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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第451話 神ボウンの導き?

 キールはカナン村の近くまで到達していた。

 確かに魔法痕跡はまだ見当たらない。


 遠目に村の建物の影が見えるほど近くに来ているのだが、それでも痕跡の気配を感じないというのは――。


(――いや、必ず何かあるはずだ……。もっと注意深く精査してみよう)


 キールは再び集中する。


 村の方からはすでに人の気配などは感じられない。リトアーレの衛士たちがすでに処理を行って立ち去ってしまっているからだろう。


(やっぱり、村まで行ってみるか――)


 場合によっては、村に近づくのは日が暮れてからとも思っていたのだが、人の気配がないのなら大丈夫だろう。現在キールは隠密行動中なのだ。王国の兵士などと遭遇してしまうわけにはいかない。


 変わらず魔法感知を全面展開しつつ、村へと足を踏み入れた。


 倒壊した家々、焼失した小屋、血糊のあとが黒く残る壁――。

 村のメインストリートだったろう道には散乱した瓦礫の山々――。 


 一目見ただけで、惨状が思い起こされる。


(これは、ひどいな――)


 キール自身、魔物とは何度も遭遇し戦っている。が、人間が住む場所に魔物が入り込み蹂躙したあとなどというのは、初めて見る光景だ。


 幸いなのは、すでに、「片付け」が済んでいるということだろう。もちろんそれでも、なんとも言えない鉄が焼けたようなにおいはまだ残っている。


 しかし、村にはやはりそれ以外、『特に変わったところ』は見当たらないように思う。

 やはり、何もないか――、と村の中央をさらに進んでいった時、「あの感覚」が不意に襲ってきた。


(これは、「本」――? こんな場所で? ここはただの村だぞ――?)


 しかし、その感覚は間違いなくキールを呼んでいる。


(――とにかく、初めての()()()()だ。なににせよ、逃すわけにはいかない――)


 まったく、ボウンさんの仕掛けには毎度悩まされる。


 キールはすでに「この能力とボウンさんの関係」に気が付き始めている。とはいえ、密接な関係があるというわけではないのだが。


 前神候補だったオズワルド神父さまの「特性ギフト」は『付与』だと言っていた。その能力を使ってボウンさんとどうやり取りしていたのか、もしくは、別の方法でやり取りをしていたのかは聞いていない。


 なので、「特性」イコール「ボウンさんとの交信方法」というわけではないということは分かっている。

 だが、何かにつけて、「ボウンさんからのメッセージ」が込められているように思うのはおそらく気のせいではないだろう。

 キールの場合はそれが「本の発見」であることが多い。


(呼ぶか、声を届ける(話しかける)かしてくれれば面倒くさくないのに――)


 などと、宙にむかって悪態の思考を飛ばしながら、その感覚を追ってゆく。

 

 やがて、一軒の大きな建物に辿り着いた。


 他の村の家々に比べれば3倍以上の大きさがある広さだ。


(集会所、みたいなものか――?)


 村の評議会を開くときにはそれなりの広さが必要だろうから、共同でその為の小屋を建設している村は結構存在している。これもそれだろうと、キールは結論付けた。


 キールは扉を押し開けて建物の中にはいってゆく。大きな部屋が一つあるだけの小屋だった。内部には椅子や長机が置かれていた。この建物自体も、襲撃の参加から逃れることはできなかったのだろう。壁には大きな穴が開いており、内部にはやはり、通りと同じ臭いがまだ残っている。


 キールは出来る限り気にしないようにしながら、感覚の強くなる方へと進んでゆくと、案の定、一冊の本、いや、『資料』のようなものに行きついた。


『風穴当番表』


という表書きがなされた紐閉じの資料だ。中を開いてみると、日付とコメントが記録されている。


(これは、日誌、か――?)


『372,1,31 特に変わりはなかった……、372,2,1 今日はすこし風の唸り声が聞こえる……、372,2,2……』


 そんな感じでつづられている。


 「風穴」って、どこにあるのだろう? と、おもいながら、資料をぱらぱらとめくると、一枚の端切れがひらりと落ちてきた。キールはその端切れを取り上げると、内容を確認してしたり顔になった。


(地図だ――。たぶんここに「風穴」があるのだろう――)


 地図の指し示す位置は、この村の北へ数キロというところか。村の北の森の中に続く街道を少し進み、やや山側へ入っていった場所になる。


 なにがそこに在るのかはわからない。魔族どもの巣窟になっていないとも限らないのだが、いずれにせよ、これ以外に手掛かりは何もないのだ。

 

(行けってことだよなぁ――。はぁ、これで魔族がうようよいたら、今度ボウンさんに会った時に文句を言ってやらないと――)


 キールは、その切れはしの地図だけを懐にしまい込むと、村をあとにして北へ向かった。

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