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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第411話 魔術師対武闘修道僧

 兵士と灰色ローブたちの一団は、教会に向かって走り続ける。

 ようやく教会に辿り着いた一団は、先程の竜が立ちはだかっているのを確認した。


「さっきの奴だ!」

という誰かの叫びに、一団に緊張が走る。


「怯むな! とにかく国王を取り戻すのだ!」

ヒュッケンが叫び返す。

 この際あの竜に数人が潰されようがどうでもいい。とにかく国王さえ取り戻せばまだ何とかなる。そう考えてのことだ。


「ははっ!」

「い、いくぞ!」

「おお!」

一団の皆は怯えつつもヒュッケンの命令に抗えない。彼らはみな『リーキの葉』に囚われているからだ。


 目の前に立ちはだかる竜を無視するように教会に殺到する一団に対し、ミリアは躊躇ちゅうちょした。


(どうする? ジョドの力なら難なく叩き潰せるかもだけど、そんなことをしたら、この国の国王の品位や民からの信頼を失うことになりかねない――)


 自分を守る衛兵たちを殺させたとあれば、「乱心」ととらえられてもおかしくはない。そうなれば、人民たちはそもそも厳しい自然環境にさらされているこの国から去って行くことだろう。


(取り敢えず――!)


紺碧の氷壁ブルー・アイス・ウォール――!』


 ミリアは腰から短杖を抜き、術式を発動した。

 たちまち教会の前庭、ジョドの眼前に高さ数メートルの氷壁を生成させる。


「ぬお!」

「氷の壁だと!?」


 兵士たちは眼前に立ち塞がる氷壁に行く手を阻まれる。が、


「氷なら、叩き壊せるはずだ! やれ!」

というヒュッケンの号令に、

「お、おお!」

「いくぞぉ!」

と、兵士たちが呼応し、氷の壁を攻撃し始める。


 兵士たちの得物である剣や槌、灰色ローブの放つ拳撃や蹴りを受けて、氷壁の耐久度がどんどん減少してゆく。


(な!? なんて、破壊力なの!?)


 通常なら、この『紺碧の氷壁ブルー・アイス・ウォール』を破壊するのにはそれ相応の炎系魔法や物理系魔法をぶつけるしかないはずのところを、兵士や灰色ローブ修道僧の攻撃力は単純な物理攻撃なのにそれら魔法攻撃に匹敵する破壊力を持っていることになる。


(くぅ! もうもたない!!)


 バシャ――――――ン!!


という豪快な粉砕音と共に、氷壁が霧散する。


 ミリアは今の術式展開で相応の魔力を消費している為、あと使えるのは単純攻撃魔法ぐらいのものだ。『火球ファイアボール』や『氷槍アイススピア』ならいくらでも打ち出せるが、それだとやはり兵士たちを傷つけてしまうだろう。


(どうする? もう、打つしかないの?)


 そう、心に決めかねている時、教会の扉が開いた――。



『皆のもの! しずまれぇ!! われの名はレイバン・フロストボーデンである! この私に向かってその刃を向けんとするは反逆者とみなし、そこに在る竜の餌としてくれよう!!』


 と、怒号が響いた。


「へ、陛下だ!」

「陛下が――、いや、でも、ヒュッケン様が――」

「どうすればいいのだ!?」


 兵士たちに一瞬動揺が走り、行き足が止まった。が、


修道僧モンクたちよ! お前たちまで止まる必要はないだろう! 国王を確保するんだ!」

ヒュッケンの声が響く。


 その光景に一瞬行き足が止まった修道僧モンクたちもヒュッケンの言葉で正気を取り戻し、再び前進姿勢に入る。どうやらこの灰色ローブの者たちだけは、ヒュッケンの配下の者たちのようだ。


「ヒュッケン・ジンザ!! 進退窮まるとはこのことだな! 今お前は陛下に対して刃を向けておる。これはまさしく反逆罪であるぞ!?」


と、声高に叫んだのは、国家魔術院院長のハーランド・ウォレルだった。


「陛下、ご命令を!」

 そう言ったハーランドに対し、レイバン国王は頷くと、ついに王令を下す。

「我が兵たちよ! それらラーゼンフォウルにくみする者どもは我が国に対する侵略者である! 抵抗するものは滅せよ! そうでないものは捕らえよ! かかれぃ!」


 兵士たちは各々に、

「へ、陛下が王令を!?」

「王令だ!」

「おお! 王令が下ったぞ!」

と声を上げ、剣を高々と掲げた。


「さあ行くぞ!」

「ああ、あの修道僧どもを捕らえるのだ!」


 兵士の中から「誰か」が叫んだ。その瞬間、兵士たちは前を行く修道僧たちに襲い掛かった。


「ヒュッケン・ジンザ! これまでだ! おとなしく縄に着くかここで蹂躙されるか選べ!」

と言うハーランド院長の周囲にはすでに術式発動の準備を終え、いつでも発現可能態勢に入っている魔術師が十数名並んで構えている。


「ぬぅぅ! ハーランドめ! せめてお前だけでも!!」

ヒュッケンはそう言うと、ハーランド院長に向かって一気に間合いを詰め、眼前に到達した。

 ――速い! 

 武闘修道僧モンクのその瞬発力は目を見張る。魔術師との相性が最悪なのはこの体術とその速度ゆえだ。

「くはははは! ハーランドォ!! お前だけでもあの世へつれてってやるぅ!」

ヒュッケンはその渾身の一撃を拳に乗せて、ハーランド院長に襲い掛かった。

 すでに正気を失っているため、おそらくのところ防御には全く意識を振ってはいないだろう。その分、速さが増している。


 だが、ハーランド以下、魔術師たちも負けてはいない。すでに術式発動の準備は終わっているのだ――。武闘修道僧モンク魔術師キャスターに対して有利なのは、魔術師が術式を錬成する時間を取れない程の速度で一瞬で間合いに入るから、である。だが、すでに発動態勢に入っている魔術師となら話は別だ。その場合は単純に、「攻撃有効射程」の差で決まる。


「「火炎フレイム!!」」


 周囲の魔術師が一斉に術式を発動した。


 ヒュッケンの拳がハーランド院長の顔面に届くころには、ヒュッケンの体は完全な炭と化していた。

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