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幻想漫才  作者: 木持河類
15/20

その15 悪魔

「こないだのアンデッドは酷かったな」

「ああ、お前が『発酵ゾンビはどれだ!』とか探すからえらいことになったな」

「……結局いなかったし」

「問題点はそこじゃねぇよこの脳腐れ」

「こうなったらネクロマンサー探しからするしかないか……」

「やめろこのゾンビ脳。てめえの脳でも食ってろ」

「……人間の脳って旨いのかなあ。羊の脳とか旨いらしいけど」

「悪魔みてーなこと言ってんじゃねーよ」

「……悪魔ってさ」

「悪魔が?」

「人の悪い感情食って生きてるとかいうじゃん。あと魂とか」

「ああ、魂くれたら願い叶えるとか」

「あれってどういうこと?」

「へ? どういうことって……食うんじゃねーの?」

「いや、食うにしてもさ、それで願い叶えるって、足りてんのかなーって」

「……そりゃまあ、俺らからしたら、なんかあんなスカスカしたもん食って腹いっぱいになるのかって思うけどな」

「悪魔的には満腹になるのかもしれんけど、それで人の願いまで叶えるって、それで割に合うのかどうか」

「合ってんじゃねーの? でなきゃやらんだろ」

「もしかしたら魂ってものすごくハイカロリーで栄養満点な食い物なのか? ニンジャの保存食的な」

「むしろマジックアイテム的な感じがする」

「疲労回復と空腹を満たすアイテムかあ……欲しいな、是非」

「お前はモンスターの魂でも食ってろよ」

「食えるならそうする。肉しか食ったことないし」

「……大体魂ってどんな味するんだ。あと人間の感情とか」

「食ったことないからわからん。悪魔に知り合いもいないし」

「普通いねえだろ。いても解るかどうか……」

「いっそ召喚して聞いてみるのもいいかな」

「悪魔召喚して『魂ってどんな味すんの?』って聞くだけじゃなあ」

「その場で俺の魂かじって味見してくれるし!」

「なんか痛そうでイヤだ」

「痛いかどうかかじられてみないことには判らんだろ」

「解りたくねーわそんなもん。悪魔呼ぶならもう少しマシな願いするわ」

「旨いかもしれんのに……」

「お前みたいなアホの魂はきっと素っ頓狂な味するんだろうな」

「そうか? 照れるなあ」

「ほめてへんわ。だいたい呼び出す悪魔が魂グルメとは限らんだろ。魂味オンチな悪魔だったらどうする」

「グルメな悪魔を呼んできて!って頼む」

「呼び出した悪魔に他の悪魔呼んできて、ってどないやねん。プライド傷つくわ」

「わからんことは専門家に聞けばよいのだ」

「専門家に聞くのだってタダじゃねーんだぞ。呼び出す時にひとかじりされるんだし。倍かじられるわ」

「それならそれで味を聞いてみる。できれば俺もひとかじりしてみたい」

「アホウ。自分の魂かじりたいとか、悪魔かおまえは」

「悪魔は他人の魂は食うけど、自分のは食わんよ」

「……こんなアホの口から正論が出ようとは……」

「だから自分の魂の味が解れば、自分の魂に正当な価格が付けられるだろ? それで悪魔呼び出したら価格交渉ができるだろ!」

「安かったらどうする」

「……そこはできるだけ高く買ってもらうよう交渉する」

「なんで悪魔呼び出す前提なんだ。なんか願いでもあるのか」

「いやあ、貝が見つからないから、悪魔に取ってきてもらおうかと……」

「そんなことに悪魔使うな。悪魔が貝にしてやられたらなんとする」

「……悪魔が強くなる? 下位の悪魔が貝の悪魔に!」

「……マジ魔貝?」

「上位悪魔が取り付かれても貝悪魔に!」

「上手いこと言ったつもりか。上位悪魔はそんなアホちゃうわ」

「アホかどうかは試してみないとわからん。それにあれだ、ソロモン王だっけ、大量に悪魔従えてたっていうし、あんな感じなら結構上位の悪魔に『ちょっとお前、貝とってこいや』って命令できるじゃん」

「そういうのは命令できる立場になってから言え。ソロモン王ナメとんのか」

「あと『発酵したゾンビ持って来い。旨いやつな』って」

「まだこだわってんのかこじらせ発酵屋」

「仮説かもしれんがいないとも限らんので確認しときたいんだ」

「そこまでいくとただの雑用じゃねえか」

「上位悪魔を雑用に使う、この無駄遣い感が悪魔王の醍醐味だ!」

「だからそれは王になってから言え。魂一瞬で食い尽くされるぞ」

「むう、となると魂の質を上げるようにしとかねば! 悪魔王に俺はなる!」

「まず悪魔呼び出せるようになってから考えろ。おまえに足りないのは質じゃなくて知識だ、そしておつむだ」

「……その知識はどこでどう身に付ければよいものやら」

「そこからか……」

「よし、こうなったら悪魔呼び出して聞いてみよう!」

「無限ループすんな」



 悪魔のことはあくまで悪魔に聞けと。


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