その9 亜人類(オーク&エルフ)
「こないだエルフ級の美人おねーちゃんがいるっていう風俗行って来た。隣町の」
「おう、で、どうだった?」
「オークが出てきた。キングオーク」
「……」
「やっぱり噂を鵜呑みにするのって良くないな」
「そうだな……」
「そいやオークってさ」
「今度はそれか」
「だいたい雑魚みたいに沢山出てくるよな」
「まあ基本、十把一絡げみたいな雑魚モンスターだからな。豚野郎だし」
「あいつらなんであんなにいるんだろーな」
「まあ繁殖力が強いとか、よくいわれるよな。豚野郎だし」
「それにくわえて、なんか人間を敵視してる」
「まあ、してるな。人間も嫌ってるけど。ブヒブヒうるせえし。豚野郎だし」
「ドワーフとかエルフとか、半獣人なんかは別に敵対はしてないのに、なんであいつらは敵対してるのか」
「別にオークに限ったことじゃないが……ゴブリンとかコボルトとか、ほかにも敵対してる連中はいるだろ」
「我々は別に敵対を望んでるわけではないのだが、何故だ」
「知らんわ。オークに聞け。豚野郎に」
「古来、人が敵対するのは金とか権力とか領地とかそういうのだよな」
「そういうの多いな。あとは恨みつらみとか痴情のもつれとか」
「愛が行き過ぎて憎しみになるとかな」
「別にあいつらに愛されてるわけではないと思う。豚野郎だし」
「良く聞く話では、あいつらの居住地域に人間が開拓で入り込んで云々、てやつだが」
「あーよくある話な」
「エルフに聞いた話では、オークの奴らもエルフの居住地域へ攻め込んでくることがあるとかなんとか」
「あいつら不倶戴天の敵だからな。豚野郎だし」
「ドワーフとも仲が悪いらしいが、戦争はしてないよな」
「そりゃエルフは森、ドワーフは山や地下だからな。居住地も重ならないから特に直接的な争いにはなりにくかろうよ」
「なのにオークとは仲が悪いという」
「まあエルフって大抵、ナチュラルに相手怒らせるの上手そうだしな……特にデブキライだし。美的感覚として許せないって聞いた。ほら、デブいエルフって見たことないだろ」
「確かにないな……だがそれ聞くと、原因はエルフにあったんじゃないかって気がしないでもない。エルフは生きろ、ブタは死ねとか平気で言いそう」
「いや俺もな、エルフの連中の他種族見下し感はいかがなものかって常々思ってはいる。クソ野郎だな」
「じゃあやっぱり悪いのはエルフか」
「だからといってエルフが悪いとは限らんだろ。クソ野郎だけど」
「なら証拠を出せ」
「なんでエルフが原因と決め付ける。そうかもしれんが、そうでないかもしれんだろ。クソ野郎だけど」
「オークだって多くを望んだわけではないかもしれんぞ」
「そういうダジャレってエルフをイラッとさせるらしいぞ。『知的レベルが低い』って」
「俺はそういうちょっとしたなごみジョークを解さないエルフにイラッとするね。やっぱクソ野郎だな」
「お前エルフとオークとどっちが好きでどっちがキライなんだ。豚野郎かクソ野郎か」
「個人的にはクソ野郎エルフは話しても腹立つからキライだが、豚野郎オークは存在自体腹が立つ」
「両方キライなんかい」
「程度問題だ。エルフは見た目で得してるところもあるしな。黙って鑑賞するならエルフ一択だ。中にはあの『見下されるような目がたまらん』なんてクソ野郎以下の奴もいるぐらいだしな」
「それはいえるが、最後のは変態限定だな」
「例えば酒場にエルフで一番ブサイクなのとオークで一番美人の女がいたとして、お前はどっちに酌されるのがいい?」
「やっぱエルフかなあ。こないだ男のエルフ冒険者のいるパーティが話してたの聞いたんだが、そいつエルフの中ではブサイク扱いされるんで村を出てきたらしいんだが、正直他の人間冒険者なんかより遥かにイケメンだったな。酒場の女も言い寄ってきてたし。クソ野郎め」
「それくらい人間に対する見た目の訴求力が違うのだよ。人は見た目が九割」
「残り一割では逆転の望みは薄いか……クソ野郎め」
「まあエルフも大概高慢ちきで性格悪いが、オークも大概、強欲で自分勝手でブヒブヒうるせえしな。豚野郎だし」
「ブヒブヒ言うのは性格とは関係なかろう……だがまあ言いたいことはわかる。豚野郎だし」
「絶世の美人と、とてつもなく可愛いブタと比較するのは、比較のベクトルが違うからなー」
「横にいて、どっちがお得かってことだよな」
「ブタは太らせれば食えるけど、エルフは煮ても焼いても食えない連中ばっかりだけどな」
「オークも食わねえだろ」
「いざどっちか食わなきゃいかんってことになったら、俺は迷わずオーク食うね。豚だし」
「……俺もそうするな」
「エルフ食うなら別の意味で食いたい」
「それについてはオークを語りたくないな」
エルフもオークは語りたがらないのです。
オーク「言われなき誹謗中傷だ! 謝罪と賠償を要求するブヒ!」
エルフ「うるせえな焼き豚ぶつけんぞ豚野郎」