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 3話 下町でアップルパイを食べに行ってきます

かなり期間空いてしまっての投稿でごめんなさい。

では、悪役令嬢の友人は魔法の鏡どうぞ!

『鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだあれ?』

 小さい頃、大好きだった絵本。鏡の前で何度も呼び掛けた。お母さんに、アップルパイを何度もねだって作ってもらってた。また、お母さんのアップルパイが食べたいな…。


 今日はルーナと約束した下町のカフェへ出掛ける日。

 そういえば、イーヴィに転生してから町とかに出るのは初めてかもしれないな…。

 この世界の雰囲気に慣れはじめてはきたが、まだ知らないことがたくさんある。町にはどんなものがあるか楽しみで仕方がないくらい。

 初めて下町へ出掛けるものだから、アネッタの私へのお洒落の気合いの入れようがすごい…。朝起きて朝食が済んで二時間…。ひたすら私は鏡の前でにらめっこしてた。

「こちらの服の方が可愛いと思うのですが…」

「そっちだと、ふわふわすぎて動きにくいわ。もっとシンプルなのはないの?」

 不満そうな顔をしながら、アネッタはクローゼットを掻き分けていった。

 確かに、アネッタの勧める服は可愛いのだけど、下町に行くには豪華過ぎると思うものばかりで、フリルのレースや飾りが沢山付いているのを勧めてくる。

 動きにくそうなのよね。

「お嬢様、これはいかがですか?」

 アネッタは大きな鏡の前で私に服を当てながら吟味していた。

 ドアからノック音が聞こえ、私は返事をした。

「はい、どうぞ」

「イーヴィ、馬車の準備ができたが支度はできたか?」

「お父様!」

 入ってきたのはイーヴィの父親だった。

 クインテット侯爵家当主のバード・クインテット。クインテット騎士団の団長でもあるバードは見た目も体つきも完璧な雰囲気をもつ。強面なところが近寄りがたいと思われがちだが、娘の私には激甘!イーヴィの我が儘には何でも答え、欲しいものは何でも買ってみせていた。

 だから、イーヴィが我が儘に育ったのよ。

 前世の記憶が戻った日なんか、態度の変わった私を見て、何か変な病気にでもかかったんじゃないかと騒ぎ立ててたんだから。

 まあ、その違いに直ぐに気づいたと言えば、娘をよく見る良い父親なんだと思うけどね。

「しかし、イーヴィも町に出掛けられる歳になったんだね…。欲しいものあったら何でもアネッタに言いなさい」

 そう言うと、バードは私の頭を撫でた。

「別に、友達とお茶しに行くだけですので、そんな欲しいものなんてないわ」

 私は撫でているバードの手を払った。

 すると、バードは衝撃を受けたような顔をして、鏡に映る私の方を見て鏡に手をかけた。

「イーヴィが私の手を払ったよ…」

「鏡の前で何変なこと言ってんですか」

 バードの行動に私はつかさずツッコんだ。

 これが父親とか…。

「お嬢様、この服にこのアクセサリーを組み合わせるのはどうでしょうか?」

 アネッタは、また別の服とアクセサリーをもって私に見せてきた。

「そうね、あててみるか。お父様そこに居ると鏡にが見えませんので退いてくれませんかね?」

「…アネッタ、イーヴィが私に冷たいよぉぉ」

 と、勢いよくバードは振り返ってきた。

 その時、バードのコートに付いている飾りが鏡に擦り当たり、鏡の細長い傷がついた。

「「…」」

 やっちゃったよこの人…。

 その傷は普通に見たら大人の背の高さなら気にしない位置だったが、子供で背の低い私に丁度重なる位置に傷がついてしまった。

「イ…ヴィ…、すまない…」

「別に、これくらい大丈夫よ」

 これが、前のイーヴィだったら「この美しい私の姿が台無しじゃない!」と怒り狂っていたことだろうよ…。

 細い傷だから、気にしなければまだ使えるが、アネッタは私が怒ってるんじゃないかとヒヤヒヤした顔をしていた。

「直ぐに、新しい鏡を特注で頼むからねぇ!」

 バードは半泣きしながら私に抱きついてきた。

 いちいちオーバーな父親だね…。

 これくらいの傷で新しいのを、しかも特注で頼むだなんて…。

「あぁもう、じゃあ今日出掛けついでに見てくるので!アネッタその服でいいから出掛ける準備して」

 私は引っ付いてくるバードを引き剥がし、アネッタの持っていた服で準備を急がせた。


 バードのせいで、準備が遅れてしまった。

 私はルーナとの待ち合わせ場所に急いで向かった。付き添いでもちろん、アネッタも一緒。

 ルーナとは下町のセントラル広場の東で待ち合わせていた。

 クインテット家の領土の隣に、ホワイト伯爵家が所有している領土があった。規模も伯爵家の中では上位に入るくらいの広さで、クインテット領の物資もそこで買い取られているほど活気溢れる町だった。

