その8 魔法
「はぁ……今回も苦労したわ」
「だなー。とりあえず始末はしたけど、やっぱり魔導士一人ぐらい欲しいな」
「魔法戦士だけじゃ魔法が持たんわな」
「物理攻撃無効なアンデッド系は特になー」
「俺らも攻撃魔法使えりゃいいんだが……」
「魔法は魔法学院行って勉強せにゃいかんからな」
「あーダメ。そういうのダメ俺」
「勉強って聞いただけでお前な……魔法スキルって言い換えれば少しは取ろうって気にならんか」
「ならんよ。なったら戦士になんかなってねーし」
「そりゃそうか……俺も取りたいが、魔法学院で最低一年かかるとなると、金がな……」
「……そいやー魔法ってさ」
「魔法が?」
「魔法って名前、イメージ悪くね?」
「……いや別に」
「良く考えてみろよ。『魔の法』だぞ。使ったら地獄行く、みたいなそんな感じのだぞ。『死の宣告』みたいな感じじゃん?」
「なんで地獄行く前提なんだ。確かに『死の宣告』って魔法あるけどさ」
「だって意味的には、悪魔の力身につけた、みたいなそんなやつじゃん。絶対ワルい力だって。正義のヒーローの力じゃないって、デーモンとかデビールな奴の力だ」
「お前だってその魔法に散々世話になってんじゃん。治癒とか、役に立つ魔法いろいろあるだろ」
「そりゃそうだけどさ、今更ながらに呼称に悪意が入ってるんじゃないかと」
「別に悪意ではないだろ。翻訳の問題だろうが、定着してしまったもんは今更変えられんし」
「だけどやっぱりなんとのうブラックな名称で損してると思うから、もっとホワイトなイメージの名称を考えたい」
「例えば」
「例えば……魔じゃイメージ悪いから、神法とかよくね?」
「別に神が絡んでるわけじゃないのも多いだろ。宗教限定になるわ」
「むう……ならばハンドパワーはどうだ」
「邪悪さは減ったが胡散臭くなった。インチキ新興宗教臭くもなった。使うたびに法外な寄付とか求められそうだ。でなきゃ出演料」
「ぐぬぬ……それじゃ超自然的超越力法でいこう!」
「長い。魔法使いが超自然的超越力使いとか、長すぎる。名乗りにくいし舌噛む奴続出するわ」
「むむむ……ではマジカル頭脳パワーでどうだ!」
「クイズか。頭使うけど、怪我も治らんし呪いも解ける気がしない。解けるのは問題だけだ」
「……やっぱりブラックなイメージから離れなきゃいかんと思う」
「だったらどういうのがいいんだ」
「それをおまえも考えろ」
「他人任せだな……魔法、魔法……そういや魔法少女ってのがいたな」
「それだ! 魔少女法!」
「いかんいかん、さっきより格段にいかがわしいわ。明らかに胡散臭いやつじゃねーか」
「少女ってつけたところでなんとなくこうほわっと柔らかいイメージが」
「つかんつかん。むしろよけいヤバいイメージしか湧いてこんわ」
「じゃあ魔女法ならいいのか」
「よかねーよ。見つけ次第水責め火炙り的な、危険な悪法にしか聞こえんだろうが」
「文句ばっか言ってないでお前も考えろ」
「だから俺は魔法って名称に別に反対はしとらんのだが」
「おまえが魔法少女などと言い出すから話がややこしくなる」
「最初にややこしいこと言い出したのはお前だ」
「じゃあもう白魔法でいいよ」
「いいよじゃねえよ。だいたい白魔法なんて魔法の一区分じゃねーか。黒魔法使いならブラックなのか」
「ブラックだろ」
「色的な話をしてんじゃねーんだよ。お前の言ってるのはお前のイメージ的な話じゃないのか。
じゃあ青魔法は労働者用ブルーカラー魔法で白魔法は管理者用ホワイトカラー魔法なのか。赤魔法は混ぜるな危険的なアレか。紫魔法はお貴族様御用達か。黒魔法使いはそんなに劣悪な環境で酷使されとんのか」
「変なイチャモンつけるのはやめろ」
「誰が最初に言い出したと思っとるか」
「俺が言ってるのは魔法と言う名称自体の話であって、赤魔法だの白魔法だの色区分はどうでもいいし雇用環境を改善しろとも言っとらん」
「……」
「とにかく魔法の「魔」の部分が気に入らんのだ」
「……んじゃ『法』でいいじゃん」
「……ほう!」
「ダジャレで返すな」
「違う感心したんだ。法! 単純かつインパクトのある名称! それだよ、俺の求めていたのは!」
「……」
「お前天才だな!」
「お前はアホウだな」
アホウに魔法は使いこなせないのです。




