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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第45話 ラアナの神童

 その日以降、クリストファーの姿をたびたび見かけるようになった。


 おかしなものだ。

 新学期が始まってだいぶんと経つというのに、これまであの子のことを知らなかったなんて。


 知らない人をたびたび見かけていたとしても、人と言うのはその人を《《認識》》しない限り見たことのある人とは思わない。

 

 クリストファーはその容姿から、どこにいても異彩を放っていた。

 同級生とおしゃべりしている姿や、校内を歩いている姿、書庫で本を物色している姿、女生徒と何気ない会話や挨拶を交わしている姿など、いつでも彼だけが飛び抜けて目立っている。


 あれだけの容姿で優しさにあふれる青年なら、男女問わず人に囲まれるのも無理はない。



「――え? クリストファー・ダン・ヴェラーニ?」


「ええ――」


「ミリア、彼のこと知らなかったの?」


 去年から同じゼミに所属する、カチュア・ヘルメナートはミリアにとって、唯一「魔術院の天才」を忘れさせる気の置けない親友だった。

 そのカチュアが今、ミリアの唐突な問いに驚いている。


「あの子は入学してきたときから、上級生の間でもかなりの評判だったから、当然あなたも知っていると思っていたけど――。ああ、そう言えばあなたには、すでに「意中のひと(キールくん)」がいたんだったわね。そりゃ、眼中にないっても仕方ないかぁ」


「な! なにをいってるのよ、カチュア。キ、キールとはそういうんじゃなくてただの研究仲間よ、そう、同志よ」


「同志ねぇ……。まあいいけど~」

少し意地悪い笑みを返したカチュアがさらに続ける。

「クリストファーのことね。彼は、メストリルの南方地域ラアナ領出身の地元商家の息子だって聞いてるわ。幼いころから『ラアナの神童』とか呼ばれてて、かなりの秀才らしいわよ。まあ、といっても、王立大学はそもそも競争率が高くないから、入学自体はそれほど難しくないからね。ここに入ったから秀才っていうんなら、私なんか大天才と呼ばれてもおかしくないわよね」


「ははは、それはないわね」


「はん、失礼な子ね。はっきり言うかねぇ?」


「で、その神童はどんな子なのよ?」

ミリアは先を促す。


「はいはい。専攻は考古歴史学らしいわ。どうも古代文献とか古代文字とか? そんなものを研究してるって聞いてる。性格は温厚で、気配りも効く。貴族家のお嬢様方からは絶賛熱い視線を送られているって感じね。まあ、あの容姿で、頭がよくって、気立てもいいって、これで家名が由緒正しければ完璧なお婿候補だもんね」


「そう――、なのね……」


「残念ながら、家名は平民なんで、お婿候補には入らないだろうけど、それでも彼をそばに置いておきたいって貴族令嬢はかなりの数いると思うわ」


 カチュアの話からは彼の性格は思っていた通りの様だった。

 考古歴史学――、古代文字――。

 彼が研究しているものと、この間の「バレリア文字」の書物、その関連性はかなり深い。

 例えば私に近づくだけが目的であの書物を適当に選んで《《カマ》》をかけてきたというような類ではなさそうだと推測できる。

 少なくとも、その書物に一定の知識を持っており、私がそれについて興味を持っていることを知って、声をかけてきたのだ。


 例えば、カチュアに頼んで3人で話をするという方法も無くはないが、その場合、今ミリアの解読している『魔術錬成術式総覧』のことも話さなくてはならない。キールと魔法の訓練について共にしていることは話してあるが、書物についてはキールと二人だけの秘匿事項だ――。


(やはり、二人で話をするしかない――)


 ところで彼が魔術師だという情報は魔術院の方は認知しているのだろうか。もし認知しているとすれば何らかのアプローチも検討されているはずだ。


(ネインリヒさんに聞くしかないか――)


 とにかく彼が確実に信用できる人物であるとはっきりしないうちは、秘密を漏らすことはできないのだ。



 

 放課後、ミリアはいつもの王立書庫へ向かわずに、国家魔術院へ向かった。今日はたしかニデリック院長はお休みの日だ。院長がお休みの日のネインリヒ秘書長はだいたいいつも各施設訪問を行っている。どこかで出会えれば、人に聞かれる可能性も低くなる。


 魔術院で尋ねたところ、今先ほど王国兵団詰所へ向かったと聞いた。今から走れば到着する前に追い付けるはずだ。


 ミリアはすぐに後を追った。


 魔術院の扉を抜け、王城の通路を走る。

 数十秒後、とおくに見慣れた背中が見えた。ネインリヒ秘書官に間違いない。

 ミリアはその背中へ向かって声をかけた。

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