 下町の入り口付近で馬車を降り、そこからはアネッタと歩いて待ち合わせ場所に向かった。

 目印しの噴水には既にルーナが待っていた。けど、見たところひとりで待っている様子だった。

「待たせたわね、ルーナ。お付きの人とかいない様子だけどひとり?」

「はい。ここは治安もいいですし、母の住んでいた町ですので一人でも大丈夫なんです」

 ルーナはそう笑いかけるが、一応伯爵令嬢であるのに大丈夫なのかと思った。それに、皇太子殿下の婚約者でもあるのに…。

 私はアネッタの顔色を伺ったが、アネッタの表情を観ると私と同じことを思ったのか、私の方を見て困った顔をしていた。

 やっぱり、令嬢を一人で出歩かせるのは異例なのだろうか…。

「で…では、さっそくお店に向かいましょうか」

 きごちないルーナの笑顔に私は少し違和感があった…。


 確かに、ルーナの言う通り人通りも落ち着いていて治安もよさそうだった。ルーナは嬉しそうに案内しはじめて、私もショーウィンドを楽しんで見ていった。

 通りを歩いてると、こじんまりとしたカフェの前に来た。

「アップルティーとアップルパイのセットを2つお願いします」

 入店し、案内してくれたウェイターにルーナは注文をした。

「あ、ルーナ。ひとり分追加してもらえる?」

「どうしてですか?」

「アネッタの分もお願いしたいの」

「お嬢様!?」

 後ろに付いていたアネッタは驚きながら、私の耳元に近づいた。

「折角なら、アネッタも一緒に食べたいわよね」

「それは、嬉しいお言葉ですが…。私はお付きで来ていますし、他のご令嬢とご一緒にお茶をするのは…」

 アネッタは気まずそうにルーナに視線をうつした。

「けど、此処にいるのは私とルーナとアネッタの三人じゃない。ルーナは身分気にするような性格じゃないと思うわよ」

 私はアネッタをなだめるように言った。

「しかし…」

「私はアネッタさんもご一緒でも構いませんよ」

 ルーナはにこやかにアネッタに空いている席を勧めた。

「ほら、アネッタ。ルーナもこう言ってるし」

 アネッタは小さくため息をついた。

「では、お言葉に甘えて…」

 やっと、アネッタが座ってくれた。

 最近、家でのティータイムはアネッタとしてたのに何故今日は渋ってたのだろうか…。

「では、アップルティーとパイのセットを3つお願いします」

 私は、ウェイターに注文をした。


 渋ってたアネッタも、実はここのお店のファンだったらしく、アップルパイが運ばれてくるなり感激していた。

 確かに食べてみると、素朴ながらも口いっぱいにりんごの甘味が広がって、それはもうおいしいのなんの!

