豆柴の空戸
18 豆柴の空戸
「こんにちは空戸です。コンコン・・・。耳の鋭い孤底さん。反応がないので、じゃあ、勝手に上がらしてもらいますよ。入ります」
玄関から、子犬みたいな不吉な言葉と声が響いてきた。
どう考えても。あいつだな。
他でもない。
空戸がやって来た。
「応接室で回れ」・・・空戸には効かない
「応接室にまわれ」孤底は怒鳴りながら、言った。
「わかりました。勝手にソファーに、腰かけます・・・あ、それと・・・」
「なんだ」
「コーヒーは、インスタントでいいですよ」空戸は笑って言う
図々しいやつだ。っと、言っても一応客人だからな。
それしても、
誰が、毎回コーヒーを、入れてやると、言った・・・?
まあ、仕方がない。と、インスタントコーヒーを、ツーカップ、用意した。それとジャーキー、小型犬用ささみだ。
コーヒーは
のどが焼けるくらい。
あついあついうちに、飲ませる。
豆柴には、そういうのがいい。
あらためて。豆柴とは空戸のこと。
一応、インスタントコーヒーをお盆にのせて、応接室に持っていく途中、半分くらいこぼした。カップは一つになった。すこし熱かった。すこしの誤算・・・。
「こんにちは、久しぶり、元気だったか?」一応、豆柴に対する孤底の礼だ。
「久しぶりでも無いですよ。迷い犬いるとかで、飼い主のところにつれていきました。ところで、冷房の設定温度もっと下げてもらっても、良いですか?ここに来る、途中で、また工事で、まだ新しいアスファルトの上を歩いて来て、熱くて熱くて。」空戸は、はあーはあーいっている。
「わたしには、関係がないように思えるが・・・」
「シャツが吸った汗をしぼれば、滝のようになります。よってんだ、まったく。」
「それも俺のせいじゃない」
「うちに滝はいらん。空戸でマイナスイオン。お前の家の庭で・・・肉汁の滝とでも、名を打って、ぜいぜい入館料をたんまり、取ってしこたま儲けるんだ。そしたらスパイ卒業だ。死んだことにしてやるよ、名簿も燃してやる。こっちからは、連絡はとれない。もう、うちに来なくていいな、良かったな」
「孤底さんにしては、考えが単純ですね」
「単純なものほど、怖いものはない。出口が一つくらいしか無いからな。まあ。どうでもいいが。」
「今日は一人か?自慢の恋人はどうした?静さんだったか・・・?」