十二話
そう言いながら立ち上がる明美と硝斉。広い所へ移動した。
「私と翠さんは退室致します。終わりましたら声をかけて下さい」
「絢瀬様。何かございましたら直ぐにお呼びください」
「ありがとう」
二人は扉を開き外に出て行ってしまった。
「では絢瀬様。此方へ」
「はい」
「凌さんは私達の中間の所へ」
「はい!」
僕と硝斉。その両方が見える様に間に立っている凌。
一体、何が始まるのか息を飲みその時を待った。
「凌さん。契約内容の確認を」
「はい! 対象者は宮本硝斉様、刀仙絢瀬様。内容は刀仙絢瀬様の性質権能の鑑定。尚、宮本硝斉様は鑑定で判明した如何なる情報も刀仙絢瀬様以外の第三者に開示する事を禁じます。もし、違反罰則は即死。報酬は前金で一億円。硝斉様」
「はい。既に受け取っております」
「では、お二人手を此方に」
言われるがまま、片手を凌に伸ばす。それを、二人の手を掴み、集中した面持ちで何やら行っている。
「っ!?」
そして、凌の腕から緑色に光る鎖が現れ、僕達の腕に巻き付いてくるのが分かる。その鎖は徐々に上に上がっていき、肩まで巻き付いた所で僕達の腕を締め上げ、そのまま光の粒となって消えて行った。
「契約は正常に行われました。それでは、私は失礼いたします」
驚いている僕を置いて、そのまま凌は外へと言ってしまった。
「―――では、今度は私が......直ぐに終わりますので、どうか、身体の力を抜いて気を楽にしてください」
「分かりました」
「さぁ、目を閉じて」
「......」
言われるがままに目を閉じる。
「少し、頭に痛みが走ります。正常な現象ですので、どうか我慢を」
「はい.....」
バチッ!!
「っ!!」
言われた通り、鋭い痛みが走った。それと同時に、まるで霧が晴れたかのように、自身の性質権能の実態が明確に判明していく。どれを、どうしたら良いのか。どのような力でどこまで、出来るのか。力の使い方から、今、自身が行える限界値まで。その全てが一瞬の内に判明したのだ。
絶大な能力を得てどうしようもなく湧き上がる高揚。顔の筋肉を固定し、必死に笑みを押し殺す。
今、僕が出そうとしている笑みは微笑みとは程遠いどす黒い気持ちが含まれた、見るに堪えない笑顔。そんなものを今ここで出すわけにはいかない。今は、我慢しなければ。
「......これは、何とも」
「もう、宜しいでしょうか」
「............あ、あぁ。もう、目を開けて結構。鑑定は終わりました」
暫く、放心したかのように動かなくなった硝斉。感覚でもう終わっている事を確信していた僕は、硝斉に話かけた。
「ふふ。ありがとうございます」
硝斉の驚愕の表情とは真逆の落ち着いた品のある笑顔を浮かべる。
「―――この事は契約通り、他言無用、墓場まで持って行く。君も例え家族であってもみだりに他言しないように」
「ご忠告ありがとうございます。そうします」
硝斉が扉を開き、外に居た翠と明美を中に引き入れる。それから、もう一度、ギルドについての説明を受けた。
「まず、これは会員証。これがあれば、依頼の発注や受注、ギルド内のあらゆるサービスを受けることが出来ます、絢瀬様は特級ですので、好待遇のサービスをさせて頂きますのでどうぞその際は遠慮なくご利用下さい。次に会員証の事ですが、貴方を証明するだけではなく貴方の信頼信用を確認する為の大切な者ですからどんな時も常に肌身離さずお持ちください。」
「分かりました」
「ギルドは基本的に、二十四時間、三百六十五日開いており、指定の建物からであればどの場所からでもギルドに入る事が出来ます。ですが、半径五十メートル内に轟神が存在する場合、扉は開きませんのでご注意ください。―――以上で説明を終わりますが、何か質問なのはございますか?」
「いいえ。大変良く分かりました」
「結構です。―――では、これが会員証です。これから、よろしくお願いいたします」
黒縁の会員証を受け取ると大事にポケットにしまう。
「いえいえ。此方こそよろしくお願いします。―――翠」
「はい」
翠が扉を開くと、車椅子を付きながら退室する。
「それでは、失礼致します」
扉の前に立っていた受付嬢に案内され、エントランスまで行き、今日はそのままギルドを後にした。
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