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#17 ミレーユの新しい生き方

 魔導士は皆、死んだ。


 そういうことにして、私達魔導士が普通の人の中に紛れて暮らせるようにしよう。

 交渉官殿のそういう思惑は、残念ながらある番組によって、あっけなく吹き飛ばされた。


 そう、バレてしまったのである、「魔導士達は生きている」と。


『この火の魔導の研究が実れば、夢のエンジン、対消滅エンジンが実現するかもしれないんですね!』

『そうなんデス!それどころか、宇宙に残された謎の一つも、シェリルさんのおかげで解明するかもデス!』


 私の魔導の映像を垂れ流しながらべらべらと上機嫌に喋るのは、もちろんあの男、イズミ殿だ。


「なんだこりゃ!?これじゃせっかく秘匿した魔導士達の存在が、バレちゃうじゃないか!」


 テレビを見て憤りを隠せないセシリオ。だが、その番組では、夢のエンジンが実現した場合の話も合わせて紹介されていた。

 この宇宙で人類が住んでいる星は、直径1万4千光年の円形に分布している。なぜ、この領域にだけ同じ遺伝子を持った人類がいるのかも大いなる謎なのだが、それはともかく、我々人類はこの領域からなかなか抜け出せないという。

 というのも、宇宙の航行に必要な重力子エンジンのエネルギー源となる核融合炉には、補給の問題が付いて回るからだ。

 駆逐艦でも2週間に一度、補給を受ける必要がある。核融合炉の燃料である重水素、三重水素を補給しなくてはならないからだ。

 だが、私は一回の食事で、1500人を死に至らしめるほどの強力な「陽電子」を生み出すことができる。

 そこから導き出される結論は、これまで以上に少ないエネルギー供給で航行可能なエンジン、すなわち対消滅エンジンのすさまじい性能だ。

 まず、対消滅エンジン用には、核融合炉よりも旧式の技術である核分裂炉を用いる。こいつは核融合炉ほどの力は出ないが、一度の燃料補給で10年以上動かすことができる。

 その核分裂炉のエネルギーを使い、私の魔導のようにダークエネルギーをかき集めて陽電子を生成させることができたなら、船一隻を楽々と動かせるエンジンが完成する。それこそ10年間、燃料補給の不要な船ができるというのだ。

 これまでの記録では、銀河系から1万光年離れた場所まで往復するのがやっとだった。武装も荷物も載せず、燃料を極限まで搭載した船でこれだ。だが今までの技術では、ここより先には出られない。

 それが、対消滅エンジンの登場で一気に16万光年離れた大マゼラン銀河まで行くことが可能になるという。いや、それどころか250万光年離れたアンドロメダ銀河でさえ、行くことも夢ではなくなるという。

 また、自分達の属する銀河系の中心部近くまで進出することすら、可能になるというのだ。

 人類、いや、知的生命体は、この1万4千光年の範囲にしか存在しないのか?

 それとも、さらに遠く、いや、別の銀河にも、知的生命体は存在するのか?

 人類の行動範囲が広がれば、そんな宇宙の大いなる謎が、解明されるというのだ。

 私の魔導は、そんな可能性を秘めていたのか?それを、単なる武器としてしか使っていなかったとは、我々はなんともったいないことをしていたのか。


 だがこの番組、要するに「最強の攻撃魔導士」と言われた私の存在をバラしてしまったわけで、しかもこの番組は、他の魔導士達の存在までバラしてしまった。

 そこで知ったのだが、実は私以前にすでにある魔導士が、魔導士の存在をバラしていたという事実が発覚した。

 その魔導士とは、ミレーユである。

 この水の使い魔は、その能力を利用してある仕事をしていた。


「さあ、水の魔導士、ミレーユさんの登場です!」


 宇宙港の街の中心部にあるショッピングモールの前に出来たばかりの公園。そこには、大きな噴水池がある。

 そこに、まるでアニメに出てくる魔法少女のような格好のミレーユが現れる。

 大衆に手を振るミレーユ。その後に、池に向かって両手を広げ、術式を唱え始めた。


「水の精霊よ……我が元に集い、我に従え!」


 そう唱えた瞬間、池の水がざわざわし始め、空中に浮き始めた。

 巨大な水の球が浮かぶ。その球が、いくつもの球に分裂をする。

 中央に大きな球、その周囲を惑星のように回る小さな水の球。このショーを見て、観客は大喜びだ。

 聞けば、この街で先日、水道管破裂事故が起こったらしい。水道管の水の流出はすぐに止められたものの、歩道のど真ん中から噴き出した大量の水が道路に溜まり、その水に阻まれて多くの車が動けなくなってしまった。

 それを見かねたミレーユが、その水を別の場所に移動すべく、あの魔導を使う。巨大な水の球を抱えて、近くの川に放り投げるその姿を見て、その場にいたある人物に誘われたという。

 で、その人物によって、この催しが演出された。

 ここはショッピングモールの前。その人物とは、このショッピングモールの経営者の1人。客寄せに使えると考えて、ミレーユをスカウトしたのだという。

 まったく、ミレーユめ、何を考えているんだ。こうもあっさりと魔導士の存在をバラしてしまうとは……

 だが、多くの観客に喜ばれ、溢れるような笑顔で応えるミレーユを見ていると、ああいうのも悪くないと思い始めた。


「へぇ~!ミレーユさん、あんなことしてたんだ。シェリルもやってみるか?」

「私が同じことをすると、噴水ごと観客を吹き飛ばすことになるが、いいのか?」

「いや……シェリルはやめた方がいいな」


 この調子では、他の魔導士達のことが明らかになるのも時間の問題だろう。笑顔で手を振るミレーユの映像を観ながら、私は他の魔導士達の行く末を考えてしまった。


 そうそう。一つ気になったのだが。

 ミレーユの胸は、はっきり言ってでかい。私のいたヴィレンツェ王国の魔導士でもっともでかい。

 空中に向けて両手を目一杯広げて水の球を浮かべているが、男性の多くの視線は、上空に浮かぶ球よりも、両手の真ん中辺りにあるこの球のような物体に集中しているのは、多分そのせいだろう。

 でも、ミレーユにはすでに旦那様がいるんだよな……ファンが増えるのは構わないが、そこのところをきちんと報道しなかったがために、おかしなことにならなきゃいいが。

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