してみる。


「ハルちゃん、もしかして共通語の「本」は「ブック」、「机」は「テーブル」って古代エルレア語では言わない?」


「ん? なんか少し発音が違うような気がするけど、だいたいはあってるよ? すごいね、いつの間にそんなに勉強したの?」


「してない――」


「え? どういうことなの? リディ、あなたもしかして、古代エルレア語が分かるの?」

と、今のやり取りを聞いていたエリザベスが割って入った。


「いえ、あの、これは私の『記憶』の中にある言語なんです――。ハルちゃん、古代エルレア語の文字って、実は26個しかないってことはない?」


「――えっとぉ、正確には104種類かなぁ。でも、26種類それぞれに4種類あるってだけで、基本的には26種といってもいいかもしれない」


 アステリッドの考えがどうやら現実味を帯びてきている。もし、アステリッドの考えが間違っていなければ、それは――。


「『英語』だ……」


と、アステリッドがつぶやいた。


()()()?」

「え? どういうことなの? リディ、あなたの知ってる言語と古代エルレア語が同じってこと?」


 アステリッド自身、そのことに驚いている。まさか、古代エルレア語と英語が同じだなんて、想像すらしていなかったのだから――。

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