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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第459話 ドラゴン族三人集結

 ジュリエ村での会合の翌日――。


 ミリアとキールは周囲に気をはらい、発見されないように隠密行動をとり、「風穴」までやってきた。

 先程ようやく「風穴」に入ったところだ。


 さすがに潜入行動ということもあって、ミリアの様子が気にかかるキールだったが、当のミリアは、キールがいつもどのようにして隠密行動をしているかを間近で見ることができて、「とても参考になった」と思っているようで――。


 疲れてないか? というキールの問いに、全然平気、と答えるミリア・ハインツフェルトの魔法技術とその素質は改めて「天賦の才」だと再認識させられることになった。


 彼女ほどの才能が『ギフト』なしであるという事実を思うと、自分の『ギフト:膨大な魔法の素質』がかすんで見える気がする。


「はぁ、なんだかな~。君のそんな素質を見せられると、本当に自分が小さく見える気がするよ」

と、キールが思わずぼやく。


「はあ? 何よ今さら。忘れてるわけじゃないでしょうね? 私はあなたの『師匠』なのよ? 当たり前じゃない。弟子よ、まだまだ魔法の世界は奥深いのじゃ、精進するが良いぞ?」

と、ミリアが珍しくおどけてみせる。


「はははは、なんだよそれ。――でも、そうだよね。僕が使える魔法もこの数年でいくらか増えたけど、ミリアの使用可能種類数レパートリーには近づくどころか離される一方だ……」


「キール、私が昔言ったこと()()()忘れたわけじゃないでしょうね?」


「あ――、どれだけたくさんの魔法を使えるかが素質じゃない――ってやつ?」


「あんた、忘れかけてたでしょ? あなたの素質は心配しなくても充分以上よ。ここにくる道中にもいろいろと勉強させてもらったわ。使うタイミング、威力の調整、魔法効果の利用法……。本当にあなたの素質を改めて思い知らされた気がするわ。私の方こそまだまだ精進が足りないって、そう思えるほどにね」


「ん? いまの、誉め言葉だよね? わぁ、ミリアから魔法のことで褒められるのってそんなに無いから、うれしいな」


「そ、そんなことないでしょ? 私はいつもあなたを褒めているわよ?」


「いや、そうでもないよ? もっと褒めてくれてもいいんだよ? 師匠」



 そんなことを話しながら風穴の内部を目的のホール目指して進んでいた。


(――! ふたりとも、夫婦めおと漫才はそこまでじゃ。リーンアイムの気配が強くなってきた)


「「夫婦めおと漫才って――!!」」


と、ミリアとキールが同時に叫んだ時だった。


『まったく、人のねぐらの中でよくしゃべる奴らだ。少しは遠慮と言うものを覚えたらどうだ?』


と、4()()の頭に語り掛けるものがあった。リーンアイムだ。


「あっ! リーンアイム! お待たせ! 二人を連れて戻ったよ?」

と、キールがこれに反応して声を上げた。


『うるさいと言っておるだろう、小僧。ここは我の塒だとさっきから言っている。お前たちが入ってきたときからしっかりと視えておるわ。それにお前の腕にはわしの腕輪が嵌められたままじゃ、お前の位置はどこにいてもわかるとそういっておるだろう』


 そこから数秒後、キールとミリア、そしてミリアの装飾品《守護者》たちの4人はホールへとたどり着いた。


「わぁ! なんて綺麗なところかしら!」


 ミリアは、そのホールが明るく照らし出されているのが壁面に並んでいる『光源』によるものだと一目で見抜き、その光源たちが、夜空を埋め尽くす満天の星のように輝く様子をみて、感嘆の声を漏らす。


 そのミリアの様子を見ただけでも、キールはここに連れてきた甲斐かいがあったと唇の端を上げた。 


『――お前の身につけている装飾品。ジョドとべリングエルか――?』

と、リーンアイムがミリアに思念波をおくる。


 二人はすり鉢状に広がるホールの壁を滑らないように注意を払いながらゆっくりと降り、中央に臥せるドラゴン族の眼前まで進み出る。


 その時、ミリアの身につけている二つの宝飾品が明るい光を放つと、二頭のドラゴンが姿を現した。ジョドとべリングエルが実体化したのだ。


「リーンアイム、久しぶりじゃな? 生きておったとは――」

と、ジョドが言葉で返す。


「お前もな、ジョド。それからべリングエル。二人はこれまで共に過ごしていたのか?」

と、リーンアイムが返す。


「――いや、我らも別々に雌伏の時を過ごしていた。ジョドと再会したのはつい先日のことだ」

とはべリングエル。


「そうか――。それよりどうだ? 我の言ったことは正しかったであろう。今もなお、しっかりと生きているぞ」

と、リーンアイムがそっと告げた。


 その言葉に勝ち誇ったようなおごりはなく、ただ、さとすような、それでいて寂しいうれいすら帯びたものに、キールには聞こえた。

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