八話
「恐らく下級の調封士の者かと。調封士はその力が強力な程貴重で尊い存在。国の宝に等しく、もし、下級の調封士が上級の調封士に擦り傷でも付けたら良くて資格はく奪、悪ければ......」
余りに不可解な光景に困惑していると翠が耳打ちで教えてくれる。
「そういう事ですか―――翠さん。ボールを拾ってください」
「かしこまりました」
車椅子の近くにボールを拾い僕に渡す。それを受け取ると、ついてもらい頭を下げる親子の前に行く。
「坊や、はい」
優しく話しかけ、ボールを渡す。母親は顔を見上げ、子供の頭から手を放す。そして、子供はボールを受け取った。
「あ、ありがとうございます......」
「人の多い所でボールで遊んではダメだよ。ケガをしてしまう人がいるかもしれないからね?」
「はい。分かりました」
「お母さん。僕は気にしておりませんのでどうか子供を叱らないでやって下さい。―――では」
子供の頭に手を置き優しくなでると、そのまま、翠に視線を飛ばし、外に向かった。背中からは先ほどより大きな声で感謝の言葉が聞こえてくる。
黒服の一人が開いた扉を通り、前後をごついSUV数台に挟まれた真ん中の外車に乗り込んだ。表にはいつの間にか先回りしていた院長と医者、そして他の医者数人にナースまでもが表で深々とお辞儀をし、僕を見送った。
流石にやり過ぎだろ。と思いつつ、窓を開け笑顔で手を振る。
「少し、手を込み過ぎではないですか」
「無理もありません。先ほども申しましたが、調封士は力が強い者が尊ばれ、敬われ、労わられます。それが、四族の者となれば、あの対応は普通です」
「そう、なんですか......」
「予定通り、ギルドへ。―――そうだ、硝斉様の所へ」
「硝斉様? とは誰なのですか?」
「伝え遅れてしまい申し訳ございません。硝斉様とはギルド所属の現人神様です。これから、その方に絢瀬様の権能の性質を視て頂きます」
「現人神?」
「現人神とは特級の轟神を討伐し、調封に成功し、その上で適合した者をギルドから現人神と認定され、どの階級であろうと特級調封士として自動的に格上げされます。―――絢瀬様も先日、見事特級轟神『国絨』を調封なされましたので、特級調封士となり、同時に現人神となりました。」
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