表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想漫才  作者: 木持河類
7/20

その7 スケルトン

「……肉が食いたい」

「しょうがねえだろ、今回は失敗だ。相手が多すぎた」

「まさかスケルトンにゾンビだけであんなにいるとはな……倒しきれなかった」

「おまえこないだゾンビ齧ってみたいっつってたじゃん。齧ってくりゃよかったのに」

「あいつら腐ってただろ……めちゃクサかったわ」

「だから発酵してるの探してさ。臭い発酵食とかあるらしいぞ」

「あの中にはいないだろさすがに」

「まあそう落ち込むな。今度は成功させて、肉屋で最高の熟成肉食おうぜ」

「熟成肉……やっぱり旨いのか?」

「値段が一番高い肉のさらに倍ぐらいするからな。倍以上旨くなかったら詐欺だ」

「値段倍よりも今は量が倍の方がいい」

「まあまあ、今日はしょうがねえ。せめて骨でもしゃぶるか?」

「犬じゃねえんだよ……そういやスケルトンってさ」

「スケルトンが?」

「骨じゃん」

「骨だな」

「あれどうやって動いてるか、気になんね?」

「そりゃまあ、気になるけど」

「定説だと、ネクロマンサーが魔術でどーたらこーたらで動くようにしてるとかいうけどさ」

「まあ、そうやって生み出した中でも一番弱いアンデッド扱いだな」

「実は骨浮かせて戦えるようにしてるって、魔法としてもすごくね?」

「まあ、確かにな、ゾンビみたいな肉のあるやつを動くようにするのと比べると、実は骨だけ宙に浮かせてってのはレベル高そうだよな」

「なのにスケルトンは最弱アンデッドレベルだ」

「そうだな。弱いよな」

「正直、あいつらの攻撃も大したことない。棒でブン殴ればバラけるぐらいだし。村人Aでも棒で粉砕できるレベル」

「まあな。だけど魔法でいくらでも復活もするけどな」

「弱いけど超しつこいタイプだな」

「男ならストーカー扱いされるな」

「女だってストーカーだよ」

「てか骨だけで男も女もなかろうがよ……考える脳もないんだし」

「やっぱ骨くっつけて動かすのにパワー使いすぎてるんじゃねーかな」

「多分そんなとこだろうよ。ゾンビやグールなら動かすだけだし、それに比べたら効率悪いってことか」

「じゃあやらなきゃいいのにな。魔力のムダだと思うわ」

「いや、肉ついてる死体より骨だけの方が圧倒的に数多いからな。数のスケールメリットはある」

「質よりも量か……アンデッドの使い方でネクロマンサーの思想がわかるな」

「どんな風にだ」

「スケルトンが多いのは、物量で一気に押すタイプ。ゾンビとか腐ってるのが多かったら……」

「多かったら?」

「発酵屋のこじらせた奴」

「まだそのネタ引っ張ってんのか」

「そこでちょっと考えてみた」

「急に話変わるな。まあ聞こう」

「まず、上位のアンデッドが動かしてるってパターン。これだと、操る奴の魔力や霊力で動かしてる」

「ふむふむ」

「だが、魔力なら解るが、霊力ってなんだ」

「……霊の力?」

「だからそれは何だと聞いている」

「それは俺が聞きたい」

「だから何だと思う?

 魔力は魔法のための力だ。これは解る。魔法研究やってる連中に聞けば、何日でも語ってくれるし、本も腐るほどある。

 だが霊力ってなんだ。霊の力? 祟る力か? それとも透けてる力?」

「いわれてみりゃあわかんねーな。こう、なんだろ、『死ぬ力』みたいな?」

「なんだそれ」

「生きる力、の逆みたいな」

「そんな力があるか。だからそもそも、霊ってなんだって話で」

「魂じゃないのか」

「魂ってなに」

「……なんだろ。霊?」

「そこへ戻るな」

「あれだよな、触れないし、透けてるし、それでもそこにいて、あっちは人間に取り憑いたりするし、そういう奴らの力か」

「ますますもって解らんわ」

「じゃあとりあえず霊力の話は横置いといて、スケルトンに戻ろう」

「そうするか。

 スケルトンのもう一つのケースは、あれはに肉が透けてるゾンビって可能性だ」

「は!?」

「それなら霊力とかいうのは関係なくても説明はつく。あれは骨のようで骨じゃない、肉が見えてないだけのゾンビだと」

「……そらまた大胆な仮説だな」

「ただ、この仮説にはちょっと検証が必要だ。

 まず、スケルトンを何体か捕獲して、連中に肉がついてるかどうかを確認しなきゃならんのだ」

「……また面倒なことを」

「だがだいたい、スケルトンが出てくると、戦士がブチ壊してとっちらかすし、魔法使いが炎で燃やすし、僧侶が昇天させるしで、検証なんかロクにできんのだ」

「しようとしたことあるのか」

「いや、ないけど」

「ないんかい」

「だがもしあれがスケルトンじゃなくて透けてるゾンビだったら――」

「だったら?」

「スケルトンじゃなくて透けゾンビに呼び名を改名せにゃなあ」

「下らんこと考えてねーでまず検証しろよ」

「透け透けスケルトンでもいい」

「……どっちにしろロクな名前に変わらんな」

「いっそ『透けルトン』でいいんじゃ」

「もうええわ。元戻っとるやないか」

「どうもアンデッドは話が元へ戻るな」

「アンデッドのせいじゃねえよ」

「ちらっとでも透けてるところが見えりゃなあ」

「透けてるんだったら見えないだろ」

「見えてたら透けてないし、透けてたら見えない……難しい連中だな」

「おまえの頭の方が難しいわ」



 見えるか、見えないか。

 微妙な絶対領域のアンデッド、それがスケルトン。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