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二話

「そうか。フラれたか!」


「パパ何で嬉しそうなの?」


「......」


 駅で父を拾い、外食をする為に行きつけの焼肉屋に向かっている最中。我が家では祝い事があると焼肉と決まっている。

 しかし、今の僕はとても焼肉なんか喉を通る自信がなかった。


「いやいや。我が子も失恋をする歳になったんだなと思ってな。―――そうか、だからお前はあんなに頑張っていたんだな。母さんとどうしたんだろうって話してたんだよ」


「そうね。私は薄々気付いてたけどね」


「絢瀬。一回くらいフラれたくらいでへこたれるんじゃないぞ」


「そうよ。私なんか何回お父さんをフったか覚えてないくらうフったんだから」


「五回までは覚えてるぞ?」


 そう言って二人は笑った。


「そう、なのかな......」


「あぁ、そうだ。友達になれたんだろ? ならお前の事が嫌いって訳じゃないんだ。本当にその子が好きなら何処がダメだったか聞いて直せ」


「私なんかお父さんのダメな所ノートに書いて渡したんだから」


「嘘ー。パパそれほんと?」


「あぁ。本当だとも。だからパパはママより字が上手いんだ」


 それから、両親と妹は笑った。


「......うん。分かった。もう少し頑張ってみる」


「そうだそのいきだ! お前は俺の息子なんだからしつこさを武器にその子をモノにしろ」


「その子彼女になったら家に連れて着なさい。外堀埋めて上げるから」


「母さんに掛かれば彼女どころかお嫁さんになりそうだな」


 父の言葉に家族全員が笑った。


 それから、僕は気を取り直してみんなでお疲れ会を楽しんだ。


 そうだ、チャンスは一回じゃない。何度だってアタックすればいいんだ。これからもっと頑張って卒業までには桜園さんを振り向かせて見せる。






「あそこの焼き肉は最高だな」


「やっぱり雰囲気が良いよね」


「そうだね」


 楽しんだ後の帰り道、酒を飲んで寝ている母の代わりに父が代わりに運転している。


「ママお酒強すぎ」


「母さんの家系はみんな酒豪だからきっとその血を引いてるんだろう」


「おじいちゃんもそうだったの?」


 叶の言葉に父は少し考え、話す。


「......そうだな。一度、おじいちゃんの家に行った時に見たが物凄く酒好きだったよ」


「そういえば。おじいちゃん家って行った事ないよね?」


「......そうだな。仕事がひと段落付いたら遭いに行こうかな」


「本当に?」


「ああ。本当だとも。―――お前。あのお守りは持ってるよな?」


「え? うん。持ってるけど」


 首から下げた青色のお守りを服の下から出し、父に見せる。

 これは、僕が生まれる時に祖父母が送ってくれたものらしい。僕と叶二人に人ずつ渡され、今も大事に持っている。


「絶対に肌身離さず持っておけ、それは―――危ない!!」


 僕が父と話していると横から強い衝撃が襲ってきた。


「キャーッ!!」


 車は数度回転し、民家の壁に激突する。

 

 車? トラック? 横転する前に一瞬だけ、黒い塊が此方に向かってくるのが見えた。あのシルエットは車でも、ましてやトラックでもなかった。

 その答えは直ぐに分かる。


「いっつ!......」


 上下逆さまになった状態で止まった車、前に座っていた両親はシートベルトのお陰で軽傷ですんだが後部座席に座っていた僕達は強く身体を打ってしまった。

 

「何が起こったの!?」


「分からん! 車か何かが突っ込んできた! 絢瀬! 叶は大丈夫か?」


 叶の方を見ると、右腕を抑えながら苦悶の表情を浮かべているのが見えた。右腕は紫色に腫れ上がり素人目から見ても大丈夫じゃないのが分かる。


「父さん。叶の腕が腫れてる! 折れてるかも!」


「クソッ! 取り敢えず外に出よう!」


 父の言葉に従い、叶を助けながら車の外に出ようとする。しかし、車の外、道路に居たそれと目が合ったような気がした。


「aaaaaaAAAaa」


「な、んだあれは......」


 マリモのような黒い塊。身体からは絶えず黒い霧のようなものが出ており、とてもこの世のものだとは思えない形状をしていた。


「はぁぁぁぁっ!!」


「GAaaaaaa!!」


 家の屋根から別の小さな影が黒いマリモに向かって飛び掛かっていくのが見えた。


「子供......か?」


 刀を持った少女が上から降って来たのだ。黒い塊から触手のようなものが現れ、少女に向かって伸ばす。しかし、彼女は紙一重の所で避け、或いは切り捨て、距離を詰めた。


「はぁ!」


「GAAAAAaaaa!!」


 一閃。

 少女の斬撃をまるで身体を薄くのばし、避ける。何度か攻防を変えながら戦いを交えた後に、何かを感じ取ったのか身体から無数の触手を出しながら、家の屋根に上り、屋根伝いに逃走する。その姿はまるでゲームで出て来るスライムのようで、これは何か悪い夢を見ているのだと思ってしまう程、突飛のないおかしな光景だった。しかし、身体中から伝わる痛みにより、しっかりとこれは現実なのだと思い知らされる。


(かんな)! 逃がすなよ! ―――ッ!? どうしてここに民間人が!? 美紗祢!」


「了解! ―――大丈夫ですか! 今、助けますから」


「指令! 此方琥珀隊。結界内に民間人を発見! 後衛隊を向かわせてください! ―――美沙祢! 後衛の奴らが到着するまで民間人の救助をしなさい。来たら引き継いで私達を追って!!」


「了解!」


「鉋! 逃がすなよ!」


 鉋と呼ばれる少女は小さく頷き、常人ならざる跳躍力で一瞬の内に屋根に飛び、そのまま、追いかけて行った。


 そこで、僕は意識を失う。


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