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十四話

「当主はどんな人?」


「当主様は厳格な方ではありますが、家族を大切にするお優しい方でもあります。緊張する必要はございませんよ」


「そ、そうかな」


「はい」


 女中の案内に従い進む事十分。襖の前で立ち止まる。


「ご当主様。絢瀬様をお連れ致しました」


「入れ」


「は。失礼致します」


 襖を開き、中に入っていく。そこは、ギルドのあの部屋程の広さ。座布団の上に座り、何やら書類を読んでいる。ウルフカットの白髪交じりの髪。彫の深い野性味ある顔つき、蓄えた髭を左手で遊びながら着物の上に紋付を羽織っている。


「ご苦労。二人とも下がって構わん」


「「はっ!!」」


 そのまま、居なくなる二人。暫く、紙の捲れる音だけが聞こえ。まるで校長室に一人で呼び出されたかのような緊張感が僕の身体を包んでいた。


「―――すまない。火急の仕事があってな。今、片付いたところだ」


「そうですか」


「まずは退院おめでとう。君の帰りを今か今かと待っていたぞ。私の名前は刀仙景虎。刀仙家の当主をしている」


「ありがとうございます。私は刀仙絢瀬でございます」


 笑顔で大きくもなく、小さくもないハッキリとした声で返事をする。


「さっそくだが、刀仙の実情は知っているか?」


「いいえ。何も」


「......刀仙は元々四族の中で戦闘に秀でた一族。その為、四族の中でも最も地位は高く、影響力も絶大だ。しかし、それは強力な性質権能を有しており、親から子へ、その子はまた子供へと受け継いでゆき遺伝により、性質を変化させより強力な権能を発現させ続けていたからであり、強力な調封士を輩出し続けてきた結果なのだ」


 子供は親の性質権能を受け継ぐ事があり、遺伝により発現した権能は性質が変化し、より強力な力へと昇華される、ギルドマスターから貰った資料にそんな事が書かれていた。

 なるほど、翠の言っていた体裁とはそういうことか。


「―――上手く受け継ぐ事が出来なかったのですか?」


「うむ。私には子供が二人いるがどちらも私の権能を引き継ぐ事は出来なかった。かと言って、身体の弱い私の妻に「もう一人子供を作れ」とは言えぬ。だからといって新たに妻を迎えるのも私の意に反する。そんな時に刀仙の血を継ぐ者が国絨を倒したと知らせが入った。―――ハッキリと言おう。君の権能が目当てで君を迎え入れた」


「そう、なのですか......」


「だからと言って、それだけの為に養子として引き入れた訳ではない。私の子供になった以上、本当の子供の様に愛し、守ろうと約束しよう。だから、どうか刀仙の未来を繋いでほしい」


「......妹は。叶はどうなるのですか?」


「君が私の子供として生きていくのなら。私は君の妹君に何不自由ない生活を約束しよう。君が望むのなら世話役も付ける」


「......分かりました。貴方の子供として、刀仙の未来を造っていきます」


「そうか。礼を言う、絢瀬。君の気持もあるだろう。今、父と呼べとは言わん。だが、いつか私の事は父と呼んでくれないか?」


「かしこまりました。お父様」


 あっけにとられた顔をする景虎。腹の底から笑い。立ち上がると僕の頭を優しくなでた。


「肝の据わった強い子よ。翠! 話は終わった! 絢瀬の着替えを手伝てやれ。私は先に会場に向かう」


「かしこまりました」


「ではお父様。また、後ほど」


「急がんで良いからゆっくり着替えて来なさい」


 そう言って、部屋から出て行った。

 僕は何時の間にかドレスに着替えていた翠に案内されながら、自分の部屋に連れられそこで着替えを行った。


「......慣れない」


 綺麗に梱包された真っ白なドレス。それを、杖を付きながら着替え、今は姿見の前で翠に細かい所を手直しされている最中。花の刺繍が入っており、腰部には大きなリボンが施されている、動く度に長いスカート部分がヒラヒラと揺れているのが見える。


「こちらは桜ノ宮家からの絢瀬様へ退院祝いにと送られて来た物です。今回、身内の歓迎パーティーではありますが、四族やギルド、多方面の著名人が招待されており言わば絢瀬様のお披露目会の様なモノ。慣れぬドレスで息苦しいでしょうがこれも刀仙の為と思い辛抱して下さい」


 そう言いながらリボンを結び、皺がないか確認し、最後に大きなダイヤの嵌った首飾りを僕の首に掛けた。


「―――似合ってる?」


「はい。大変お似合いです」


 僅かに口角が上がる翠、それは作ったような笑いではなく自然に出た微笑みだった。


「ありがとう。じゃあ、行きましょうか」


「はい」

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