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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第475話 ブリックスとの面談

 キールは、受付嬢のエリーさんに引き連れられ、ギルド支部の建物の2階へ案内された。


 なんでも、ギルド支部長自ら話を聞きたいとのことだったが、新規登録の冒険者は皆、支部長の面接を受けることになっているのかなどと思いながら後に続く。


 2階の執務室へと案内するとエリーさんは、仕事に戻って行った。部屋の中にはかなりの年輩の男が一人待っていた。


 一目でただ物ではないとわかる気迫をまとっており、鋭い眼光はまるで鋭利な刃物を思わせる。

 魔法感知による鑑定の結果は、魔術師ではないと告げている。

 が、老いてもしなやかな筋肉をまとうすらりとした体型は、歴戦の勇士を匂わせるには充分だった。


「ギルド支部長ブリックス・ロイだ。お前がキール・ヴァイスか――。なるほど、たしかにいい面構えをしている。俺がこれだけの気を放っているのに、気後きおくれしないところもいい。お前、相当やるようだな?」


 と、その男、ブリックスさんが言った。


「初めまして、キール・ヴァイスです。実は、僕、パーティを結成しようと思いまして、そういうことなら冒険者ギルドへ相談してみたらと、友人のすすめもあり、やってきました」


 と、すらりと返す。こういう人と対峙するときは、無理に構えず、要件を端的に伝える方がいい。


「――ふん、今さらお前のような『特級魔術師』が、パーティ編成だと? 仲間ならすでに大勢いるだろう?」


 と、ブリックスさんが応じる。


 たしかに「仲間」はたくさんいると言っても過言ではない。だが、常に一緒に行動するパーティに加えることは難しいものばかりだ。

 今キールが必要としているのは、そういうものたちなのだ。


「実は、僕の「仲間」は皆、それぞれに仕事があって、なかなかいつも一緒というわけにはいかないんです。そこで、そういう方がいないかと――」


「それで、冒険者登録か?」


「受付のエリーさんに聞いたら、パーティを組むには必要だということだったので……」


「質問がある。何のためにパーティを組むんだ? お前ぐらいなら現在の冒険者ギルドにある依頼をこなす程度、一人でも充分なものばかりだ。別にパーティを組む必要なんてないだろう?」


 なるほど、話とはそのことだったか。

 つまり、僕の目的を確かめておきたいということだ。


「実は、ある場所を探索する必要が出てきまして。そこを訪れるにはそれ相応の戦力が必要だと見ています。パーティ編成後すぐに行ければいいんですが、そんな実力のある冒険者が都合よく僕のような駆け出しに付き合ってくれるとは思いません。その場合は、パーティの経験を上げてから向かおうと思っています」


「それはどこだ」


「ユニセノウ大瀑布だいばくふ、です。この中央大陸から西へ向かった海に浮かぶ島です」


「海の真ん中に浮かぶ島だと?」


「はい。実はそこに『スポット』が出現したという情報がありまして。それを処理しに行くつもりです」


「つまり、海を渡るって話だな――」


「そうなりますね」


 ブリックスさんは少し思案していたようだが、結局は、わかったと応じてくれた。

 その上で、受付まで案内してくれ、登録の手続きを済ませてくれた。


「エリー、ランカスターは戻ってるか?」

「え? ランカスターさんですか? いえ、今日はお戻りにならないと思います。今朝早く、トルク村まで向かわれましたから。順調なら明後日あさってぐらいにお戻りかと――」 

「ああ、トルク村の洞窟掃除か――。わかった。戻ったら、引き留めておいてくれ。紹介したい奴がいるってな」

「え? もしかして、キールさんをご紹介なさるおつもりですか?」

「ああ、そのつもりだ。――キール、しばらく待っててくれ。紹介したい男がいる。準備が出来たら呼びに行くから、連絡先をエリーに伝えておいてくれ。じゃあな、キール、またな」


 そう言い残すと、ブリックスさんはまた2階へと戻っていった。


「えっと――」

「ああ、キールさん、そういうことですので連絡先を……」


 エリーさんがやや遠慮がちにそう聞いてくる。キールは取り敢えず、自分の部屋の住所とメストリル大学のデリウス教授の部屋を連絡先に指定しておいた。どちらかにメモでも残しておいてくれれば、ギルドに駆け付けることができますと伝えて、ギルド支部をあとにした。



――――――



「――ってな感じだったよ」


と、キールは皆に報告した。


「そう、そのブリックスさんって支部長、どんな人なの?」


と、ミリアがやや心配そうに聞いてくる。


 実は、国家魔術院と冒険者ギルドはそれほど関係が深くないらしい。

 まあ、片や国家の役所で片や民間の組合なわけだし、それぞれ自分のところの人員で仕事をこなせるだけの人材が揃っているわけだから、あまり関わり合いが無いとしても不思議ではない。


「ああ、そうだなぁ。『英雄王』がスラッとしてるって感じかな。もちろん人当りという意味では、『英雄王』程()()()とは行かないみたいだけど、結局は協力してくれたし、パーティも紹介してくれそうだから、いい人なんじゃないかな?」   


と、答えた時だった。


 突然、デリウス教授の部屋の扉が開かれ、若い女性と、老人が姿を現す。


「キール! ブリックスに会ったというのは本当か!」

「おい! どうして先に俺に相談しなかった!?」


 そう言って途轍もない慌てようで飛び込んできたのは、『翡翠の魔術師』ジルメーヌ・アラ・モディアスと、『英雄王』リヒャエル・バーンズの二人だった。

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