表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

444/781

第444話 ハーマン・ラオ・ギャラガー

「――なるほど、海の警察ってわけだ……。あいかわらず、おかしなことを考えるやつだな。いいだろう、お前たちの主要補給港として、ローベの開拓を認めることにする」


 ワイアットがそう口にした。

 

「い、いいのか? そんなに簡単に?」


「おいおい、お前の目的はそれだろう? 目的を達成するために、必要な相手と交渉するってのはどこの世界でも同じだぜ? そして、()()は、ここの「権利者代理」だ。と、いうわけで、交渉だ――」


 キールはやや構えつつも聞き返すことにする。


「あ、ああ、条件は何だよ?」


「俺も()()()に乗せてくれ」


「――え? 『船』って……」


「文字通り、お前がこれから作るつもりのでっかいふねのことだよ。まあ、すぐに、というわけにはいかないがな? こっちもこっちでやらないといけないことは多い。ゆくゆくはアーノルド(おとうと)に国王を移譲して(ゆずって)、俺は退しりぞくつもりだ。だから、その後は「無職」になるんだよ。就職先が決まってると安心だろ?」


「――ったく、どこまでも、自分勝手なヤツだな。――いいよ、「無職《その時》」になって、まだウチに「就職し」()たいという気が変わってなかったら、来るといいさ。別に拒む理由なんてないしな。そもそも、うちの連中たちも自分たちで勝手に集まったものばかりだし、僕が何か許可したわけでもない」


 まあ、一部強制的に巻き込んだやつがいないわけでもないが、基本的には、向こうからキールのもとに押しかけてきてる方が多い気がする。


「――そうか。これで、『老後』の趣味も確保できたってわけだ。なかなかに人生設計が上手いだろ?」


「設計なんて――」


「あてにならない。だろ? そうだな。俺たちはいつ死ぬのか見当もつかないからな。健康なら長生きするって保証があるわけでもない。かと思えば、うちの親父なんかは病床に就いてからもなんだかんだと結構長生きしてやがる」


 そう言いながら、ワイアットは頭をく。


「ああ、そう言えば、国王は病に臥せっていると言っていたな」


「もう、6年だ――。今じゃ、寝床から起き上がることもできない。だけど、意識ははっきりしてるし、言葉も交わす。ただ、起き上がれないだけなんだそうだ。――ああ、病状はオズワルド神父に診てもらってるんだ。あの人は俺の命の恩人でもあるしな。そもそも、親父との縁は古い――。それに、前世は「医者」だったらしいぜ?」


 なるほど、どうしてワイアットが怪我をした時にオズワルド神父が呼ばれたのかが、これではっきりした。国王はオズワルド神父がそういったことに詳しいことを知っていたんだろう。


 

 クルシュ暦372年1月2日――。

 ワイアットに呼び出されたキールは、先日会談を行った豪奢な商館へ来ていた。


 そして、この間と同じ個室で今話をしているというわけだ。


「ああ、そうだ。この街を開拓するっていうのなら、ここの主人を紹介しておこう。ここは、そもそも国王御用達の商館で、ローベの商業ギルドとの関わりも深い。何かと相談するといい――どうだ?」


「ああ、それは助かる――。ゆくゆくは資材調達などいろいろと物要ものいりになると思うからね」


 その返答を聞いて、ワイアットが給仕係に合図を送った。


「ハーマンを呼んできてくれないか? いい金蔓かねづるを紹介する、とな」  


 給仕が一礼し、部屋を出てゆく。

 そしてしばらくたった後、一人の女性が現れた。


 女性の身なりはそれほど煌びやかなものではない。ただ、商業用にコーディネイトされた佇まいで、隙がない。髪はしっかりとまとめ上げられており、ここにもいわゆる「緩み」が見えなかった。


 年齢の頃は、30代後半ぐらいだろうか、『疾風』よりは少し上に見える。が、こちらも負けず劣らず強烈な美人である。


「閣下、お呼びと伺い参りました――」


 声は麗らかに響く。見た目の印象と少し違った「柔らかさ」がその声には含まれている。


「ハーマン、忙しいところをすまない。実はこの男を紹介したいと思ってな?」


「キール・ヴァイスです。よろしくお願いします」


「ハーマン・ラオ・ギャラガーと申します。この商館の主を務めております――。キール・ヴァイス様――。『稀代きだい』さまでいらっしゃいますね? ふうん、なるほど、聞くと見るとでは……」

と、ハーマンが言葉をそこで止める。


「な? 違うだろ? こいつの場合、イメージが先走りしてやがるからな。実際はかわいらしい男の子だぜ?」

と、ワイアット、いや、ウィリアム王子が後を受けた。


「――はあ、またですか。前にも同じようなことを言われた覚えがありますよ。いったいどういう噂になっているんだか……」


 キールはさすがにうんざりした様子を隠せない。それに、誰が「男の()」だ。僕はもう、24になったんだぞ?(この世界では毎年1月1日に年齢を一つ足す慣例となっている)


「いえ、ただすこし意外だったもので――。失礼いたしました。それで、閣下、ご用件というのは?」


「ああ、実は、このキールが、今後、ローベの港を主要寄港地にしたいと目論んでいる。こいつは海に国をつくりたいと、本気で考えている大馬鹿者だ。どうだ? 俺もこういうやつが好きだが、お前もそうだろう?」


「海に国を、ですか――。確かに。これからの時代は海運業も盛んになるでしょうし、また、エルレアとの交易が盛んになる可能性もあります。海に目を向けるのは、大馬鹿者というよりは、()()()()者というところでしょうか――」


 と、ハーマン女史は真剣に受け止めを返している。


「――()()()()者、か。全くだ。それで、その()()()()者の世話をお前に頼みたい。こいつの寄港地建設の一切をお前が仕切ってくれないか? いいだろ、キール?」


「え、ああ、そりゃあ、僕たちはその技術も知識もそれほど持っていない。海運や船舶に詳しい商館がバックアップしてくれるのは願ってもないことだよ」

と、キールも了承する。


 ハーマン女史はすこし、考えるふうを見せたが、決断は早かった。


「――分かりました。お受けいたします」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