 手作り感満載で、少し前世のお母さんに作ってもらったアップルパイを思い出した。

 ちょっと、お母さんの味が恋しくなってきちゃったのかな…。

 アップルパイを食べながら、私はルーナとアネッタの方を見た。

 ルーナとも話が合ったのか、まるで姉妹を見てるかのように話していた。

 前世では兄弟はいなかったけど、姉がいたら、アネッタみたいな感じだったのかなぁと思ってみたり…。

 最近はアネッタも遠慮がなくなったのか、一緒にいることが多くなったのよね。色々教えてもらったり、お茶したり…。

 私は気づかず、膨れっ面をしたのかアネッタが焦ったような顔をしてこちらを見てきた。

「お…お嬢様、どうされましたか…?」

「別に。アネッタもルーナと話が合えて良かったな~と思っただけよ」

 あそこまで、ルーナと打ち解けてるアネッタを見て少し面白くないなって思ってしまった。

「アネッタさん。恐らくイーヴィはヤキモチを妬いているのではないでしょうか?」

 ルーナはクスッと笑いながら言った。

「べ…別に、私は妬いてなんかいないわよ」

 いや、ほんとはヤキモチを妬いたのかも。私だって、アネッタと姉妹みたいに話してみたいもの。

 アネッタはきょとんとした顔をしてから、私を見るなりクスクスと笑い始めた。

「お…お嬢様も…可愛らしいこと…お考えになるのですね…」

「なによ…、そんなに笑わなくてもいいじゃない」

「いえ、可笑しくて笑っているのではないので、そう怒らないでください」

 そう言うと、アネッタは私の頭を撫でながら微笑んだ。

 なんか、なだめられた気がする…。これが、年の差なのだろうか…。いやいや、私の方が精神年齢上のはずなのたけどね…。

 けど、撫でられるのは嫌じゃなく、アネッタの手は払わないでいてあげることにした。


 ティータイムも終わり、私達はお店を出ることにした。

「このあと、どうしましょうか?」

 アネッタが会計を済ませている間、このあとどうするかをルーナは訪ねてきた。

「そうね…、適当にお店とか見て回るのとかでもいいんじゃないかな?何処かいいお店とかある?」

「それならば、雑貨屋さんなどいかがでしょうか?ちょっと変わったお店なんですけど、よく行くお店なんです」

「おぉ!ルーナの行きつけとは興味深いね!そこにしましょう」

 私達はアネッタの会計を終えてから、ルーナの案内でその行きつけのお店に行くことにした。


 そのお店に着くと、見た目は可愛らしい小屋の様な家だったが、明かりが点いているのか分かりにくく、中を覗いても窓が汚いのか見えなかった。

「ここ、営業してるの?」

「はい。中は明かりが少なく営業してないように思われがちですが、ちゃんと営業してますよ」

 ルーナの先陣でその小屋の戸を開けると、想像していたよりかは清潔な感じだった。

「おじさーん。来客よー」

 ルーナの声で気づいたのか、奥の部屋から誰かが出てきた。

「ルーナ、久しぶりだね。そちらのお嬢さんはルーナの友達かい?いらっしゃい」

 頭をかきながら出てきた男性は、ボサボサの紙にアンティークな丸眼鏡。作業服にエプロンと、接客するには不相応な格好だった。

「初めまして。イーヴィ・クインテットと申します」

「はい、初めまして。ポム・ドタールです。ここのお店のオーナーで、ルーナの叔父です」

仮にも貴族の令嬢を前にしているのに、ポムは気にもせず挨拶を済ますと、奥の部屋に戻ってしまった。無愛想とまではいかないけど、貴族には興味がないような雰囲気だった。

「仮にも、貴族のご令嬢が来店したというのに、あの態度はないでしょう!お嬢様、こんなお店出ましょう」

「まぁ、アネッタ。私は気にしてないからいいじゃない…」

 アネッタは、ポムの貴族に対しての無礼と取れる態度にカンカンに怒り、何故か私がなだめるはめになった。

 ルーナの叔父だから、あんな態度でも気にしてないけど、一応身分的にはアネッタは許せなかったらしい…。

「すみません。叔父はあまり貴族や政治には関心がなく、いつも作品ばかりに夢中なんです…」

 申し訳なさそうにするルーナ。

「叔父様は結婚なさってるの?」

「いいえ…。いつも作業室に籠って人とあまり関わってないのです。なので、お察しの通りです」

「なるほどね…」

 仕事が恋人ってやつね…。

 けど、並べられている作品はどれも細かな模様があり、素朴だけど魅力的なオーラが出ていた。何て言うか…

「…どれも、力強さを感じる作品ね。これなんか特に…」

 特に一際目立つ物の前にを私は指を指した。

 それは、とても大きな鏡だった。

「多分それは、叔父が魔法石加工師だからですわ」

「魔法石加工師?」

「はい。幾つかの作品は魔法石を使ってますし、そうでない作品は魔法石の残り香が付いていると思います。その鏡は特に魔法石を使用しているので一際それを感じるのだと思いますよ。」

 魔法石やら、魔法石加工師など、この世界には私の知らない常識がまだまだありそうね…。前世の世界じゃ魔法なんて存在しなかったから、未だに信じがたいのよね…。

「お嬢様、お気に召したのであれば、お買い上げしてはいかがですか?」

 アネッタは部屋の奥を睨みながら、私に耳打ちするように言ってきた。

「けど、魔法石を使ってるらしいし、高いんじゃないの?」

「お嬢様がお値段を気にすることはないと思いますが、旦那様に鏡を買って帰ると言ってましたでしょ?」

「確かに、買って帰らないとまた面倒になりそうね…。そしたら、お会計お願いね」

 私はルーナにポムを呼んでもらい、その大きな鏡を買ってお店を出ることにした。アネッタの急かしようは凄かったけど…。


 お店の前に馬車を呼んで、鏡を積んでもらうことにした。

「そういえば、ルーナはお迎えの馬車は?あれだったら送ってこうか?」

「いいえ、迎えの馬車がここまで来るので待ってますわ。お気遣いありがとうございます」

 待ち合わせ場所に一人で居たから、てっきり歩いて来たのかと思ったけど流石に迎えはあるみたいね。

「それじゃあ、お先に。今日は楽しかったわ」

「こちらこそ、一緒にお出かけできて嬉しかったです。お帰りお気をつけて」

「ルーナもね」

 そう言うと私は、馬車に乗り込んだ。

 窓から顔を出すと、ルーナが店の前で手を振っていた。私も振り返すと、お店の小窓からポムの顔が見えた。

「お嬢様、危ないですので座ってください」

 アネッタに言われて、私は椅子に腰かけた。ルーナを見つめるポムの表情が悲しく見えたような気がしたけど、気のせいだっただろうか…。

頑張ってガンガン投稿して行きますので、またお付き合いくださいな…。

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