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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第468話 東方異変対応を終えて

 ミリアとキールからの報告を受けたメストリル王国首脳陣は、胸を撫で下ろした。

 隣国デリアルスとはそれほど関係がよくないままここまで来ている。


 一説には、デリアルス国王ミハイル・グレントリーの「冒険者嫌い」が原因だと噂されている。つまり、元冒険者の『英雄王』リヒャエル・バーンズを毛嫌いしているがゆえに、その『英雄王』が治めるメストリルとは正常国交を開かないというのが通説だが、真実は今もなおわからないままだ。

 

「まあ、とにかく、賠償責任を訴えられることだけは回避できたようで何より。国境付近の探索には今しばらく人員をくことにしよう」


 と、真っ先に切り出したのは、ミリアの父で内政大臣でもあるウェルダートだった。


「国家魔術院からも人手を出しましょう。この際、しっかりと探索し、地域地図も整備し直すのもいいかと思います」


 と、ネインリヒが応じた。


 『英雄王』と『翡翠ジルメーヌ』は共にそうしてくれとこれに答えた。



「ところで、キールよ。こちらのリーンアイム殿の住処すまいについては何か考えがあるのか?」

と、『翡翠ジルメーヌ』さんが問いかけてきた。


 キールは、それについては少し考えがありますが、試してみないとわかりませんと答えるにとどめる。

 その上で、


「もしダメだったら、その時は何か彼が安らげるほこらを建てていただかなくてはならないかも知れません」


と、『英雄王』の方に向き直って要請する。


 『英雄王』は、「わかった」という風に軽く手を上げて応えた。

 まあ、ドラゴン族が「食客」にいるというだけで国家の軍事力はかなり上がるかもしれないが、周辺国家に余計な猜疑心を抱かれるのはあまり歓迎しない。

 それは、キールも『英雄王』ももちろんわかっている。

 

 故に、キールがなんとかできるのなら、それが一番いいという判断はここにいるすべてのものの総意でもある。


 当のリーンアイムは、


「我は「ほっとどっぐ」さえ食べられれば、別にどこでもよいぞ? 小娘、お前は我の《《恩人》》だ。今後は何なりと我に申すがよい」


と、心底、「ほっとどっぐ」が気に入ったようである。


 リーンアイム曰く、「ほっとどっぐ」を数日おきに2~3本食べるだけで、活動に充分なエネルギーは充填できるということらしい。あとは適当に魔物を狩っていれば、充分だということだ。


 何という省エネ――。


「そもそも我らドラゴン族は、体が大きく行動に伴う消費エネルギーが莫大じゃったのじゃが、それも長い年月をかけるうちに変遷していったのじゃ。わしもべリングエルもたいして食さないのは、エレメント・ボディじゃからではない。そもそも生体じゃったころからの名残じゃ」


と、ジョドが説明を補完する。


 それにしても、リーンアイムのアステリッドに対する態度が、まるで、おもちゃをもった母親に構ってもらっている赤子のようで、なんだか微笑ましくすらあると、キールは楽し気に見ている。


「キールよ。我が「ほっとどっぐ」を食べられる場所を所望する。それが叶えば、どこでもよいぞ?」


 と、リーンアイムは上機嫌のようだ。


「僕に付いて回るのなら、さすがに2~3日おきに「ほっとどっぐ」は少しきついから、そこは別のもので我慢してくれないか? ここに戻ってきたときには出来る限り「ほっとどっぐ」を食べさせてやるから――」


「ほう、別のものとはなんだ? それも美味しいのか?」


「それは、お前の味覚次第だろうけどさ――。まあ、人族の料理は多彩だから、なんだかんだと考えてやるよ」


「ふうむ、お前に付いて回ると確かにいろいろなものが食べれそうな気がするが、「ほっとどっぐ」は捨てがたい。できれば、ここに住みたいものだが――今の世界情勢ではそうもいかんのだろう。まあ、いいだろう。お前の案とやらを聞いてからにするとしよう」


と、取り敢えずのところそのように決まった。



 その後、ミリアとアステリッド、ハルを伴って、キールはリーンアイムの住処について試行すべく、三人のドラゴン族と一緒にいつもの森の広場へとやってきていた。 


「キールさん、考えってもしかして……」

と、アステリッドが察したように聞いてくる。


「うん、次元の狭間だよ。あそこなら、人類に影響を与えないで済むからね」

と、キールが答える。

「でも、これだけの質量のものを運んだことはないんだよね。大丈夫かどうかはやってみないと――」


 そう言うとキールは、いくよ、と声を掛け、『幽体』の術式をここにいるすべてのものを対象に展開した。


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