七話
「あの、外の人たちは?」
「私と同じ、刀仙の一族のモノです」
「僕なんかの為にそんな人数を......」
否定する様に小さく首を横に振る翠。
「貴方様は刀仙の当主。景虎様の子供となったのです。これでも、余り大勢で行くと悪目立ちしてしまうと当主様が減らしましたので通常なら後三倍程の護衛が付くとお考え下さい」
ここから見えた黒服は四人。その三倍......十二人。そんな数に囲まれて移動しなければいけないのか。
早速、気が滅入って来た。
顔には出さす、心の中で溜め息を吐く。そうこうしている内に扉を叩く音が聞こえ、翠が開くとそこには車椅子を付いた黒服の姿が見えた。黒服から車椅子を受け取ると、此方に付いてくる。
「失礼します」
「え? きゃっ!」
足を床に付けベッドに腰を下ろしている僕は、車椅子に座ろうするが、その前に翠が背中と膝裏に手を通し、持ち上げた。
そのまま、まるで貴重品を運ぶように車椅子に座らせる。
「申し訳ございません。何かご不快になるような事を致しましたでしょうか? もし、そうなら遠慮せずに申し上げて下さい。別のモノを世話係として仕えさせますので」
「いいえ。別に不快なんて。唯、少しびっくりしただけですよ」
「そうですか。―――冷えると行けませんのでこれを」
手に持っていた見るからに高そうなブランケットを膝に乗せ、マフラーを僕の首に巻くと机の上にあった書類の入ったファイルを翠に取って貰い、病院の外へと進むのだった。
「お嬢様が病室から移動なされる。車の用意を」
黒服の一人が袖を口元によせ、連絡を取っているのを尻目に翠に押してもらい外に出ると、髭を生やした小太りの男性とベテラン雰囲気を漂わせる初老の男性が腰を曲げていた。
恰好から見て院長と医者か?
「あのこれは?」
後ろを振り向き、誰にも聞こえないように小さな声で車椅子をついている翠に話しかけた。
「ここは刀仙家の分家が運営する病院でございます」
「ああ。そう言う事ですか。―――どうも、お世話になりました。この事は父に伝えさせて頂きます」
「「ありがとうございます!!!」」
院内に響き渡る程の大きな感謝の声と共に既に曲がっている腰をさらに曲げる医者達の見送りを受けながら廊下を進んで行く。
階段をおり、出入り口に通ずるエントランスホールを進んでいる時、ふとボールが此方に向かって飛んできた。そして、車椅子にぶつかり小さく跳ねて止まる。飛んできた方向を見ると、ボールを拾いに来ようとする子供と青い顔でこちらに向かってくる女性。
黒服が直ぐに防御の体制を取り、胸の中に手を伸ばす。
「この子は何てことをッ! 申し訳ございません! どうかご容赦下さい」
膝を付き、謝る女性。右手で子供の頭を掴み、同じように頭を下げさせながらエントランスに響く程の大声で謝る親子。
エントランスないにいるモノ全員が受付や医者も含めて、関わりのない事と言った感じにまるで親子なんて存在しないかのように動いているのだ。
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