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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第417話 ルクレツィア・ナイリー

 ルクレツィアは話に聞いている『英雄王』を一目見て、まさしく話のままの人だとそう感じた。


 レント族の(よわい)70と言えば、エルルート族で言うところの大長老ぐらいだというが、この「冒険者」が本当にそのような年齢なのかと疑いたくなるほどに血色もよく壮観で体力に溢れているのが見て取れる。


 なるほど、ジルメーヌさまが「惚れこむ」だけのことはある。


 ルクレツィアは実はジルメーヌの治める領地の出身で、幼き頃から『魔術師ジルメーヌ』を見て育ったと言っていい。ルクレツィアにとってジルメーヌは魔術師としての大先輩であり憧れで、また、目標でもある。彼女自身も「魔術師」なのだ。


 エルルート族は魔法に秀でているというのはあくまでもレント族よりもその素質を持つものが比較的多く、研鑽の歴史もレントに比べて圧倒的に長いからゆえであるが、それは彼らエルルート族固有の特性「守護精霊」の存在に無関係ではない。

 生まれながらに何かしらの能力を持つ「存在」、『守護精霊』の加護を持つ彼らエルルート族は魔法との親和性が高い。が、それなら全員にその素質が現れるのかと言えばそうでもない。また、その「希少な」素質を持っていたとしても、充分に開花させることが出来ずに一生を終えるものがほぼすべてだ。


 どうしてか?


 実のところはっきりした理由が未だに解明されてはいない。が、最近の通説としては、『精霊力』による干渉ではないかと言われている。



「ですので、私の『守護精霊』はほとんど姿を見せません――。実際私の一番新しい記憶でも、20年以上は出会っていないと思います」

と、ルクレツィアはキールの問いに答えた。


「たしかに、僕も『ハル』の守護精霊を見かけたのは一回だけだったような……。守護精霊って本当にあまり姿を現さないものなんですね?」

と、キールが問いかけてくる。


「イハルーラのことですね。あの子のはまだまだ出現率が高い方ですよ。いやむしろ、普段は大抵寄り添うように存在していますね。可視化していないだけで、ふだんからずっとイハルーラの隣や肩辺りに付いていますね」

と、答えておく。


「ルクレツィアさんは『ハル』より年上なんですか?」

というキールの問いに、

「そうですね。私はハルより30ほど上です――」

と返した。


「ルクレツィアは、イハルーラの姉弟子なんですよ。もちろん師匠はジルメーヌさまです」

と、脇から声を上げたのはフィエルテさんだった。

「イハルーラはある意味『特殊』です。守護精霊がずっと側に出現しているエルルート族など、彼女以外に聞いたことがありません」


 そうなのだ――。

 事実、ジルメーヌさまがご自身の手から放さず今もなお、イハルーラをお傍におかれているのは、その彼女の「特殊さ」故でもあるのだ。


「なるほど――。ルクレツィアさんから魔素を多く感じるのは、その為なのかもしれませんね。魔素量から言えば『ハル』より数段高い気がします」

と、キールが何気なしに応じた。


(この子、やはり相当の使い手だわ――。この前見たときからまた随分と魔素が研ぎ澄まされている――。しかもこれってかなり制御している? 外部に漏れる魔素を体内に押し込めてなおかつ悟られないように制御することがどれほど難しいことか。私にはこの魔素を押し込めることなど結局どれほど研鑽を重ねてもできなかったというのに……)


と、おもいつつ、ルクレツィアは柔らかく応える。

「キール様は私の魔素がお見えになるのですね。見たところ、キール様は前よりも『穏やかに』見えますが?」

と、返した。


「まだまだですよ。ようやくこれぐらいまで制御できるようになりましたが、これではまだ駄目です。僕の知っている魔術師は僕よりも圧倒的な魔力を持っているはずなのにそれを全く感じさせません。でも、出来ると信じてやり続けるしか、結局は魔法の研鑽なんて積めないものですから」

と、キールは答えた。


 ルクレツィアは、《《その魔術師》》が何ものなのかはわからなかったが、レントにもそういう高名な魔術師がいるのだろうと思うことにした。


「――あ、そうでした! そのイハルーラなんですが、なんでも昨日の朝早くポート・レウラに到着したようですよ? 彼女もこちらに向かっているようです。ただ、用があるのは統一王朝ではなくて、その『書庫』の方のようですが――」


 ルクレツィアはなんとかタイミングを計り、「そのこと」を伝えることができた。先程夕刻に、速馬はやうまによって報せが来ていたのだ。


「ハルが?」

「ええ、アステリッドさまもご一緒です。ジルメーヌさまのイルミナティオ号でポート・レウラまで来られたようです」

「アステリッドも? このエルレアの書庫に? なにがあったんだろう?」


「さあ、詳しくは分かりませんが、なんでも古い遺跡のことで『エルレア聖典』の原版が必要だとか――。『エルレア聖典』というのは私どもの土地では伝説や伝承の昔話のようなもので、いわゆる『童話』の類いなんですが、原版ともなるとさすがに皆正確な内容は把握してないと思います――」

と答えつつ、

(どうして北の大陸の古い遺跡とエルレア聖典に関わり合いが生まれてくるのか。まったく謎だわ――)

と思う。

 ルクレツィアにはその『聖典』と『古い遺跡』に何らかの関連があるようには思えず、ただ、奇妙な話だと思っていた。


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