第九十七話 やっぱり超魔怪将軍ブリザードドラゴンの能力というか知能も相当に下がっているな。前の世界のあいつだったら流石にここまで馬鹿じゃない
超魔怪将軍ブリザードドラゴンを倒した場所に運よくマジックバッグが残っており、中を確認したらランタンの様な形の魔呪具や再生魔怪種召喚用の石の様な物が入っていた。
ただ、これだけだと超魔怪将軍ブリザードドラゴンを倒した証拠としては説得力に欠けるか?
【現実逃避は良いですが、この惨状だけでも討伐の証拠になるんじゃないですか?】
超魔怪将軍ブリザードドラゴンを倒した代償というか、ダークライジング、クラッシュを使った影響でこの場所に半径百メートルくらいで深さが最大五メートルほどの巨大なクレーターが出来た。
氣と神力を使っている技なのでこの辺りの禍々しい魔素を浄化してくれる気はするが、たぶん雨が降ったらこのまま大きな水たまりというか池になるよな。
確かに証拠にはなるかもしれないが、なにかこう、もっと物証が欲しいというか……。
【よかったですよね。この世界ですと始末書は書かなくていいですよ】
クラッシュ系やブレイク系は元の世界では使い所の難しい技だったからな。
避難が完了した場所でもクラッシュ系とかブレイク系の技は使うと、大抵後で始末書を書かないといけない事になる。
魔怪種を倒したんだからいいんじゃないかと思うが、周りの建造物などを破壊するとやはり方々から苦情が来るらしい。あのまま魔怪種が暴れてたらどっちにしろ破壊されていたわけで、最小限の被害にとどめる事が多かったんだから見逃してくれてもいいんじゃないのか?
【破壊しても始末書を書く以外は何もありませんでしたよね?】
あれ書くの面倒なんだよ。
だいたい、敵との戦闘時に周りの設備に気を使う余裕があると思うか? それにその時の状況を覚えてる奴がどの程度いるか……。
【ほとんどブレスの記録をそのまま書きだしただけでしたね。一番最後に今後はこのような事ないように気を付けます的な文を足して終わりです】
そういえば今回の戦闘も記録されているよな?
超魔怪将軍ブリザードドラゴン討伐の証拠というか、この魔呪具以外に他にも何か残っていればいんだが……。
【渡ってくる時に使ったきた氷の中にまだ何か残っている可能性があります】
ああ、あれか。
早く探さないと暗くなるし氷が溶けて陳んでも困る。
とっととあそこに行って探してみるか……。
◇◇◇
超魔怪将軍ブリザードドラゴンが使ったというか作ったでかい流氷。
狙ってここに着岸したというより、これ考え無しに進んでたら座礁したんじゃないのか?
「やっぱり超魔怪将軍ブリザードドラゴンの能力というか知能も相当に下がっているな。前の世界のあいつだったら流石にここまで馬鹿じゃない」
流氷内部をくりぬいて基地みたいにしているのは流石だが、造りはかなり雑だ。
あいつが控えていたと思われる部屋はでかくて豪華だが、汎用戦闘種たちが控えていたと思われる部屋はそれよりも狭く、床もガタガタだし壁なんかもかなりいい加減に仕上げてある、というか、これ途中で仕上げるのやめてるだろ?
超魔怪将軍ブリザードドラゴンがいた部屋には小さ目の家具なんかも持ち込まれているが、これ戦闘後に回収する予定だったのか?
【収納可能な物はブレスのアイテムボックス内に収納しました。もう撤退してもよいのでは?】
そうだな。この流氷の基地もやがて解けて消えるだろうが、割と辺りに影響が出そうな気はする。
外に出た後で破壊しておくか。これだけでかい流氷だとこの辺りの海水温が下がらないかが一番心配だけど、これ一つでどこまで下がるか分からないし水温が下がる場所も限定的だろうが。
「という訳で破壊完了。ダークライジングスラッシュで細切れにしたからすぐ溶けるだろう」
【お疲れ様でした。このまま城塞都市トリーニに戻りますか?】
もう少しで日が暮れるが、流石に今から戻らないと今日中に着かないからな。
センサー類と衝突防止システムの作動は任せたぞ。
【全力で飛ばしても小動物との接触すら予測して見せます】
それは過去に散々世話になったから知ってる。ずいぶん助かったけどここは異世界だ、地中から鼠系とか兎系がひょっこり顔を出す事もあるから気を付けてくれよ。
【了解です。基本は全方位ですが衝突予知システムで対応可能ですので】
この辺りは元々割とおかしい能力だったよな。
さて、全力で城塞都市トリーニに戻りますかね。
今日の生産分は仕方が無いとして、明日以降はまた化粧水の生産に入らないとな。この辺りも何とかしないと、死ぬまで化粧水を生産し続けなけりゃいけない。
俺以外でも生産できるシステムを考えないといけないな。
◇◇◇
城塞都市トリーニに戻ったころにはすでに真夜中で、門番を説得して街の中に入るのに苦労したぜ。
日没後は誰も通さないように城門を閉じるし、これを開けるのは本来明日の朝だ。
なるべく音を響かせないようにダークライジングサンダーを走らせたが、所々の家で明かりがついたから何事かと騒がれたんだろうな。これだけ静かな街中でバイクを走らせればそりゃ迷惑だろうて。今後は気を付けないとな。
【いつもの始末書の内容ですか!! 音に関しては普通のバイクよりも遥かに静かですし、この程度の音で起きるのは眠りが浅いんじゃないですか?】
流石にこの位暑いと寝苦しいだろうしな……。
寝苦しいか、アルバート子爵家をもうけさせることになるけど、氷嚢でも導入してみるか。確かまだこの世界には普及していない筈だし、湯たんぽも一緒に売れば魔導エアコンを購入できない家庭でも何とか夜を少しは快適に過ごせるようになる。
しかし、こうして夜の街を走ってみてわかったが、本当に日没後の街って真っ暗だ。
夏の夜なので気持ちはいいが、ここまで暗いと昔から日没後の活動を制限しているのが分かるな。
「予算はかかるが大通りだけでも街灯を整備するか? 今の魔導灯をどの位導入するかにもよるが、この広い城塞都市トリーニに俺側の領地の大通りだけでも、必要な魔導灯の数は百や二百の数じゃ足りないだろうが」
今は夏だからいいが、日没の早い冬なんかは油断するとすぐに真っ暗になる。
この街には犯罪者はほとんどいないが、それでも全然いない訳じゃないからな。
夜が明るければ、夏祭りとか色々イベントも導入できるし、領民の息抜きの機械も増える。
電気の導入と同時に検討してみる必要はあるか。
これだけ大きな領地に僅か二万人の領民、だが俺には彼らの生活を豊かにするために尽力する義務がある。
電気の導入には色々問題もあるが、実験的に限定地区だけ先行導入してみるのもいいかもしれないな。導入するのは良い事だと思うが、元の世界でもあった問題は盗電対策と料金などか。その辺りも各家庭に電気を引く場合はいろいろと考えておかないといけないな。
読んでいただきましてありがとうございます。
楽しんでいただければ幸いです。
誤字などの報告も受け付けていますので、よろしくお願いします。




