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第十四話 馬が必要なんだが……、二頭欲しい




 馬屋、と言っても売っているのは馬だけじゃなく、人が乗れるサイズのデカイ鳥も扱っている。また、一度誰かに売った馬などの買取も行っているそうだ。ただ、野生種に関してはここでは買い取りされていないし、街への持ち込みも制限されている。出どころの怪しい生き物なんて入れちゃくれないのは当たり前だが。


 あの鳥に乗るのは体が小さい子供は良いんだが、大人になるときついんだよな。鳥の方も嫌がるし。


 他には荷車を引かせるためのトカゲなんかも売ってたりするし、そのトカゲに好んで乗る奴もいるらしい。暑い日なんかは鱗がひんやりして気持ちいいんだとか……。逆に冬になるとトカゲどもは役に立たないらしい。だからこんなにデカくても割と安い値段で売られてるって訳だ。


「馬が必要なんだが……、二頭欲しい」


「そこの二頭がお勧めだ、馬具付きで一万スタシェルだぞ」


 確かに良さそうな馬具がつけられちゃいるが、その陰に隠れてるのは傷跡か? 魔法とか薬で多少は治るが、ここまで来ると走らせるのにも影響があるだろう。


 俺に治癒か何かの魔法が使えれば、こういった馬を買うのがいいんだろうがな。


「……まともに走る奴がいい。その馬、割と大き目の怪我もしているし足も悪いだろ?」


「いや~、気に入らなかったか。となるとあの辺りなんだが」


「こいつと、こいつだ」


「二頭買うんだったら、雄雌は合わせた方がいいぞ。旅先でえらい事になる」


 馬同士で気が合うと勝手に子供作ったりするからな。


 今回はそれも目的の一つなんだが。


「近場に行くだけなんで大丈夫だ。子馬が増えたら買い取って貰えるか?」


「良さそうな馬だったらな。その二頭だと馬具込みで合計で二万スタシェルだ」


「金貨二枚。間違いないな?」


「事もなくこんなに奇麗な金貨を出せるなんて、あんたどこかの貴族の人間か? 最初は騙して悪かった」


「よくある事さ。それじゃあ、この二頭を連れていくぜ」


 馬と言ってもこの世界ではピンからキリまでいる。いろんな薬や魔道具で強化しまくった一応馬の姿はしているが、ほぼ別の生き物までいるしな。


 どうやらアリスの方の買い物はまだ時間がかかっているみたいだな。一万スタシェルの服だ、そう簡単には決められないだろう。


◇◇◇


「久しぶりだな。馬を買える程にはなったのか」


 路地裏から声が聞こえた。


 しかし、この声は俺以外に聞こえちゃいないし、そこに誰かがいるのも気が付く奴はいないだろう。


 振り返ってもその姿を確認することも難しいだろうしな。


「……まさかそっちから声をかけてくれるとはね。何とか少しだけ稼げるようになったのさ」


 今俺に話しかけてきているのは、レナード子爵家の支配地区にある盗賊ギルドの一員だ。


 昔ちょっとしたことがあって俺の事を気に入ってくれたらしく、街に顔を出すと何となくこうして接触してくる。その姿を見た事は大昔に一度きりだけどな。


「どんな商売かは聞かないが、稼げてるようで結構な事だ。懐に余裕があるんだったら、()()()()をいつでも受けるぞ」


「そいつは後でもいいさ。先に調べて貰いたい事がある。一年前、ロドウィック子爵家の領内で魔導具職人の夫婦が何者かに殺された。その犯人と背後関係の特定だ」


「自分の依頼を後回しにしてか? ……おそらくうちで調べられる案件だな」


 という事は、ここの盗賊ギルドは無関係って事か。


 もし万が一、こいつらが関わっていたら【他をあたれ】と冷たく言い放つらしいんでな。


「現状、動機として考えられるのは、その夫婦が持つ魔導具の設計図の強奪、そしてそれを自分たちの開発として登録する事だと思うんだが……。その辺りの流れまでできれば頼みたい」


「高いぞ。あの時とは違う」


「わかってるさ、俺もあの時みたいなガキじゃねえ。……前金は金貨十枚、十万スタシェルでどうだ?」


 皮袋に入れた金貨十枚を後ろ手で差し出す。


 いつ取られたかわからないほどの速さでそれは回収され、わずかに中身を確認する音が聞こえた。金貨を音もたてずに確認するってどんな技術だ。


「いいのか? これだけあれば、例の依頼には十分だが?」


「いいのさ。あの依頼はそのうち何とかするし、その為にいろいろ動いちゃいる。今はその依頼が優先されるだけだ」


「少し大人になったと思えば、中身はあの時と同じか……。この情報、いつまでに必要だ?」


「春先にもう一度この街に来る予定だ。できればその時までに……」


 この世界の暦は一年十三ヶ月、ひと月二十八日四週、一日二十四時間だ。


 今は十月で、来年の春という事は四ヶ月から五ヶ月後になる。


「二月か三月だな。了解した」


「……気配が消えたか。本当に恐ろしい連中だ」


 表向きは盗賊ギルドと呼ばれているが、半分は暗殺者ギルドで間違いない。


 依頼料が高額だから滅多に殺しまで頼む奴はいないが、ライバルの商会の黒い噂を調べさせたりする連中はいるみたいだな。


 金さえ払えば例のマジックバッグガス爆弾なんかも引き受けてくれるらしい。妨害程度にそこまで金を出すんだったら、別の方法もあるだろうに……。


◇◇◇


 俺が依頼を済ませてたっぷり一時間後、ようやくアリスが姿を現した。


 ちゃんと考えて動きやすい服にしたみたいだな。流石に野盗には出会わないだろうが、何かあった時は動きやすい恰好の方がいい。


「お待たせ。普段着はおまけしてくれて四着買えたよ」


「すまない、手間をかけたな。これが手に入った馬だ。こいつらを使えば今日中に何とか戻れるだろ」


「いい馬ね……。この馬を使えば、今日中につける場所なの?」


「ああ。すぐに城門を抜けるぞ。街で暴れる盗人の数は減ったが、長居をしたい場所じゃない」


 アリスは意外に乗馬が上手いな。


 このペースだったら楽勝で今日中に村につけそうだ。


 問題はアリスの住む家だが、最近移住者が増えたおかげで空き家が結構埋まっているのが問題だな。物見櫓を作る際に結構解体したのもデカいが……。


 俺の忍び込んだ家は広いし、家を建てるまでの間だったら住まわせても問題ないか。




読んでいただきましてありがとうございます。

楽しんでいただければ幸いです。

誤字などの報告も受け付けていますので、よろしくお願いします。

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