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第三話 これは竹なのか、それとも葦なのか? 少し曲げてみたが強度は十分、これだけ強けりゃ色々使い道があるぞ!!

本日三話目です。

続きはまた明日の五時に投稿しますので、読んでいただければ幸いです。




 寒村の生活にもそろそろ慣れてきた……。といっても、まだひと月も経っちゃいないけどな。


 この村の周りにある動植物は誰も管理していないらしく、誰が何をいくら持って行っても自由って事だ。といっても、この荒れ地の少し先にある山の岩場……。そこには岩塩が無数に露出してるんだが、それを持ってくる時だけ村長の許可がいるらしい。


 その決まりを知らない頃に大き目の塊をいくつか拾ったんだが、村長に話したところ事後報告でもいいっぽい。流石にこんな僻地で暮らすにゃ塩は生命線だしな……。


 俺がこの村の周辺で行っている日課。それはこの辺りに存在する動植物などのより詳しい調査、それと採集だ。使えそうなものはとりあえず持ち帰り、家でいろいろと加工などを試している。


「これは竹なのか、それとも葦なのか? 少し曲げてみたが強度は十分、これだけ強けりゃ色々と使い道があるぞ!!」


 この村の東側に大き目の川があるんだが、その川の近くを散策してたら竹に近い太さの葦が群生していた。竹と言っても孟宗竹じゃなくて矢竹に近い細長い品種だ。


 しかもそれは一本や二本なんて数じゃない。川の近くに信じられない範囲で自生している。


「生えてる範囲が尋常じゃないし、これだけあればいろいろ作れるじゃねえか。こんなお宝をなんで今まで放置してるんだよ!!」


 ホント、これがあればいくらでも矢を量産できるし、これを乾燥させて加工すればいろいろ作れるだろ?


 あの村でこれの加工品なんて見た事が無いし、どこかで乾燥させてるとすりゃ何度か目にする筈だからな。


 なんでこんなに便利な物を手付かずで放置してんだ? 別にこの辺りに危険な生物はいないみたいだが……。


鋼蔓(はがねつる)は見つけてあるし、本当にこの荒れ地は希少な素材の宝庫というか宝の山だぞ」


 知らない人が見れば鋼蔓(はがねつる)なんて、ただの蔓植物の一種に過ぎないからな。蔓芋もそうだが、蔓植物の種類や名前をいちいち全部覚えちゃいないだろ。こうしてみてもかなり良く見ないと判別なんて無理だしな。


 矢竹に近い葦だが、このくらい細けりゃ干して乾かす時間も短くていいだろう。加工した鋼蔓(はがねつる)の紐で結えば、籠にもできるし罠にもできる。簾っぽいものを作るのも楽だろう。


 とりあえずだがこのまま採取していくつかは加工しちまうか? 魚を捕る為の罠作りだったらそこまで慎重にならないでもいいだろうし。


「問題はこの川で採れる魚が食えるかどうかだ……。毒持ちとかわかんないしな」


 そこまで毒持ちの魚はいないと思いたいが、寄生虫とか他の危険性もある。


 ……とりあえず村長の所に持って行って食えるかどうか確認するか。話してみた限りじゃ、昔は釣りをして魚なんかを食ってた事もあるみたいだし。


 いきなり俺が食う必要は無いだろう。流石に川にいる貝とかは寄生虫が怖いから食わないが……。


「目ぼしいものは採集したし、あとはいつも通り山鶏(やまどり)でも狩って帰るか」


 ホントにいくらでもいるんだよな、山鶏(やまどり)


 群れで襲われると危険って言われてるけど同時に五羽程度までだったら何とでもなるし、そこまで大きな群れは流石に見た事が無い。


「ん? この辺りじゃ初めて見る獣だな……。確か角豚だったか」


 角豚は荒れ地にも生息する小型の豚で、残念ながらこの辺りの生態系だと結構下の方に属する。


 山鶏(やまどり)辺りでもこいつらを襲って食うしな……。豚の一種なのにネズミ並みに繁殖力が凄まじいので、大き目の街なんかだと家畜として重宝されてるんだよな。


「割と旨いとはいえ毎日鶏肉ばかりだと流石に飽きる。ちょうど豚肉が欲しかったところだ」


 食いきれない時はマジックバックに仕舞やいいし、煙で燻して燻製にしてもいい。


 マジックバックがあっても万能じゃないし、せいぜい数ヶ月保存が可能なだけだ。


 俺一人が食っていく分にゃ十分だが、この村を丸抱えする場合数十人を最低でも数ヶ月食わせるだけの量が必要になる。その時はマジックバックだけに保存する訳にもいかねえし、燻製にでもして保存のきく状態にしなきゃいけないからな。


「お前に恨みはないが、食料の充実の為に死んで貰うぜ」


 茶豚鼠(スロマ)とまではいわないが、角豚はこの荒れ地では狩られるだけの存在のくせに意外に鈍く遅い。茶豚鼠(スロマ)は荒れ地でも相変わらず狩られる側なんだが……。


 クロスボウの矢が角豚の頭を貫通し、あっさりと勝負はついた。こいつは小さいから血抜きも解体も楽でいい。 


「豚肉を食うも久しぶりだな。記憶を取り戻してからは米も食いたいと思っちゃいるんだが」


 米はトリーニの西側を支配するロドウィック子爵領で作られているので入手は可能だ。


 この辺りでは主食の麦に比べて圧倒的に人気が無いので値段も比較的安く、米を売ってるというか扱っている店さえ見つかればなんとかなる。とはいえ、米を入手するにはいったん城塞都市トリーニに戻る必要があるからそう簡単にはいかねぇか。


「米の入手はこの村である程度金になりそうなものを入手して、その取引の為にトリーニに戻る時だな。メインの()()の外にも小銭稼ぎのネタくらい用意しとかなきゃ駄目だ」


 この辺りの売り物となると、白毛長兎(ホワイトシルク)の毛皮が最有力候補だな。鋼蔓(はがねつる)で作った紐や縄が余れば、あれもいい値で売れる。ただ、実用的な鋼蔓(はがねつる)の縄は売らずに自分で使いたい。必要になった時に買うと高いからな。


 後は野草や薬草関係か。この辺りは買い取る商会がかなり限定されるし、下手するとかなり安く買いたたかれるから注意が必要だ。一番手っ取り早いのは教会に持っていくって手だが、あまりあそこには頼りたくねぇ。


 今は生えていないが時期になれば入手できるものもあるし、一年中採取可能な物もある。面倒だが根気よく集めるしかねぇか。




読んでいただきましてありがとうございます。

楽しんでいただければ幸いです。

誤字などの報告も受け付けていますので、よろしくお願いします。

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