その18 不死の王
「……もうやだアンデッド」
「俺だってやりたかぁねえよ。さすがに霊体ばっかりじゃな……」
「僧侶頼むと高ぇしなぁ……」
「ナマグサ僧侶なんぞ何の役にも立たんわ。金ばっか取りやがって」
「しかもそういう奴に限ってアンデッドの気配に敏感なんだよな……近づこうともしやしねえ」
「君子でなくとも危うきには近寄らんのが正解だな」
「……そういやさ、アンデッドに『不死の王』ってのいるじゃん?」
「ああいるな。リッチともいうけど」
「それってどういう具合に生まれたんだろうな」
「どういう具合って……アンデッドの頂点にどう生まれた、もないもんだが……」
「どうやって王になったかって意味で」
「俺ネクロマンサーじゃないし……成り上がり? 不死の王に俺はなる!とか?」
「ネクロマンサーなら知ってるか?」
「多分。アンデッドマニアだし。そいつも目指してるんじゃね?」
「まあ俺は目指してるわけじゃないけどさ。あの名前には詐欺の疑いがある」
「詐欺って何だ」
「不死の王ったってさ、もう死んでる奴が不死とか言ってる時点で違うんじゃね?」
「そりゃまあ、言われてみれば……これ以上死にようがないからな」
「むしろ死の王って感じで」
「その方が違和感ないな」
「だけどそれはダメだって魔導士にいわれてな」
「なんで」
「死の王は神様になるからって」
「……ああ、冥界の」
「だけど不死の王って言い方はなんかしっくりこない」
「……なんか俺もそんな気がしてきた」
「そこで新たな称号をつけたらいいんじゃないかと」
「またこのパターンか……」
「『死の王』がダメなら、『死の王子』ならいいんじゃないか」
「王がダメなら王子って……多分そういう王家関係はダメじゃね? 王女とか女王とかもな」
「むう……ならば不死最強の男、とか!」
「女なら?」
「不死最強の女でも一向に構わんッ!」
「なんかそんな殴って最強、みたいな肉体派な連中じゃないよな。骨とか霊体だし」
「むむむ……なら『恐怖の大王』ならよかろうもん!」
「予言でもすんのか。そりゃまあ見てビビるには違いないが……なんか閻魔大王みたいじゃね? 地獄の王じゃん」
「現世に恐怖を撒き散らす的な意味でなら」
「やっぱり王とかいう社会的ステータスを付与するのがイカンのじゃないかと」
「ぐぬぬ……よし、なら『不死長』ならどうだ!」
「フェニックスが怒りそうなネーミングだな。それになんか中間管理職を感じさせる」
「確かに色々部下を使うけどさ……不死団長とか、不死会長ぐらいに格上げしたらどうだ」
「別に集団で営利活動はしとらんのと違うかな。多分単独行動だし、税金も払ってないし」
「ならもう不死様とかでいいんじゃね?」
「こいついきなり投げやがったな……様とかつけりゃいいってもんじゃねーぞ」
「女なら不死子ちゃんで」
「なんかノーライフキングが盗賊仲間のお姉ちゃんレベルに……」
「あんまりマヌケだと不死穴認定される」
「あの死んだ目は節穴そのもののような気もするけどな」
「不死の穴ってのがあって、そこでノーライフキング目指してアンデッドが日夜訓練してるとか」
「アンデッドってどう鍛えりゃいいんだ。リング上がってファイッ!とかはしねーと思うが」
「……不死力上げるとか?」
「女子力みたいに言ってんじゃねーよ。大体不死力ってなんだ」
「……死なない力? 死ぬ力?」
「死んでるっつーの。それ以上死なんっつーか」
「お、だったら世界最強の不死力持ちって称号でいんじゃね?」
「もうちょっとスッキリいかんかなー」
「じゃあ不死身の男とか? 女でもいいけど」
「それって普通、生きてる奴に言わね?」
「……死身の男?」
「もうただの死人だな」
「もうジミーでいいよ」
「個人名じゃねーかwww」
ノーライフキング・ジミー「え? 決定なの?」




