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幻想漫才  作者: 木持河類
14/20

その14 スライムと経験値

「……スライム甘く見てたな」

「全くだ。スライムプールなんてどうやって突破するんだ。入った生き物全部溶かすじゃねーか」

「知らん。油流して火着けるとか?」

「あの広いプールにどれだけの油流しゃいいんだ……しかもダンジョン内だからやべーことになるぞ」

「……ま、あのプールの攻略は依頼者が考えることだからな」

「そうだな。俺らの役目は調査だけだし」

「で、スライムってさ」

「スライムが何か」

「いろんな種類いるじゃん。アメーバみたいなのとか、ゼリー状のとか、青いの赤いの黒いのとか」

「まあいるな。中には変態魔導士が創り出した人造生命的なのも」

「そしてなぜか、世の中では青くて頭の尖った丸スライムが流行ってるらしい」

「そんなスライムおるんかい。てか流行ってるって何だ」

「ゼリースライムの亜種らしい。まあ弱いんだけど、進化して強くなれるタイプらしいな」

「スライムも進化するんか」

「できる奴はいるらしいぞ。なんせスライムといえばモンスターの中では最弱扱いだが、その実亜種も多数いるらしいし、中には物理攻撃効かんとか炎に耐性あるとか電撃吸収するとか、取り込んだモノの性質溜め込むとか超速いとか、合体して大きくなるとか、奇妙なのがいるんだと」

「おおう……毒持ちぐらいは知ってたが、そう言われるとちょっとこええなスライム」

「まあ中にはそういうバカにできん奴もいるってことだ」

「侮れんな」

「中には高い知性獲得してしゃべれるようになったり、魔法使えるレベルの奴らもいるそうな。中には人型になって人間に化ける奴まで」

「マジカ……やべえなスライム」

「まあまて。逆に考えるんだ、今まで話が通じなかったスライムに話が通じるようになるんだと、そう考えるんだ」

「そう言われると……対話が可能なら敵対しないから通してくれ、とかいう交渉も可能かもしれんからな」

「スライム倒してもケイケンチや宝石に変わるわけでもないしな」

「なんだそのケイケンチとか宝石に変わるってのは」

「異世界から来た勇者の話では、あっちのスライムとかモンスターはケイケンチとかいうアイテムみたいなのを持っていたり、倒すと宝石に変わって金になるもんなんだそうだ」

「なにそれすげえ、スライムだけ倒してれば生活できるじゃん」

「だろ? もうちょっと金が欲しければもうちょい強いモンスター狙えばいいと」

「なにその天国。ちょっとその異世界勇者連れてこい詳しく」

「いや残念ながらその勇者の話は旅の傭兵から聞いた。すっげえ遠い国の話だ」

「なんだ……つまんね」

「だがその知性スライムはこっちの世界にもいるって話でな」

「マジカ」

「マジデ。だけど残念ながら倒しても宝石にはならんらしい。しかも強いらしいし」

「やっぱ使えねーな……ちょっと待った、さっき異世界のスライムは宝石になるっていうのと、ケイケンチってアイテムの話」

「ああ、それな……いやケイケンチってのがなんだかわからんのだが、これをある程度貯めると強くなれるらしい」

「なに、肉体強化アイテムか」

「魔法も強くなるらしい」

「なにその万能アイテムほしいぜひほしいくれすぐくれいまくれはやくくれ」

「だから知らんっつーの。俺も見たことないし」

「どんな形してるとか」

「だからそういうものがある、としか聞いてない」

「むむむ」

「もしかしたら、こっちの怪物も持ってるのかもしれんぞ」

「なん……だと……それ早く言え!」

「いや、だからどんなモノかわからんから、持ってたとしてもどこにあるのやら」

「むむむむ……いやまて、もしかしたらケイケンチってのは成長するスライムの限定アイテムって可能性が」

「……なるほど、そう考えればレベルアップするスライムがいるのも納得だな」

「つまり、ハイレベルな怪物こそそういったケイケンチってアイテムを持ってる可能性が高いと考えていけば」

「まあ待て、まずはそのケイケンチとかいうアイテムがどんなものか推測しようじゃないか」

「高レベルなもんスターが持ってるとかいう話だろ」

「成長するほど鍛えたモンスターが持つようになるとか?」

「内臓的なものか? 魔石とか?」

「むしろ魔法的なスキルじゃないかと」

「能力なのかもな」

「能力なら倒したら手に入るようなもんじゃないだろ」

「むう……となるとやはり何か……!……まさか……!」

「なんだどうした」

「……まさか、とは思うが……」

「なんだ」

「ケイケンチとやらが、アイテムのように手に入るもので、鍛えられたモンスターが持っているものだとすれば、だ」

「すれば?」

「……もしかしたら、あの貝ってのが……!」

「それはない」

「なんでそう言い切れる!」

「ないわ。それなら高名な冒険者はツノだらけだ」

「……いやしかしもしかしたら」

「まずは貝より離れろ。お前もう貝に脳占拠されとるん違うか」

「別の意味では頭の中が貝のことでいっぱいだ」

「やっぱり占拠されとる……」

「でも処女の見分けはできんのだ。悔しい」

「馬以下だな(笑)」

「同属の処女すら見抜けんとはッ!」

「やかましい馬以下。ならおまえは馬の処女が見抜けるのか」

「あーあれ腕ツッコむんだぜー直腸検査と同じでーフィs(自粛)」

「何の話だ。馬に蹴られて死にたいのか」

「別に恋路の邪魔した覚えはないが、あいつら時々蹴るんだぜマジで……超痛ぇし」

「ところで馬以下、スライムの話に戻るが」

「誰が馬以下だスライムがどうした」

「スライムってさ、角貝は寄生しないんじゃないかと思った」

「なんで」

「なんでって、寄生しようとすれば逆に消化される」

「……あー」

「だからケイケンチは貝とは関係ない」

「……いやまて」

「なんだ貝頭」

「人をウンコヘアーみたいにいうな。いやもしかしたら、だが……」

「もしかしたら?」

「……貝がスライムに消化されて、ケイケンチが生まれる、とか……」

「……」

「そのスライムが他の怪物に倒されると、ケイケンチが他の怪物に移ったり……」

「……」

「よしちょっくらスライムつかまえてくる」

「待たんかアホ。スライムより貝を先に捕まえろ」

「貝も一緒に」

「待てや。まだその貝がいると確認もされとらんだろうが」

「……そういえばそうだ」

「そういえばじゃねえよ。貝がいれば全て証明解決だが、いなかったら全部破綻する仮説じゃねえかよ」

「そういえばそうか……」

「だからやっぱり貝を発見するのが最重要課題だ」

「あとで学者に話して意見聞いてみる。ケイケンチの話も」

「やめろ。余計ややこしいこと言い出すに決まっとるわ」

「貝を食べてケイケンチを稼ごう!とか言い出しそうだな」

「解ってるなら煽るな」

「ケイケンチはなくても疲労回復ぐらいはしてくれるらしい」

「いやそれ魔法とかアイテムじゃなくて成分的なものじゃね?」

「とりあえずスライムにそこいらの貝食わせてみようぜ!」

「それはエサやってるだけだ」




 疲労回復や二日酔いにはシジミがおすすめ。


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